6-3【常闇の者《イーガス》1】



常闇の者イーガス1◇


 宿に戻った私とラクサーヌは、宿の店主に用意してもらった地下に降りる。

 そこでは、レスティ先輩が待機していた。

 私が行動不能にした、【常闇の者イーガス】の構成員を前に。


 降りてきた私たちに背中を見せたまま、縛られる構成員を見下げて言う。


「お疲れ様二人共。汚れは落とせたかしら?」


「……あ、はい。すみません時間を取らせて」


 レスティ先輩は手に持つ打鞭だべんをペシペシと自分の手のひらで鳴らす。

 地下というだけでやけに響くわね。


「いいのよ。こちらもこれからだし……」


 パシーン――!!


「……そんなもんで叩かれようが、俺は口を割らねぇぞっ!このガキども……仲間を次々と殺しやがって!!」


「それはこの子が」

「それは後輩が」


「文句ある?」


 男の叫びに、相手にしないまま流す。

 ラクサーヌは一歩踏み出し、指を鳴らした。

 コキコキ……ゴキゴキ……と。


「――ひっ」


 ラクサーヌには何を言っても無駄よ。

 でも、まぁ……さっき言ったばかりだしなぁ……


「先輩、ここは私に任せてください……ラクサーヌは拳をしまいなさい」


「クラウさんが?」


「ええ……――【クラウソラス】っ!」


 私は光の剣を出現させる。

 ラクサーヌが肉体的にボコボコにするより、私が精神的にダメージを与えた方がいいでしょ。


「そ、そんなもんでなぁ……俺は仲間を売らねぇからなっ!」


「仲間は死んだでしょ……あとはアンタだけよ。【常闇の者イーガス】の構成員、ヤクマ・ヘブルスさん」


 【クラウソラス】をちらつかせ、一度穿うがたれた足に近付ける。

 冷や汗を搔いているから、恐怖の感情を隠せてないわね。


「さて、レスティ先輩……依頼はなんですっけ」


「今回の依頼は、【常闇の者イーガス】の構成員の捕縛ほばく……小規模だけれど、小さな傭兵団から情報を盗み出した。と」


 その構成員が……このヤクマって男と、複数の仲間。

 この男が言った通り、残りの仲間はラクサーヌがってしまったけど。


「それがどうしたっ……情報はもうねぇぞ!そこのピンク頭が殺しちまったからなぁ!!」


「「……」」


「……あ」


 私とレスティ先輩の視線を受けて、ラクサーヌはようやく自分がやらかしている事に気付く……遅いのよ。


「へっ……さっさと警備隊でも呼べばいいだろっ!無駄なんだからなぁっ!」


 無駄……か。


「――どうかしら。やってみないと分からないわよね?」


「……へ??」


 情報は確かに無いのかもしれない。

 それでも、聞き出せることはまだあるかも知れないし……ねぇ?


「平気よ、死にはしないし……外傷もないから・・・・・・・


「な……に?」


 私は【クラウソラス】を男の眼前に突き付ける。

 足に受けた【貫線光レイ】であれほどの痛みなら、【クラウソラス】でそのまま斬り付けられたらどれほど痛いか……私の匙加減さじかげんとは言え、相当なものだと思うわよ?


「さぁ――なんでもいいわ、私たちの失敗の分……情報貰うわよ?」


 そう言って、私は【クラウソラス】を使った……拷問オペを始めるのだった。

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