#ハガキを読む話 【1話完結!スーパー短編】
「こんばんは、クリス米村です。
最近、ハガキがすごい量だって、スタッフから聞いてる。
ありがとう。
ファンのおかげで、今のオレがある。
それを忘れたことは一度もない。
これは本当だ。
あらためて礼を言わせてもらうよ。
ありがとう。
まあそりゃ、握手を断ることはあるさ。
というか、基本的に断ってる。
そんなの、たいしたことじゃないだろ。
オレに触りたい気持ちはわかるが、他のヤツと握手してくれ。
握手はどうも好きになれないんだ。
先週、あまり読めなかったから、今夜は1発目からハガキを読もうか。
『東京都、ラジオネーム:おむすびの結び目はどこ?(ファン歴3年)』
なかなかいいラジオネームだ。
ギャラクシー・クリス賞をやるよ。
『クリスさん、こんばんは。
初めてハガキを書きます。
学校が休みになって、そろそろ2ヶ月です。
新1年生として、新しい高校で友達をたくさん作ったり、中学からやっているサッカーで活躍したり、そんな夢を持っていました。
それがコロナのせいで全部、吹き飛びました。
高校の敷地内に入ることもできません。
門の中に入ったのは、合格発表のときの1回だけです。
こんなことがあっていいんでしょうか。
家に閉じこもっているせいか、性格も暗くなってきた気がします。
どうしたらいいですか?
いいアドバイスをお願いします』
なるほどね。
いいアドバイスをくれ、か。
まず言えるのは、おまえはオレのファンじゃないってこと。
ハガキを読んだが、自分のことしか書いてないだろ?
オレのファンなら、オレのラジオを聴いて、感動したとか、勇気がわいたとか、涙が出たとか、そういうハガキを送らなきゃダメだ。
学校が休みなのは、オレも知ってる。
おまえにいちいち教えてもらう必要はない。
オレだって、仕事はほとんどキャンセルになったし、スケジュールに入ってたパーティは全滅だ。
オレの悩みとおまえの悩み、どちらが大きいか、言わないとわからないのか?
性格が暗くなりそうと書いてるが、おまえの性格はもともと暗いんじゃないか?
それをコロナのせいにしてる気がする。
当たりだろ?
おまえが中学でサッカーやってたとか、オレになんの関係がある?
もちろん自分の意見を言うことは大事だ。
だけど、言う相手を間違ってる。
こういう下らないことは、もっと身近な人間に言え。
これがオレのアドバイスだ。
まあ、強く言い過ぎたかもしれないな。
"優しいクリス米村"を期待してたファンは、ほんの少しだけガッカリしたかもしれない。
その点はあやまらせてくれ。
優しくなくて、ゴメンと。
そうだ。
これを言っておかなくちゃいけない。
マジの話なんだけど、これからもいい意味で、みんなの期待を裏切っていこうと思ってる。
それがイバラの道だってことは、わかってるさ。
離れていくファンもいると思う。
言っとくが、オレは引きとめないぜ。
離れたきゃ、好きにしろ。
でも、心配してない。
離れるファンなんてほんの一部だと、マネージャーも言ってる。
信じても大丈夫だよな。
オレとファンは、家族同然。
困ってたら、どんな犠牲を払ってもすぐに助ける。
それが家族だろ?
今夜の1曲目は、本当の意味での"家族"を歌った曲だ。
これを聴くと、オレとファンの関係に似てるなって思うんだ。
絶対的な信頼で結ばれてるっていうかさ。
最高の曲だ。
聴いてくれ。
『おまえはオレの親友だよな?』」
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教訓👉めっちゃ不安じゃん笑
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ラジオ品川 99.92FM
Navigator クリス米村
『クリス米村のGO❗️GO❗️レインボー❗️〜今夜もパーリーしようぜ〜』
毎週木曜23:30〜恋人たちが眠るまで
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