第89話 武闘大会 第4回戦②
「それではステファ選手とカイル選手は会場に入場してください。」
”影縫”のスキルを持つステファ選手は勝ち残っている唯一の女性だ。
彼女は虎獣人で、その身体能力をスキルを使うのが戦闘スタイルだろう。
「カイル様が入場しましたーー!!!!今回もかっこいい姿を見せてくれるのでしょうかーー!!!」
「おおおおおおおおおお!!!!!」
「カイル様ーーーー!!!!」
師匠は観客席に向かって何かポージングをしている。
『師匠…そんなに気を抜いてて大丈夫か…?』
ファンサービスは大事だと思うが、流石に試合直前にするのはどうかと思う。
「ステファ選手の入場です!!!!!さぁその身体能力の高さでカイル選手をも打ち破れるかーー!!!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「可愛いぞーーーー!!!!」
観客の男性陣は師匠ではなくこっちを応援するようだ。
「彼女はこれまで余裕を見せる勝利でした!!まだ奥の手が隠れているのでしょうかーー!!」
「両者とも準備が整いました!!!それでは試合開始!!!!」
師匠はやはり相手の全力を受けてから反撃するようで、隙だらけの構えをしている。
すると、ステファ選手が”影縫”を行使して装備を影の鎧で包んだ。
「おーっとー!!!ステファ選手の装備に黒い靄がーー!!!あれが奥の手なのかー!!」
「ほう…それは”影縫”か?」
「っ!?どうしてそれを!?」
「昔それを使う奴と戦ったことがあるんだ。なかなかの使い手だった。」
「くっ!!」
師匠は戦闘経験が豊富なので、確かに知っていてもおかしくない。
師匠の驚く顔が見られるかと期待していたので、少し残念だ。
「ステファ選手、攻撃を仕掛けましたーー!!」
師匠はそれを盾で受け流している。
『…もしかして力で負けて真っ向から防げないのか?』
魔器と同じような感じの強さになっているのだろう。
しかし、師匠の顔に焦りの表情は見られない。
「カイル選手、軽々と攻撃をいなしています!!!ステファ選手にも倒せないのかーー!!!」
「くっ!!」
どうやら”影縫”は”魔力念操作”と同じくMPを消費するようで、徐々にステファ選手に疲れの色が見え始めた。
「そろそろ反撃行くぞ!!!」
師匠は剣を大きく振り、距離を取った。
ステファ選手がその攻撃を回避して体勢を崩したところで距離を詰め、1撃で仕留めた。
「試合終了ーーー!!!!カイル選手、激しい攻撃を防いで華麗に1撃で決めましたーーー!!!!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「カイル様万歳ーーー!!!」
この試合を見て、師匠との間にある埋まらない戦闘技術の溝を再認識した。
どれだけ努力しても追いつかない、そんな気さえする。
『こんな弱気じゃだめだ!!!努力を重ねて師匠に打ち勝つんだ!!!』
俺は自身に喝を入れ、気を取り直して観戦を続けた。
同時にこっそりと魔器の練習をした。
「今日の武闘大会はこれで終了です。また明日ご来場ください。」
『…終わったか。』
師匠の試合以外は特に目を見張るものがなく、退屈だった。
おそらく皆まだ奥の手をとっておいているせいだろう。
『よし、気持ち切り替えて”魔力念操作”の練習しよう!!』
武闘大会中に鍛えた結果、魔器の成功率は100%になった。
なので、今度はもっと迅速かつ正確に使えるようにしたい。
俺はただひたすらに魔器を行使しては消し、行使しては消し…を繰り返した。
夜まで続けた結果、ついに任意に操作できるようになった。
『よっしゃーー!!師匠との戦いの切り札にしよう!!』
正直魔法が使えれば師匠に勝つのは簡単だろう。
ハワードの時のように結界魔法で閉じ込め、そこに攻撃魔法を”転移”する羽目技で瞬殺だ。
とはいっても武闘大会では強化系魔法しか行使できないので、それは不可能だ。
あくまでも武技の戦いなのだ。
『ないものねだりしても仕方ないか…』
武技のスキルランクと戦闘技術は少し別物で、片手剣Sの人が片手剣Cの人に負けたという事例もあるほどだ。
しかし、スキルランクが上がるだけである程度上達するのも事実だ。
『今後の課題は戦闘技術を上げることだな!!』
具体的には対魔物、対人類でそれぞれ上げる必要がある。
前者はただ魔物と戦えばいいので楽だが、後者を上げるには大会に参加したり盗賊と戦ったりするくらいしか機会がないためなかなか難しい。
『…盗賊かぁ。倒した盗賊が所有してた金銀財宝は討伐者のものになるから夢があるよな。』
今度ギルドでクエストを受注して一儲けしようと思う。
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