甘えん坊なヤンキー妹
Yuu
プロローグ
1 妹と同衾とか朝から忙しい!
とある日の朝。
俺は気持ちの良い目覚めを迎えた。
鳥のさえずりが朝を知らせ、カーテンの隙間からは気持ちの良い日光が溢れ出ている。
開いた窓からは、朝の澄んだ匂いの含む涼しい風が舞い込み、俺の肌をそっと撫でる。
朝はいつも機嫌が悪く、遅刻ギリギリまで寝ているような俺がなぜこんな朝を迎えられたのか。
答えは簡単!!
同じ布団で妹が寝ているからだ!!
…………。
自分で思って初めて気がついた。妹が横ですやすやと可愛い寝息をたてて寝ている。
幸せそうに睡眠を謳歌している妹の顔を見て絶望した。
え? 高校生の俺が
人間としてやってはいけないことをしてしまったのではないかと不安に駆られる。
俺、勢いで襲ってたりしてねぇよな……。
記憶がないだけとかじゃねぇよな……。
そんな覚え全くねぇぞ。
とは言っても、横で今もなお美少女は寝ている訳で……。
あどけない端麗な顔。その小さな顔は美しいというよりは可愛いという言葉の方が似合う。
ひとまず、バレないようにここから退散しなくては。高校生という多感な時期に妹と同衾とかバレたらマジで取り返しがつかない......。
音が立たないようにそっと腰を上げようとしたのだが、体が動かない。
ということは、だ。
今考えられる最悪とは......。
恐る恐る自分の腰に目を向ける。
正直に言うと、泣きたくなった。
現在、横で絶賛睡眠中の妹の可憐な手によって、腰がガッチリとホールドされている。
つまり、俺に体を密着させるようにして。
甘い匂いに柔らかい感触。微かな吐息の感触が身を撫でる。
これはエ〇い!!
なんて思うはずもなく、
マジで冷や汗をかいた。普通はドキドキするような場面なのだろうが、今は自分の名誉を守るために必死なのだ。いちいち背中に当たる胸の感触なんて味わっている暇もない(後になって後悔したのだが……)
この絶望的な状況を打破するには……。
当然、ホールドされている手を振りほどいて逃げることはできる。だがそれでは妹が目を覚ましてしまう。妹が目が覚ます=死だ。
だが目を覚まさせずに妹からの拘束を解いて逃げるのは不可能だった。思いのほか強めにホールドされているからだ。
マジでどうしよう……。
その時だった。俺は一つの疑問を思い浮かべた。
なぜ妹は隣で寝ているのか。
就寝時の記憶はまだ鮮明に残っている。
妹と一緒に寝た記憶なんてない。
というか、妹が部屋にいる状態で寝ることなんてしない。
つまり、俺は被害者!! きっと俺が寝ている間に勝手に布団に入り込んで来たのだ!! 責められるべきなのは妹! 俺は罪なき一般人!
いやこんな状態なら真っ先に男が疑われるのは当然なのだが、この時は驚きと不安でまともな思考回路をしていなかった。
そして、勝ち誇ったようなドヤ顔で妹を起こす。俺に怖いものなんてない!! 俺被害者だもん!
現実逃避しながら妹の肩を叩く。
「おい、起きろ」
何回叩いても起きないので割と強めに引っ叩く。すると妹はゆっくりと目を開ける。
兄が同じ布団にいるというのに驚いた顔もせず、むしろ幸せそうな笑みを浮かべながら囁いた。
「おにいちゃあん、おはようー」
甘あぁああああああい!!!!
こんなの日本の……いや世界中の男子を敵に回したようなもんじゃないか!! 俺、嫉妬で殺されるのかな……。父ちゃん母ちゃん今までありがとう!!
なんてバカみたいなことを考えていると、妹はそそくさと布団から脱出し、部屋から出ていった。
いきなり部屋に一人残された俺は呆然としていた。いきなりすぎて追いつけない。
眩しすぎる日光と、妹の甘い香りに包まれながら「気持ちの良い朝だ」 なんて呟いてみる。
俺が部屋から出たのはそれから二十分も経ってからだった!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます