第3話 体育後

 体育後の休み時間。

生徒たちはうちわや下敷きで扇いだり、制服の襟元をパタパタさせている。


 俺はというと下敷きで自分ではなく隣の席の橘を扇いでいる。

体育の後は必ず橘を扇がされる。

橘は長い黒髪を束ねてポニーテールにしている。

あまり見れない姿に少しドキドキする。


 橘の机の上にはシーブリーズがある。オレンジ色。

俺は水色のやつを持っている。

なぜか俺と橘はシーブリーズのキャップを交換している。

強制的に交換させられた。

こういうのはカップルがやるものじゃないのか。


 橘たちの会話から予想するに橘に彼氏はいないらしい。

だがめちゃくちゃモテるらしい。

この前もバスケ部のキャプテンに告白されたとか噂が流れていた。

そりゃそうだこんな芸能人みたいな美少女。




俺もいじめられていなかったら、好きになっていたかもしれない。




そんなことを考えていると


「手、止まってるんだけど」


橘からの喝が入る。

俺は再び手を動かした。

橘のポニーテールが俺の扇ぐ風で微かに動いていた。

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