3-6【事業拡大の話?】



◇事業拡大の話?◇


 俺とアイシアは、帰りに雑貨屋【トルタン】に寄ったり、何もない広場で二人でぶらぶらしたりして、俺は家に帰った。

 勿論もちろん、アイシアを家に送ってからな。


「あれ……?」


 俺が新居であるスクルーズ家に帰り着くと。

 家の前に、馬車が停車していた。


 確かあの馬車は……そうだ、【クロスヴァーデン商会】のだ。

 なんで今日も来てるんだ?野菜はこの前出荷したばかりなのに。


 ん?ああ、もしかして……あれか?


「……従業員の目途めどが立ったのかな?」


 商会の誰かがその報告に来たのだろうかと思い、俺は邪魔にならない様に抜き足差し足で、静か~に家に入る。

 台所では、レイン姉さんがお茶をれていた。


「……レイン姉さん。ただいま」


「――わっ、ミ、ミオ……ビックリしちゃった」


 ごめんごめん。


「ごめん姉さん……お客さんが居たようだったからさ」


 静かに入って来たんだよ。


「……あ!じゃあおどろくかもしれないわね?」


 はい?何に?


「それじゃあ……お茶を持って行くの手伝ってっ」


 まぁ、それはいいけどさ。

 一、二……三四、五……何人来てんの?


「ほらほら、行くよ……?」


「あ~、うん」


 仕方ない、とにかくお茶を運ぶか。

 俺とレイン姉さんが客間に行くと、そこには帰宅していた父さんと、母さん、アイシアの母親リュナさん。


 そして……


「――ミオ!」


 透き通るような綺麗な声。かがやく青い髪……それと同じ色のひとみ

 均衡きんこうのとれた抜群のスタイル。


 十七歳になった……ミーティア・クロスヴァーデンが、そこにはいたんだ。


「え!……ミ、ミーティア!?」


「ええ。久しぶりね……また格好良くなったのではない?」


 ソファーから立ち上がって、俺の所まで来るミーティアだが。

 もう、俺の方が身長はでかい。

 上目遣いで俺を見上げるミーティアは、薄っすらと化粧けしょうをしていた。


 うっ……やばい、可愛い。

 俺は顔をらした。


「あはは、照れなくてもいいのにっ」


「――て、照れてないよっ」


 ごめん。めちゃくちゃ照れる!!

 大人だ、クラウ姉さんと同じ年には見えないんだよなこの子……相変わらず。


「――お嬢様……話の途中ですよ?」


 おっと……その声は。

 なんだ……二人で来てたのか。


「ジルさんっ!ジルさんも来てたんですね」


「ごめんなさい、嬉しくて……つい♪」


 銀髪をポニーテールにして、特徴的とくちょうてきな長い耳……エルフのお姉さん。

 ジルリーネ・ランドグリーズと言って、俺とクラウ姉さんに戦い方や外の事を教えてくれた、言わば師匠のような人だ。


「――まぁ、契約は済みましたし、いいのですが……――ふふっ、久しいなミオ。数ヶ月ぶりだ……」


「はいっ!」


 変わらないな。当たり前か、長寿で有名なエルフなんだもんな。

 だけどいつもの鎧は着ていないから、ゴツゴツしていない分スタイルが際立つな。


 しかしそれつまり、ジルさんは【リューズ騎士団】の副団長として来た訳ではなさそうだ。

 それにしても……いいもんだな。パンツスタイルも。


「こらっ……」


 いたたたたっ……ミーティアに、ジルさんを見ててのがバレたっぽい。

 耳をつねられた。


「痛いって……ミーティア」


「――もう、折角なんだから私を見てよっ」


 だ、だから!恥ずかしくて見れないの!


 俺は、レイン姉さんと共に少し離れた所の椅子に座る。

 そこで心を落ち着かせるように、お茶を飲んだ……うん、美味い。


 一方で、ミーティアはソファーに座り直して。


「すみませんルドルフさん……まだ子供みたいで」


「いやいや……契約はもう終わっていますし、構いませんよ。それで、いつからなのですかな?」


 何がだ?契約って……従業員の補充ほじゅうじゃなかったのか?


「それはもう、今日からですっ」


 うわー、いい笑顔で言うなぁ――って、だから何が?

 俺はまったくついて行けていない。

 置いてけぼり……と言うか、なんだろうな、この感じ……ソワソワするぞ。

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