7-52【エリリュア・シュベルタール2】



◇エリリュア・シュベルタール2◇


 エリリュアさんと部下の二人、サイグス・ユランドさんとニュウ・カラソラードルさんの自己紹介を終え、後に続いたのは俺だ。

 ジルさんから聞いてはいるのだろうけど、一応な。


「俺の名前はミオって言います、ミオ・スクルーズ……こっちは最近仲間になった――」


 俺はルーファウスに手を差し出す。

 ルーファウスは「あ!」と反応して、名乗る。

 もしかして自己紹介しなくてもいいとか思ってたな?


「僕はルーファウス・オル・コルセスカと言います、最近まで諸国放浪をしていましたが、魔物を倒してたいた所……こちらのミオくんに助けられて、行動を共にする事になりました」


「……」

(コルセスカ?……いや、それならば従姉上あねうえが気付かぬはずはないか)


 いやいや、助けられたのは俺だから。

 礼儀正しく頭を下げるルーファウス、なんだか礼儀を覚え始めた中学生みたいだった。


「「よろしくお願いします」」


「それでは……ミオ殿、でよろしいですか?」


「ミオでいいですよ、ジルさんもそう呼んでるし」


 俺は貴族でも何でもないしな。

 殿だなんて……照れるし。


「そうですか……ではミオ、ルーファウス殿も」


「あ!僕もルーファウスいいです!」


 合わせるように。


「助かります、それではミオ、ルーファウス……従姉上あねうえのもとへの案内役、よろしくお願いします」


 深々と頭を下げるエリリュアさんに合わせて、後ろの二人も「よろしくお願いします!!」と頼まれる。

 やっぱり、悪意があるとは思えないな。


「了解です……それじゃあ、行きましょうか。俺たちの拠点に」


 距離はそう離れていない。ミーティアとジルさんも、今日はリハビリも無しで拠点にいるから、問題は起きないだろ。

 いや一つだけ……ジルさんがこの人たちにどう反応するかだけは、分からないか。




 何事も無く、特に話す事も無いから真っ直ぐに進み拠点に到着。

 さてと……それじゃあ。


「そんじゃあ、ちょっと待っててください。念の為、確認してきます」


 俺はエリリュアさんにそう言い、拠点に入る。

 カチャリとドアを開けると、サッと直ぐに閉めて中から見えない様に。


「……おかえり?」


「ただいま、ティア」


 若干不審な俺の動きに小首をかしげるミーティア。

 今日は星柄リボンOFFオフの日か……うん、ロングもいいね。


「えっとティア、ジルさんは?」


 リビングで夕食を配膳準備していたのか、ミーティアはトレーに乗った皿を置いていた。この前、【テスラアルモニア公国】の小さな村からこそっと買って来た硬いパンだけど。


「ジルリーネ?……台所だけど、どうしたの?なんだか、変だけど」


 ジト目で見てくる。

 変とは失礼……いや、変だな。ごもっともだった。


「ちょっと用事。来客って言うか、たずね人?込み入った感じもあるからさ――ああ大丈夫、敵じゃないよ」


「ジルリーネに?う、うん……分かったわ、呼んでくるね」


 詳しく聞かない所に好感を持てる。

 さっしてくれているのか、それともウィズが事前に伝えたか。


『ウィズは何もしてません』


「そうかい」


 数十秒後……


「どうしたミオ、わたしに客だって?」


 両手に剣を持ったジルさんが登場した。

 何故??台所から剣を持ったシェフ?


「えっ……と、エリリュアさんって知ってます?」


「――!!……くっ、そう来たか……」


 一瞬おどろき、しかし直ぐに剣をさやに仕舞い、右手で顔をおおった。

 それだけでなんとなく理解した。この人、ガチで避けてたんだな、自分の母親。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る