第20話 東公先生 梃子を語る

東公先生山道を辿りし時に、大岩道を塞ぐに出遭う。

道行く人皆困りたり。


これを見たある俊才ならん若者いわく。

この大岩梃子にて動くべしと。


若者、その場におりし商人が荷を担ぐために持ちし棒をとり、砕けたる岩のかけらを大岩の間近に置きて支点となし、棒を大岩の下に差し入れて動かさんとす。


東公先生それを見ていわく。

待つべし。その方法にては大岩動かずと。


若者東公先生を侮りていわく。

汝物の理を知らざる者なり。梃子あればいかなる物も動かせるなりと。


東公先生黙す。

若者梃子に力を入れ大岩を動かさんとす。

されど、棒折れ岩のかけら砕け、大岩動かず。


東公先生いわく。

物の理はひとつにあらず。

勉学に励むはよし。されど己の学びし理のみにて足ると思うは悪しと。




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