第60話 決着
俺は海龍の背後に”転移”して攻撃しては上空に”転移”して攻撃を防御してを繰り返した。
『ブレスの方が防御が容易いからな…物理攻撃に注意していれば何とかいける…!』
防御で砕けた分の結界をすぐに展開することで俺は何とか無傷で戦い続けられている。
しかし、今のままでは海龍に対する決定打がない。
未だにHPは本来の10%ほどしか削れていないのだ。
『何か…何か強力な1撃はないのか…?』
そうはいっても戦闘中に新しくスキルを習得する隙など無いので、手持ちのスキルでどうにかするしかない。
何かないだろうか。
『…そうだ!体表が硬いなら”体術”スキルで内部を破壊すればいいじゃないか!!』
体術スキルを行使するには素手にならなければいけない。
そのため、今よりもっと防御が薄くなる。
『…腹をくくるか。』
俺はできるだけ被弾を減らすために”気配遮断”と”暗殺者”を行使して気配を消して近づいた。
「貴様…何処へ行ったぁ!!!!」
俺の気配を感じなくなったせいか、海龍は周囲に全体攻撃をして暴れだした。
『くっ…!!さっきより近づきにくくなってしまったな…』
しかし、全体攻撃にも死角がある。
俺はそこをついて海龍に近づき、体術D”内破掌打”を行使した。
「ぐあぁぁぁ!!」
これは効果抜群のようで、1撃でHPが結構減少した。
『よしっ!!これならいける!!』
次に俺は体術S”粉砕破掌打”を行使した。
「ぐぁぁぁぁ!!!!貴様ぁぁ!!!!!」
すると、”内破掌打”よりも効果があった。
『”外破掌打”の方は結界で防がれないのか…?』
よく見てみると、海龍の結界は鱗との間にわずかながら隙間があった。
そして”粉砕破掌打”の外部攻撃はその隙間から直撃していたのだ。
『あとはもう攻撃を避けて”粉砕破掌打”を行使し続ければ…勝てる!!』
俺は勝利を確信した。
しかし、そんなに現実は甘くなかった。
海龍が光属性魔法”パーフェクトヒール”で全回復したのだ。
「フハハハ…貴様の攻撃などいくらでも回復できるわ!!!!」
「…そうか。ならMP切れで回復できなくなるまで攻撃してやる!!」
古代魔法は威力が強力な分消費MPが多く、海龍のMPはもう200000を下回っていた。
一方俺のMPやTPはまだ300000以上残っており、まだまだ余裕がある。
『海龍のブレス1回で大体MPを10000消費しているからあと20回くらい凌げば俺の勝ちだ…!!』
それから俺はできるだけ攻撃を回避して”粉砕破掌打”を行使しまくった。
それを続けて気が付けば夜になっていた。
「貴様…なかなかやるな…」
「お前こそ…でもそろそろMPが尽きるんじゃないか?」
「ほざけ…貴様の方こそそろそろ限界であろう…?」
「俺はこの通りまだまだ戦える。」
「そうか…なら奥の手を見せてやろう!!!」
そういった瞬間”危険察知”の警鐘が今までにないほど激しく鳴った。
「なっ!?なんだ…!?」
「我は海の王ぞ?配下などいくらでもいるわ!!!!」
”気配察知”スキルに反応が止まらない。
1000、いや10000体を超える魔物がこっちに向かってきている。
「っ…!!…1対1じゃ勝てないと思ったのか??」
「ほざけ!!!お前など我だけで十分だ!!!」
海龍が単純で本当に良かった。
向かってきていた初見のSランク魔物なども住処へと戻っていき、再び1対1の状況になった。
「塵になれ!!!」
海龍は残っていたMPをすべて消費して今までで最も強力なブレスを放って来た。
”転移”をすれば避けるのは簡単だ。
しかし、俺は真っ向から受けて立った。
海龍を屈服させるには相手の渾身の一撃を余裕で耐えるのがいいと思ったのだ。
「おおぉぉぉぉ!!!!!!」
俺は目の前に結界を100枚、1000枚、2000枚とどんどん展開していった。
結界がブレスで砕ける速度と新たに展開する速度は互角のようだ。
「思ったよりMP消費が激しい…!!」
俺はこの攻撃を防ぎ切らずカウンターを食らわせる方法を考えた。
『…あるじゃないか!!!それもとっておきのやつが!!』
そう、それは昨日習得した黒魔法”浸食”だ。
この魔法は攻撃を侵食し、それだけではなく相手までもを蝕む。
俺は黒魔法”浸食”を行使した。
黒魔法は古代魔法と同じように強力な分MP消費が激しかった。
「足りてくれ…!!おおぉぉぉぉ!!!」
「貴様…この魔法は…」
”浸食”が海龍のブレスを蝕み、ついに海龍の体をも蝕んだ。
そしてそのまま海龍が倒れ、決着が着いた。
「我は…負けたのか…?」
「ああ。俺の…勝ちだ…!!」
「そうか…それはそうと先程の魔法、黒魔法”浸食”だな?」
「…知ってるのか?」
「我は今までに2度負けたことがある。海獣リヴァイアサンとタロウだ。
そしてその魔法は我がタロウに敗れたときに使っていたものだ。」
「そうだったのか。…タロウとはどういう奴だったんだ?」
「…あいつは仲間思いだった。困っている人は全員助け、悪人は全員殺すまさに勇者だったよ。
…まあ職業としては魔王だったがな!!」
「ん!?タロウさんは魔王だったのか!?」
「何を言う。黒魔法を使えるということは貴様も魔王なのだろう?」
「いや、俺は魔王ではない。ただタロウさんと同じ世界の住人だった。」
「そうか…その波動は異世界人のものだったか。」
「それで、俺はお前より強いと証明できたわけだが…一緒に来るか?」
「…いや、殺してくれ。貴様程の強者に殺されるなら満足だ。」
「そうか…分かった。」
海龍の周りにあった結界がすべて消滅していたので、俺は魔剣レーヴァテインで首を落とした。
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