エピローグ8-4【蠱惑】
◇
【女神エリアルレーネ】がこの村に来た。
それは、地下に籠る【女神アイズレーン】も気付いている事だろう。
しかし……もう一人、この村に来ている女神がいることを、気付く事はない。
「……うふふ、
地面に伏す転生者、リディオルフ・シュカオーン。
ミオに敗れ、顔面から地面に突っ込み……今もなおこうして伸びていた。
そのリディオルフの眼前にしゃがみ込み、
彼女の指には、数枚のタロットカードが。
そのカードは、女神が転生者に能力を授ける為の基となる、神の権能を
十数人の転生者から回収して、イエシアスが所持しているもの。
「ざまぁないわねぇ。折角の能力も、我欲にまみれた貴方には宝の持ち腐れだったみたい……うふふ、返してもらうわよ?」
イエシアスはリディオルフの背中に手を
しかし……顔色を険しくし。
「――能力がないですって?」
直ぐにイエシアスは、リディオルフの胸ぐらを掴んで起き上がらせる。
「――ぅいぇ……!?……ぅお、おうあえ、えあ!?」
「リディオルフ。能力を使いなさい、【
「えぁ……!?――えんいぃっ!」
シーン……
「能力がなくなった!?」
ガスッ――!と、リディオルフを地面に叩きつけるイエシアス。
その衝撃で、再び
「……リディオルフが戦った相手は……ミオっ!」
イエシアスは今着いたばかりで、戦いを見てはいない。
ただ初めから、この男では誰であろうと勝てないと思ってはいたが。
思い出すのは、最後の転生者に贈られた能力リスト。
その中に、能力を奪う能力が存在する。
その名は【
「ふふふっ……やはりそうだったのね、ミオ・スクルーズ。彼が“チート能力全持ち”の転生者、アイズレーンの息がかかった……神に
疑いはあった。
この小さな村に生まれた二人の転生者、ミオとクラウ。
アイズレーンの名を
しかし、アイズ本人が張った結界には、他の女神を寄せ付けないと言う効果もあり、神力を使った侵入しか出来なかった。
神力も無限ではなく、こうして人間界で活動するには倍以上の消費を迫られる。
「結界を壊した時点で、私が来たことはバレる……だから極力この村に戻る事はしなかったけれど、リディオルフの能力を回収するだけのつもりが……思わぬものを引いたわねぇ……うふふ――と、いうことは」
この村に侵攻した聖女……イエシアスが転生させた女、レフィル・ブリストラーダも、ミオには勝てていないだろう。
「あの娘にも困ったものだわまったく、せっかく私が
聖女が複数の能力を所持していた理由。
それは、イエシアスが回収した能力を、そのままリフィルに移植という形で授けていたからだった。
「それじゃあ……さようなら、リディオルフ」
イエシアスは再びリディオルフに手を
そして発動させる……自分の権能を、回収した能力を。
「【
「がっ……あ、あ、あ、ああ、あああ、ああああああああああっ!!」
イエシアスの手元に光るもの……それはリディオルフの魂。
能力を回収できなかった八つ当たり、ミオに勝てなかった罰。
リディオルフの身体は段々と痩せ細り……そして、
ぺろり……と唇を舐めるイエシアス。
「ごちそうさまリディオルフ。これで九十九分の一くらいは回復できた、役に立てたわねぇ……」
骨と皮になったリディオルフの頬を撫でて、イエシアスは
「さてと、まさかエリアルレーネまで来るとは思わなかったから、神力も不安だし帰ろうかしら。収穫はミオが“チート能力全持ち”だと知れた事、アイズレーンの馬鹿がくたばる寸前だという事……うふふ、あはは……もう直ぐです主神様っ!」
イエシアスは天に向け両手を広げ、顔を赤くして己が使命を宣言する。
「主神様が命じられた、転生者を探す事が叶いました……もう直ぐ、能力の回収を行います、だからまた……世界を始めましょう!」
高らかに、高揚しながら、イエシアスは歩いて行く。
来た道を引き返す、場所は王国……自分が転生させた転生者が複数存在する、
主神が新たに生み出す世界の為に、新たな異世界の誕生に、その世界の母と成るために。イエシアスの真の目的は……絶対的な母、創造神へと成る事だった。
その為には、ミオ・スクルーズと女神が邪魔だ。
そしてその鍵を握るのは……誰が何と言おうと、不死の女王――シャーロット・エレノアール・リードンセルク、その人である。
~ 第8章【国と国とが交わる場所で】編エピソードEND~
―――――――――――――――――――――――――――――
8章が終わりました。お読みいただき誠にありがとうございます。
今章はバトル多め、胸糞多めで進みましたが、最後の方でスッキリ出来て……いると幸いです。
さて9章の始まりは、村に来た帝国皇女と【女神エリアルレーネ】がどうするのか。村に向かっているミーティアとジルさんもですね。
【国と国とが交わる場所で】……ということで、三国の国境に近い【豊穣の村アイズレーン】が舞台でしたが、焼けました……どうしましょう。
それでは、次章もよろしくお願いいたします。
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