6-64【秋の田舎に響く想い2】



◇秋の田舎に響く想い2◇


 リアの故郷を短期間で探すのは、限りなく不可能に近い。

 【ステラダ】に連れて行くにしても、各所に迷惑をかけることになる……なら、どうする。


「……リアは、お家に帰りたいよな?」


「うん。でも……仲間・・がいるから」


「!?……それって、もしかして」


「――アイシアの事でしょ」


 アイズが食い気味に言う。

 ソファーの背凭れにだらしなく両腕を回して、天井を仰ぎながら。


「そうなのか?」


 リアに確認するが、確定かのような満面の笑みで。


「――うん!アイシア!」


 やっぱり、この子はもう……アイシアを同存在と認識しているんだ。

 EYE’Sアイズとして。


「ならもうここに置いときなさいよ……能力が暴走する可能性はあるけど、他の町や村に居るよりは安定する筈よ。あたしがいるからね」


「……お前はそれでいいのかよ」


「……」


 無言で天井を見続けるアイズ。

 それだけで分かる……よくは、ないんだな。


「リア、帰れないの?」


 一人称が名前のリアは、自分を指差して言う。

 不安そうに眉をひそめるが、仕草は可愛い。


「今すぐは、無理かな。本当は帰してあげたいけど……どこか分からないからね。リアは、ご両親……お父さんとお母さんのいる場所、分からないんだよね?」


 リアは静かにうなずく。

 それでは、やはり手詰まり感がいなめない。


「その子はとりまこの村に置いておきなさい。【竜の谷】は……あたしが【拡張探索エクステンションサーチ】で探しておくから」


「エクステンションサーチ……って、確か前も」


 いつだっけ、確か……ああ、そうか。

 この村に魔物の大群が押し寄せた時だ。


「それって、もしかしてお前の……EYE’Sアイズの能力なのか?」


「そうよ。EYE’Sアイズは全員、なにか固有能力を持ってる。あたしの場合はそれ……【拡張探索エクステンションサーチ】、世界全体を探索できる、チートサーチね。魔力の燃費がヤバくて、なかなか使い物にならないけど……特に人間の身体じゃ」


 もしかしてアイズは、俺が知らない所でその力を酷使こくししていたんじゃないのか。

 だから……疲れているように見えるんじゃ。


 俺の視線に気付いたのか、アイズは身体を起こして言う。


「なぁによその顔、辛気臭い顔するんじゃないわよ。神の力は極限まで下げられてるけど、使えない訳じゃないわ。【拡張探索エクステンションサーチ】だって使えるには使える……【竜の谷】の一つや二つ、直ぐに見つけるわよ」


「いや、そうじゃなく……」


「――やめときなさい、ミオ」


「……」


 アイズは真剣な顔で、俺を見る。

 普段のふざけた態度じゃない面持ちの、綺麗な笑顔で。


「アンタは黙って、自分の周りに気を配りなさいな……アイシアに、その子。それにあの人間の子、ミーティアだっけ?これ以上厄介ごとを増やさなくたって、別にあたしはいきなり消える訳じゃないわ……だから、ね。そんな顔をされたら、あたしがまるで可哀想かわいそうみたいじゃない――これは、女神さまからの助言よ?素直に受け取っておきなさい」


 自分がどんな顔をしていたかなんて、俺には分からない。

 だけど、そのアイズの言葉が、声が……俺の心に残るのは確実だと、そう思った。

 女神からの助言。確かに受け取ったよ。

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