美鈴、まったく信用されていないようです

 美鈴は何が起きたのか分からず混乱していた。辺りは白黒に染まり、器用な格好で野獣たちが静止している。


 呆然としている美鈴の目の前には、翼の生えた灰色の三毛猫がいて怒っていた。


「何間抜けな顔して、ボーっとしてるんだニャ!」


 美鈴はそう言われ、ハッと我にかえる。


 すると美鈴は、翼の生えた灰色の三毛猫に視線を向けた。


「あ、えっとぉ。もしかして今の状態って、時が止まってるの?」


 美鈴はそう言い、辺りをキョロキョロと見渡してみる。


「もしかしなくても、みての通りそうだニャ!」


 翼の生えた灰色の三毛猫は、あきれた表情になりため息をついた。


「っていうか、何者!?」


 美鈴は目の前に不思議な生き物がいることに、今ごろになり気づき驚き問いかける。


「あのニャァ。はぁ、まぁいいかぁ。ボクは使い魔のヴァウロイ」


「使い魔ってことは、もしかして魔王とかの?」


 少し期待しつつ美鈴は、ヴァウロイに問いかける。


「ヒィッ! 滅相もありません。いえ、流石に魔王様じゃないニャ」


 ヴァウロイは、違うと言わんばかりに首を思いっきり何度も横に振った。


「ふぅ〜ん、そっかぁ。少し残念だけど、その使い魔がこんなとこで何してたの?」


 ちょっと期待していただけに美鈴は、ガッカリした表情になる。


「よくぞ聞いてくれたニャ! ボクはあるお方の命で、女神が召喚した勇者を探してたのニャ」


 ヴァウロイは、ドヤ顔で答えた。


「そうなると。ウチに気づいて、危ないところを助けてくれたってことかな?」


 そう言われヴァウロイは、不思議に思い首を傾げる。


「何を言っているのニャ? 君が女神に召喚された勇者? そんなの、どうみてもあり得ないニャ!」


 美鈴をみてヴァウロイは、あきれた表情を浮かべた。


「勇者の気配がしたから、ここに来たっていうのはあってるのニャ。だけど君を助けたのは、みていられなかったからだニャ」



 そう姿を消しヴァウロイは、ただあてもなく勇者を探すべくさまよっていた。


 美鈴が野獣の住処に転移した直後、勇者の気配を感じこの建物の中へと入る。


 その後、ここに勇者がいると思い姿を消したまま様子を伺っていたのだ。



「たまたま助けたって? 確かに、ウチは勇者じゃないかもだけど。でも間違いなく、あのクソ女神に召喚されたのは事実だよ」


 美鈴がそう言うもヴァウロイは、その言葉を信じられなかった。


「クソ女神って。やっぱり信じられないニャ。ん〜、そうだニャ! ボクの能力で君を調べてみれば、本当に君がそうなのか分かるのニャ」


 ヴァウロイは、どうしても信じられなかった。


 だが美鈴が嘘を言っているようにもみえず、半信半疑ながらも自分の能力を使い美鈴のことを調べ始める。


 ヴァウロイは何やら呪文らしきものを唱え始めた。するとヴァウロイの目が虹色に光りだし放たれ美鈴を覆い尽くす。


 それと同時にヴァウロイは、急にお腹を抱えながら大笑いし始める。


「ニャハハハ……って、ちょ、待ってニャ! これって、笑えるステータスなのニャ!」


 ヴァウロイは、あまりにも美鈴のステータスがあり得ない数値だったため笑いを堪えていた。


「だけど、女神に召喚されたっていうのは間違いないみたいだニャ」


「ムッ! そこまで笑わなくても」


 美鈴は笑われ、ムッとした表情になる。


「あ! ごめんごめん。でもこのステータスじゃ、このまま野獣たちと戦うのは無理なのニャ」


 ヴァウロイは、なんで女神に召喚された勇者がこんなステータスなのかと思考を巡らせた。


「そうなんだよねぇ。そもそも、特殊能力が『無』ってどういう事なの?」


「特殊能力が『無』? そんな能力、今まで聞いたこともみたこともないのニャ」


 そう言いヴァウロイは美鈴を更に調べる。


「ん? この能力って! まさか!? でもそんな、あり得ないのニャ」


「えっ! そんなに驚くほど、ウチの能力って凄いの?」


 美鈴は、凄い能力なのではと思いワクワクし始めた。


「ううん、凄いというか。これって信じられないのニャ」


 ヴァウロイは、なんと答えたらいいのかと思考を巡らせる。


 すると美鈴は、ヴァウロイの表情があまりにも暗くなり不安になった。


 その後美鈴とヴァウロイは、ただただ沈黙している。そして周りの空気がドンドン重くなっていった。


(いったい、この『無』の能力ってなんなの? てか、いつまで時を止めておくつもりなのかな?)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る