四景

四景


舞台上にペンキの入ったバケツが大量

舞台中央で倒れているグリフォン

腹にナイフが刺さっている

バケツをぶちまけるルノワール


ルノワール ああおわたおわたおわた。負けた。折ってしまった。終わってしまった。終わりだ。何も見えない。くたばる。死だ。私はいない。誰もいない。いないがいる。いるっ!!


ルノワールに近づいてくる伊達サングラスをかけたプロデューサー


プロデューサー おめでとう。貴方は選ばれました。

ルノワール なんなんだよお前。

プロデューサー 貴方こそ真のアーティストになる資格がある。

ルノワール そんなのしるか。

プロデューサー 素晴らしい。その態度。神々しい。

ルノワール 死ね。お前も死ね。


プロデューサー、ペンキを浴びる

退場するルノワール


後ろに文章が流れる

『詩はいつまでも根気よく待たなければならぬ。人は一生かかって意味を集めなければならぬ。そうして最後におそらくわずか10行の立派な詩が描けるだろう』


プロデューサー 彼女は自分の才能に気づいていない。私が教えてあげなければ。


プロデューサー、ルノワールを追いかけていく


くたばっているグリフォンの周りを黒いカラスが飛ぶ

足首に枷をかけた天のうさぎがやってくる


うさぎ 救いはない。二度はない。何もかも一度きり。そして一度きりに乾杯は訪れない。我々は総てを受け流して生きていく。僕も彼も誰一人生き返ることはない。昨日は遠ざかっていく。もうないんだ。だから。諦めよう。総てを。そして愛しよう。総てを。貴方が好きです。大好きです。大好きだから生きていける。


うさぎグリフォンを抱きしめる


うさぎ 祝福を。幸福を。せめてもの幸せを。


うさぎグリフォンにキスをする


暗転

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