第9話 何か見つけてしまった

 今の時刻は14時か。俺はマップに時間が表示されてて把握できるけどこの世界の人は大変だろうな。街へ戻りギルドに付いた俺は、受付にいたミリーへ声をかける。


「ミリーさん戻りました。何とかゴブリン討伐してこれましたよ」


「お疲れ様。じゃぁ、討伐部位を出してもらっていいですか」


「わかりました、これが今日の戦果です」


 ゴブリンの討伐部位の耳が入った革袋をミリーさんへ渡す。


「え? 何匹狩ったんですか? 17匹も狩ったんですか!? シュウ君が出てからそれほど時間がたってないよね……小コロニーでもあったのかしら?」


「え? 小コロニーってなんですか?」


「あ、小コロニーっていうのは、巣ができる前にゴブリン達が集まりだした場所の事だよ。コロニーが完成すると、簡単な住居を作ったりして一気にゴブリンの数が増えるから早めに潰してもらえるとギルドとしては助かるのよね」


「そういう意味なら、小コロニーではないですよ。森の中を探し回って狩り漁っただけですよ?」


「あれ? 確か槍術士だったよね? 斥候もできるのかな? っといけない、冒険者のスキルを詮索するのはよくありませんね。森の中でよくこんなに探して倒せましたね。どんなに強くても一瞬の油断で死んでしまうんだから気を付けてくださいね」


 ミリーさんに言われて気付いた! 俺、槍使いなのに索敵できるって結構注目されるスキル持ってるんじゃね? あまり目立って目をつけられるのも嫌だからもうちょっと自重しないと拙いかな……


 となると、DPでだしたレアドロップで一攫千金もかなり目をつけられるよな。自分の家をもって快適空間作りはまだまだ先になりそうだ。


「そうですね、慢心しない様に気をつけないといけないですね。せっかく冒険者になったのに情けない理由で死にたくないですね。ドロップ品が出たので買取もお願いしていいですか?」


「ドロップ品も出たんですね、運が良かったんですね。クエストの報酬と一緒に精算しますので出してもらってもいいですか」


「えっと、これですね。睾丸2セットと牙2本ですね」


「……」


「何か間違ってますか?」


「あ、いえ、そうではなくて17匹でこのドロップはとても運がいいと思いまして反応に困ってしまいました」


「これって、運がいいんですね。初めてのモンスター討伐だったのでこれが普通なのかと思っていました」


「これが普通だとしたら、冒険者の皆さんがゴブリンを狩りつくしてしまいますよ。品質は問題ないようですので、ゴブリン1匹500フランの17匹と牙が1000フランが2つ、睾丸が1セット5000フランの2セットで合計20500フランですね。初心者冒険者の初めての仕事でこれだけ稼げる人はめったにいないですよ」


 ここで運3セットが活躍していたことに安堵し、このまま普通に狩りしていても時間はかかるが400万フラン貯めるのも無理じゃなさそうだ。


 ランクが上がってオークやオーガなども視野に入ってくれば、討伐部位でもお金は期待できるしドロップ品の値段も高くなっていくので期待がもてそうだ。


「どのくらいの稼ぎになるかわからないですが、しばらくは森でゴブリンを中心に狩っていこうかと考えてるんですがおかしいですかね?」


「駆け出し冒険者には森の中は危ないですが、シュウ君の実力があれば問題ないと思います。後、あの森にはコボルトやオークもそれなりの数が生息していますので慣れてきたからと言って油断はしないでくださいね」


「忠告ありがとうございます。それにしても人型のモンスターが多い森なんですね。獣系のモンスターはいないんですか?」


「そうですね、シュウ君の行った北の森は獣系はほとんどいません。人型のモンスターばかりなので、亜人の森なんて呼ばれていますね」


「そうだったんだ。ある程度慣れてきたら獣系とも戦って訓練しないとな」


「人型ばかりだと、それ以外への対応が難しくなりますからね。Eランクになったら、南にある獣系が多く出る獣道の森へ行ってみるのもいいかもしれませんね」


「獣道? 何か意味が違う気がするけどいいか。ランクを上げながら獣系の情報でも集めるかな。ミリーさん情報ありがとうございました。明日はそのまま亜人の森へ行って半日ほど腰を据えてみます」


