第99話 幻術使い
「ダグラス殿、我々を召喚して下さりありがとうございます!ここからは我々にお任せください!」
「分かった!任せたぞ!!」
俺は師匠の近くに行き、一緒に観戦をしていた。
「ところでダグラス、ここはどこだ?」
「四神が住まう神域、秘境だ。」
「ってことはあの方々は四神だよな…?」
「…?ああ。」
「一体どこで…?」
「山岳都市の峡谷で会ってな。その時にテイムしたんだ。」
「…四神のテイムだと?それはまるで伝説のテイマーじゃないか!!」
「…?誰だそれは?」
「遠い昔、人間同士の戦争が収まらなかった頃、たった1人とその使役獣だけで戦争を辞めさせたと言われてる伝説のテイマー、ノーマン=グライナーだ!」
「へぇ…そいつはまだ生きてるのか?」
「いや。その戦争を止めた後テイムしていたはずの神獣に殺されたらしい。」
「っ!!」
「実際は利害の一致で仮契約をしていただけだったことが原因らしい。」
「そうか…」
四神はちゃんと契約をしたので大丈夫だろう。
少しテイムに対して不安を感じたが、最悪反抗されても力ずくで押さえればだろう。
「あと、医療室にいたはずが一瞬でここに移動したが…もしかして空間魔法か?」
「ああ。」
「…まじか。ダグラスは色々規格外だな。」
「褒め言葉として受け取っておくよ。」
「空間魔法もテイムもフィオナには黙っておけよ?絶対に色々うるさいから!!」
「はは…分かった。」
フィオナ先生が驚いて質問攻めしてくる姿が目に見える。
その後フィオナ先生が帰り、師匠と話していると突然巨大な魔力を感じた。
「っ!!なんだ!?」
四神たちの方を見てみると、朱雀vs玄武、白虎vs青龍で殺しあっている。
「どういうことだ…?」
「フハハハハハ!!!四神とはいえこの程度か!!無様だな!!!」
「貴様…何をした!!」
「Sランク冒険者カイルか。まあ魔法に疎いお前にはわかるまい!」
四神を”鑑定”してみると、”幻惑”という状態異常に罹っていた。
『今までに見たことが無いな…』
とりあえず四神に光属性魔法”パーフェクトキュア”を行使すると、皆我に返った。
「む…?我は一体何を…?」
「あの魔族の影響で”幻惑”という状態異常になってたんだ。」
「お手を煩わせてしまって申し訳ございません…」
「気にするな。」
「き、貴様ァ!!!またしても私の邪魔をするのかーーー!!!!」
「うるさいな…ところで四神、手助けはいるか?」
「いえ…もうあの術に罹るつもりはないので楽にしていてください。」
「そうか。頑張れよ!」
「ありがとうございます!!」
それから俺は再び師匠と観戦を始めた。
魔族のステータスはAランク冒険者程度なので、幻惑さえ封じられれば四神でも余裕で倒せるだろう。
玄武が魔法攻撃をその甲羅で軽々防ぎ、蛇の尾で強酸を吐いた。
カルザイはその強酸を大きく跳躍することで回避したが、朱雀が空中で追撃をした。
「くっ!!!小賢しい!!!」
カルザイが朱雀の攻撃を受け流して体勢を崩したところに青龍が迎撃した。
尾で強く地面にたたき落とし、そして落ちたところに白虎がとどめを刺した。
『…いい連携だったな。』
丁度いい機会なので、使役した魔物が倒した相手からも”鑑定&略奪”ができるか実験しようと思う。
ちなみにパーティメンバーを含めた他者が倒した魔物は不可能だったが、他者と共同で倒した魔物からは可能だった。
『さて結果は…?』
結論から言うと、可能だった。
魔族が習得していた”幻惑”をFランクで習得した。
効果は単体または複数の対象に任意で幻惑をかけるというもので、持続時間はMPがなくなるまでまたは使用者が解除するまでとのこと。
見せる幻惑は対象にとって楽しいものや辛いものなど様々があり、内容も任意で決められるようだ。
『四神をも惑わせたからな…効果の強さは把握しているが使う機会がわからないな。』
「ダグラス殿。少しお話が…」
「どうした玄武?」
「その…目標を果たしたのでそれぞれの秘境に戻ってもよろしいでしょうか…?」
「ああ。テイムは解除した方がいいか?」
「いえ。そのままで結構です。」
「そうか。じゃあ元気でな。」
「ありがとうございます…」
それから師匠を連れて医療室に戻ると、フィオナ先生が待っていた。
「ダグラス君!!カイル!!!無事でよかったわ…」
「すみませんフィオナ先生…心配をおかけしました。」
「ああ。すまないフィオナ。魔族の襲撃に遭ってな。」
「ところで急に現れたけどこれも魔族の影響?」
「あ、ああ。そうなんだ。」
師匠の嘘がすごく下手で、俺は変な汗をかいた。
「その頭をかく癖…何か私に隠し事してるでしょ?」
「い、いや!そんなことないぞ!!なあダグラス?」
「はい!何も!」
「ふーん…そうやって私をのけ者にするんだ…」
フィオナ先生の悲しそうな顔を見て、俺は洗いざらい話した。
「ええ!?空間魔法だって!?」
それからは質問の嵐だった。
俺は自分が何を話したのかすら忘れ、疲れて眠りについた。
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