あの匂い

肌に触れた瞬間にだけ香るあなたの匂いを

私は知っている


その一瞬の香りを

私は今も覚えている


あなたの髪をかきあげた時だけ

あなたと密着して首の辺りに私の顔がある時にだけ

あなたと手を繋いだ後にふっと香る


そんな匂いを今も覚えている



そんなはずはないのに

今日街ですれ違った人から香ったあの匂いで

全てが蘇る


そんなはずはないのに

振り返ることは反射的だった


だけれども


君じゃなかった



匂いと記憶は

どうもこうして繋がりをもっているのだろう

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