9-17【大変なのはみんな同じ4】



◇大変なのはみんな同じ4◇


 この皇女はマズイ。

 無意識に能力を発動させるなんて、自覚が無い分余計にヤバいっての!


「とにかくこっち見るの止めましょう!ドゥーノットロック!!」


「えーどうしてです?」


 近寄って来たんだけど!!

 目線を封じても分かる、隣でニヤニヤしてやがる!!


「恥ずかしいんですか?」


 ちゃうわっ!

 クスクス笑ってんじゃないよ、もしかして俺が初心うぶに照れてるとか思ってますぅ!?


「セリスフィア殿下、転生者の貴女の能力はなんですかっ!それが発動してます!!」


「……はい?能力……?」


「そうです!それがなんか……多分ヤバい!」


『――無自覚ですか。それともたった今発現した……?』


 こんなタイミングでそれはないだろ!

 こんな無邪気で好奇心旺盛な人だ……きっと今までも無意識でとりこに。

 いや違う、女性的な魅力で誘惑してきている訳じゃない……もっと根本が違う、別の何かだ。


「エリアルレーネ様は特に何も……すくすく育ちなさいとは言われましたが」


 確かにご立派なものをお持ちで。

 エリアルレーネ様は自分がないからですかね!そう言う事を言うのは!!


「瞳の色が変色してます、それが能力だと思うんですけど……心当たりは?」


 俺は指の隙間から少しだけ覗いてみた。


「――いっ!」


 逆にこっちを覗いてるじゃん!!

 なんだよその仕草!いかんいかん……いかんぞミオ。


「これは皇族の証だと聞いたけど……能力だったのかしら」


「皇族の証……?」


 そんな能力あるのか?ウィズ。


『ありません。遺伝的な物ならば考えられますが……転生者に関しては皆無です。ところで、ミーティアとの連絡が取れましたが』


 なんで今言うんだよ!!

 あれか、俺がちょっと皇女様かわいいなとか思ったからか!?罰か!?


「殿下、近いです……離れましょう、話がもうややこしくなっちまった」


「うふっ。いいねその口調……そちらの方が好感を持てるわ。地元の友達って感じで」


 実に魅力的に笑う皇女様。

 だからそれも無意識な訳?


「いい友達になれそうですね!!」


「そうね!」


 がばっ!


「だぁぁぁぁ!なんで抱きつくんだっ!」


「嬉しくて!」


 海外の人がハグしてくる感覚ですかねぇっ!!

 戸惑いしかない皇女様とのやりとり……大変疲れたよ。

 無理矢理剝がして、俺は言う。


「誰にでもこうなんですか?」


「まぁそうね。好きになった人にはするかしら、男も女もね」


 瞳の色が戻ってる。

 能力も落ち着いたって感じかな?


「気を付けた方がいいですよ、絶対」


「平気よ、好きな人にしかしないから。スクルーズくんも同じね」


 それは安直な考えで言うけど、俺を好きだと?友人的に。

 こんな短期間で信頼を持てるもんなのか?


「そりゃどーも。それじゃあ俺の事は名前で呼んで下さい……スクルーズは多いもんで」


「確かに、お姉さまの事もスクルーズさんと呼んでいたわ」


 俺はその絡み見てないけどな。


「それじゃあ帰りますよ」

(ってか早くひとりで作業したい……)


「むぅ……仕方ないわね」


 むくれないでくれ。


「じゃあ、お手を――」


 差し出した手に、ポンっと。


「わん」


「……」


 なんか犬の鳴き声が聞こえた気がしたが……俺はもう考えるのを辞めた。

 これ以上変な人間増やさないでくれよ、頼むからぁぁぁぁ!!

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