新しく入ってきたバイトの後輩がやけに俺に絡んでくる件。

砂月

第1話 お調子者な後輩

 商店街の端にある隠れ家的なカフェ。

 店内には親父の趣味か、レトロ感漂う雑貨やポスターが飾られていて、どこか外の世界とは切り離されたように感じる。


 親父が経営するこのカフェで、俺こと皆川湊みなかわみなとはアルバイトとして働いている。いや、こき使われているといった方が正しいかも。ぴえん。

 と言っても、客は一日に数える程度。


 アルバイトとしては嬉しいが、それが親父の店となるといささか不安も感じるな……。

 すると、ゆったりとした店内の音楽を遮るように入口のドア・チャイムがカランコロンと鳴った。


「いらっしゃいませー」


 いつもの調子で言いながら、視界をドアの方へ向けると、客層としては珍しい黒髪の少女が一人。


「湊先輩おつでーす! 今日も頑張っちゃいましょー!」

「なんだ、神代かみしろか。はいはい、お疲れお疲れ」

「なんだって何ですか!? なんだって!」

 

 神代真鳳かみしろまお

 彼女は二カ月前からこのカフェにアルバイトして働いている。


 また、俺と同じ大戸おおと高校に通う高校一年生だ。要するに学校でも俺の後輩にあたる。


 そして、大事なことだが……その……つまり神代は可愛い。というか中々の美少女だ。


 黒のミディアムヘアーが大人っぽさをだしながらも、顔立ちはどこか幼さが残り、それらが上手い具合に中和している。


「むむむ~? 先輩何じろじろ見てるんですか? 私の顔に何か付いてます……? はっ! 私があまりにも可愛いからか! ああ! 先輩も私のとりこだったなんて~照れちゃいますよ~」


 うん。……でも、なんか惜しいんだよ。ほんと。


「いや、目くそついてたから気になって」

「へ? ほんと? まじ? 先輩まじ?」

「いや、嘘」


 神代はほっとしたのも束の間、すぐにほっぺを膨らませる。


「もうっ! あーあ。先輩っていつも意地悪ですよね! ほんっとデリカシーないし! 女の子にそんなこと聞く!? アホ! アホ!」

「はいはい、わかったから早く着替えて来い。あっ、今日トイレ掃除神代な」

「もおおおお!! 荒い荒い荒い! 先輩、人使い荒い! 先輩の新井白石!」

「新井白石関係ないだろ……」


 ぷりぷりしながら更衣室へと向かう神代をやれやれと見送る。

 新井白石凄い人なんだぞ……。

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