【戯曲】夢想前景

一景

一景

背景は日本地図に冬の空

舞台上に学生机と椅子

座っているカムパネルラ

カムパネルラ　厚顔無恥。貴方は今何処に居ますか。心が動かない。筆が進まない。語りが始まらない。人生は常に動き続けているのに。ドラマティックな展開が誰にでもあるというのなら物語はこの世に必要ない。僕たちは無口である。言葉を唱え続けたモノだけが作家となる。

席を立つカムパネルラ

カムパネルラ　生き残ったモノの世界。死んだモノの言葉を誰も知らない。死者である僕の言葉はいらない。みんな元気に生きてくれよ。

ジョパンニにスポットライトがあたる

ジョパンニ　まだ君は死んでいない。見えるじゃないか。感じているじゃないか。こっちにおいでよ。ほら、手を伸ばして。

手を伸ばすジョパンニ

カムパネルラ　ごめん。いらない。

ジョパンニ　なぜ。

カムパネルラ　僕は生き返りたくない。

ジョパンニ　そんな。

カムパネルラ　僕は流されたいんだ。

ジョパンニ　そんな目に僕はあわせない。

カムパネルラ　人の痛みをとらないでくれないか。

ジョパンニ　何を。

カムパネルラ　僕は傷つきたいんだ。泣いていたいんだ。

カムパネルラゆっくり退場

子供たちの喧騒

ザネリにスポットライト

ザネリはリンドウの花を持っている

ザネリがカチューシャの唄を歌う

歌い終わると電車がやってくる

場所は駅のホームとなる

ザネリ　この町に残るの。

ジョパンニ　うん。

ザネリ　何をするの。

ジョパンニ　何もしないよ。

ザネリ　若さを無駄にするのね。

ジョパンニ　そうだ。

ザネリ　もっとできる人だと思ってたけど。残念。次、逢う時は…。また逢う日まで。

ザネリ退場する

ジョパンニ、ザネリを見送ってから退場する

舞台星の世界となる

転換