第126話 魔王簒奪戦開始
「グレイ、俺はイワンの相手をするから従者の方を頼む。」
「はっ!承知いたしました。」
イワンは俺に激怒し、身体から死の魔力を放出した。
「フハハハハハ!!!!これこそ俺様が魔王候補者たる所以、死の魔力だ!!」
とても自慢げに言い放っているが、大して量が多いわけでも密度が高いわけでもない…
ごく普通の死の魔力だった。
「…それがどうしたんだ?」
他者の死の魔力を見るのは初めてなので油断してはいけない。
もしかしたらごく普通に見えて特殊効果が付いているかもしれない。
「フハハ!!馬鹿なお前にはわからなかったか?まあ無理もない!俺様は選ばれた存在なのだからな!!!」
「それで…?」
「俺様より魔力量の少ない者がこれに触れれば即死だ!!せいぜい逃げ回って俺様を楽しませろ!!」
口ぶり的にも、俺の死の魔力と変わらないもののようだ。
とはいえ、イワンは本気で俺に勝てるとでも思っているのだろうか。
単純なステータス差は3倍近く開いているのに。
「…相手の力量も見極められないのか。魔王候補者も案外大したことないな。」
「あぁ!?なんだと!?そこまで俺様を怒らせたいのか…なら死ね!!!」
そういうと、イワンは俺を死の魔力で覆った。
「フハハハハハ!!!口答えしていた割にあっけない最期だったな!!!」
「…何かしたか?」
これは全く持って強がりなどではない。
俺が常に身体から放出させている死の魔力量の方が多いため、本当に何も感じなかったのだ。
「…は!?何故だ!!何故俺様の死の魔力を喰らって生きているんだ!!!有り得ない!!」
「はぁ…これで終わり?」
「ま、まだまだーーー!!!」
そう言うと、先程の倍ほど死の魔力を放出し、俺にまとわりついた。
だが、それでも俺の漏れ出す魔力より量も濃度も低い。
『もう少し他の魔王候補者のデータを取りたかったんだが…もういいや。最後に他の魔王候補者を喰らうと強くなるっていう話だけ試してみるか。』
「なっ!お、お前!!随分と余裕そうにしているが…はったりだな?」
本当にイワンはどこまで頭がお花畑なのだろうか。
「…はぁ。もういいよ。死の魔力はこう使うんだよ!!!」
俺は魔力を10倍ほどに練って密度を上げ、イワンにぶつけた。
「あああああぁぁぁぁ!!!!い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い―――!!!!」
イワンの身体で俺の魔力が当たった箇所は全細胞までも死に、そして粉になっていった。
「ど、どうして俺様がこんな目に!!!お、お前も魔王候補者だったのか!!俺様を騙しやがって…!!」
「今更気づいたのか。でも…もう遅い。死ね。」
今度は魔力をそのまま放出し、イワンに当て続けた。
「ああああぁぁぁぁぁぁ!!!痛い痛い痛いーー!!!だ、誰かぁーー!!!だ、だ…れ…か…」
『ふむ…魔力を10倍に練ってぶつけるのとそのままの魔力を10倍分当て続けるのとは同じか。』
丁度グレイも戦闘を終えたようだ。
もちろん戦闘というよりも蹂躙だったが。
「ダグラス様、魔王因子の吸収を。」
「どうやってやるんだ?」
「ただ相手の死の魔力を吸収すればいいかと。」
「分かった。」
辺りをよく見てみると、イワンが死んだら辺の空中に死の魔力が留まっていた。
変化を観察するため、一応”鑑定”してその画面を開いたままにした。
『よし、吸え!!』
すると、みるみるうちに空中の黒い魔力は全て俺の身体に入っていった。
鑑定画面を見ると、死の魔力の質と量が上がっただけでなく、ステータスも上昇していた。
『なるほど…こんな力を得られるからいつの世も魔王は一人しか存在しなかったのか。』
「ダグラス様、お疲れ様でした。」
「ああ。グレイもな。」
「恐縮です。ところで、今回他の魔王候補者を倒して吸収したことで魔王の座を狙った簒奪戦が始まりました。」
「あ、ああ。そうだな。」
「それで、この領地に名前を付けてはいかがですか?簒奪戦時の名称は候補者の名前か領地の名前からとられますので…」
「…そうなのか。…考えておこう。とりあえず散策に戻る。」
「かしこまりました。」
領地の名前はできるだけかっこいいものを付けたい。
こういったとき、失われたはずの厨二心がくすぐられる。
『とはいってもネーミングセンス皆無だからぁ…』
それから数時間考えたが、全く思いつかなかった。
帰宅後グレイ達幹部と話し合い、くじ引きで決めることになった。
結果、グレイの意見であるヴァルハラに決定した。
これは古の時代の神々が住まうとされている宮殿の名前らしい。
『厨二病全開だなぁ…』
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