美鈴、三人で話し合っています

 ここはギルドマスターの部屋。エリュードはまだ顔を赤らめ自問自答していた。


 片やゴルイドは、エリュードの真向かいに座り、けだるそうにしている。


(そもそもなんで俺が、エリュードなんかのために悩まなきゃなんねぇんだ? あーやめたやめた。ほっときゃなんとかなるだろ)


 そう思うと気が緩み眠くなり欠伸をした。


(ルイドは、まだ来そうもねぇし寝るか)


 そしてその後、目を閉じ眠る。




 一方エリュードは、目の前にゴルイドがいても眼中になく、いまだに顔を赤らめボーっとしていた。


(ハァ、本当にこれが恋煩いなのか?)


 どうしても納得いかず思い悩む。


 そうこうしていると、扉の向こうからドカドカと急ぎ足で廊下を駆ける音が聞こえてくる。


 それと同時に扉が開き、ルイドが部屋の中に入り二人の側まできた。


「二人共、大変だっ! ミスズが消えた」


 それを聞きエリュードは、驚き立ち上がり顔色を変えルイドをみる。だがゴルイドは、深い眠りについていて起きない。


「消えた、って。どういうことだ?」


「言葉の通りだ。確かミスズは、女神に召喚されたんだったな」


「ああ、そうだ、が。まさか、女神がミスズを?」


 そう問われルイドは、コクリと頷いた。


「まだ断言できんがな」


「……だが、なぜだ? なんのために、」


 エリュードは俯き考え込んだ。


「その時なんだが、リムと三人で話をしてた」


「話、いったい何を?」


 そう聞かれルイドはその時のことを説明する。


 エリュードはその話に耳を傾けていた。


(俺とミスズを……って、いやそれはいいとして。だが、その話の最中にミスズが忽然と消えた。

 こんなことができるのは、恐らく女神ぐらいだろう。もしこれが女神の仕業だとして、ずっとミスズを監視してたってことか?

 確か女神がミスズを処分するため、野獣の住処に転移させたって言ってたな)


 そう思うと顔が青ざめエリュードは、嫌な予感がし慌てて部屋を出ようとする。


 ルイドは即座にそれに気づきエリュードの腕をつかんだ。


「待てエリュードっ! お前、ミスズが飛ばされた場所わかってんのか?」


「いや、分からない。だが、ここにこうしてるうちにもミスズが、」


 そう言いルイドにミスズがこの世界に来た経緯を知ってる限り話した。


「まさか女神がそんなことを、そうなると早くみつけないとやべえかもな」


「だが、クソッ! 居場所が分からないんじゃ、どう探したら」


「うむ、確かに闇雲に探してもみつからんだろう。だが、使い魔でもいりゃ別だろうがな」


 使い魔と聞きエリュードはヴァウロイのことが頭に浮かんだ。


(使い魔ならヴァウロイがいる。だが、魔族と関わりのあるアイツに頭を下げるのは嫌だ。

 それにヴァウロイが、魔族の使い魔だって知れたら大変なことになるんじゃ)


 そうこう二人が話をしているとゴルイドは、眠い目を擦りながら起き口を開いた。


「ん? 確か使い魔ならヴァウロイがいたんじゃ」


「おい、ゴルイドっ! それは、」


 まずいと思い慌ててエリュードは、ゴルイドの口を塞いだ。


 だがルイドはそれを聞き逃さなかった。


「ほう、使い魔がなぁ。なんでいるのかは知らんが、それは好都合。で、その使い魔はどこにいる?」


 そう言われエリュードは、一瞬ためらったが大丈夫だろうと思い話し始める。


「ルイド、多分ヴァウロイならライルと一緒だ」


「じゃ、一緒ってことはライルの使い魔なのか?」


「いや違う。アイツは、……」


 エリュードは、魔族の使い魔だと言いかけたがやめた。


「言えないってわけか。なんか事情がありそうだな。まぁいい。ところでライルはどこにいる?」


「ライルの居場所か。さっきも言ったが、俺は知らない」


「俺も同じだ。あのあとライルちゃんが、どこに行ったか知らねぇ」


 そう言いながらゴルイドは、自分を押さえつけているエリュードの手を払いのける。


「そうか。念のためリムに、ライルを探させて正解だったかもな」


「ルイド、相変わらず抜かりねぇな」


「ああ、嫌な胸騒ぎがしたんでな。それにライルもお前たちと旅をしてたってことは、このことを一緒に話し合った方がいいと思った」


 そうエリュードとルイドが話をしている最中ゴルイドは、そっとこの場から逃げようとした。


(ミスズちゃんのことは心配だ。だが、面倒なことはごめんだ)


「「おい、ゴルイドっ!?」」


 だが即、二人に気づかれ元の位置に戻される。


「まさか、面倒だから逃げようとしてたわけじゃねぇよなっ!」


 エリュードはゴルイドを見下ろし睨みつけた。


「その様子じゃ、エリュードの言う通り図星だな」


 そう言うとゴルイドの胸ぐらをつかんだ。


「すまねぇ、ちょっとした出来心なんだ、もう逃げねぇから離してくれ」


「本当だろうなっ!」


 ルイドにそう聞かれゴルイドは、顔にダラダラと汗を流しコクリと頷いた。


 それを確認したルイドはゴルイドを解放する。


 その後三人は、リムがライルを連れてくるのを待つか、待たずに探しに行くのかを話し合った。

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