「森の中は、モンスターたちの方が有利になることが多いので気を付けてくださいね」


 満腹亭に戻り夕食を食べてから明日の事を考え眠りについた。


 女将さんの朝食ができたという声で目が覚める。相変わらずいい匂いがしている。


 今日の朝食は、サンドイッチだった。色々な野菜と鳥やハム等を挟み特性のソースがかかっている。やはり美味い。マヨネーズに近い味わいのソースだった。まぁ、卵と酢と油があればマヨネーズは作れるわけだし似たようなものがあってもおかしくないか。


 おばちゃんに昼用のサンドイッチを追加で頼めないか聞いてみると、昨日のお礼のこともあるしね、と言って包んでくれた。お金を払ってでもほしかったので、俺としてはかなり得をした気分だ。お昼が楽しみである。


 サンドイッチに合う飲み物を持っていけないことを悔やんでいたが、DPで飲み物を出せることに気付いたときには苦笑しか出てこなかった。


 亜人の森へ到着し、改めて森を観察する。


 ミリーさんの話によると直線で抜けたとして5日はかかるそうだ。かなり広大な森なのだろう。


 1日の移動時間を12時間として、索敵や荷物を持ったり集団で移動したりすることを考えて、時速2キロメートルとして1日で24キロメートルで5日で120キロメートル位かな?


 まったく根拠のない計算を頭でする。


 日本でいえば、新宿駅から甲府駅位だろう。そう考えるとこのフレデリクのある国というか大陸はそれなりの広さがあるのだろう。


 昨日探索していて気付いたが、マップの機能は掌握しているエリアのみ有効でその範囲から出てしまうと現在位置を特定できなくなってしまうようだ。


 森を掌握しながら進むにしてもDPの無駄使いになってしまうので迷わないようにするにはどうしたらいいか悩みどころである。ここに来るまでに方位磁石を試してみたが、ファンタジー特有の特殊な鉱石とかのせいかクルクル回り続けてしまった。


 いい案が浮かばなかったので、DPの消費が少ない方法をとることにした。街からここに来るまでの街道をエリア掌握し森の10キロメートル先まで幅1メートルで掌握した。この線を中心に探索していけば迷わずに出られるだろうと考えた。


 最悪、分からなくなればコアをDPで呼び出して自分の近くを掌握すればマップに表示されるし迷わないだろうと思う。


 掌握した直線の2キロメートル付近に複数のゴブリン反応があった。おそらくコロニーだろうと見当をつける。コロニーはサイズにもよるが最低でも50匹以上いて大きくなると300匹を超えると言われている。


 コロニーが出来上がっていると最低でも1匹は上位種が存在していて、周りのゴブリンが普通より強くなっているらしい。


 数を把握するために複数のゴブリンの反応のあるあたり一帯をエリア掌握する。コロニー内にいるゴブリンの数126匹……結構多かった。


 上位種にあたるゴブリンはジェネラルが3匹いて、強化種がゴブリンソードマン7、ゴブリンナイト5、ゴブリンアーチャー4・ゴブリンマジシャン3・ゴブリンヒーラー3の22匹だった。コロニーの外にもそれなりの数がいると考えている。


 ゴブリンのLvは、上位種が13で強化種が10前後だった。昨日倒した普通のゴブリンは4から7程だった。Lvだけで考えれば圧倒的に不利ではあるが、マップで位置を把握して奇襲やダンジョン操作で戦いを有利に進めれば問題なく倒せるだろう。


 問題があるとすれば、コロニーをそこまでしてわざわざ潰す必要があるかどうかである。


 しばらく悩み、結論を出した。ダンジョン操作はともかくとして、エリア掌握の範囲を広げて奇襲で削っていく作戦にした。保険として、槍と能力向上のスキルをLv5にして、ゴブリンを釣るために投擲スキルもLv5まで習得し、自身のLvを20まで上げた。

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