第58話 討伐大会 波乱の3日目

間引き続けて何時間が経っただろうか。


一度休憩に砂浜に上がると、もう日が昇っていた。




『ん!?いつの間にこんな時間が経ってたのか…』




ほぼ1日中水竜を倒し続け、合計479体倒した。


それのおかげといってはなんだが”魔石吸収”でステータスは爆上がりし、”暴走”スキルはCに上がった。




『せっかくランク上がったから”暴走”のスキル使えないかな…』




このスキルはMPを消費して知性を下げ、攻撃力を上げる。


なのでそれに相反するスキルを習得すれば知性を下げることなく攻撃力を上げられるはずだ。




探していると、”聡明”というスキルを見つけた。


これはMPを消費することで知性を上げることができるらしい。




『これは色々な場面で役に立ちそうだな。』




そう思い、Sランクまで習得した。


試しに”暴走”と”聡明”を同時に行使してみた。




すると、”聡明”の方が勝ったようで知性は普段より少し高い状態で攻撃力が上がった。


1分間に消費するMPは100なのでMP切れは心配しなくてよさそうだ。




そんなことをしていると、”気配察知”に多くの反応があった。


それも街の方に。




「ダグラス君、待たせてごめんね!援軍を連れてきたよ!!!」




「バーバラさん…遅いですよ…」




「お待たせダグラス!!」




「ジャックさん…それに”疾風迅雷”の皆さんも…」




「ダグラス君、水竜は?」




「ここに向かってきた水竜は全て殲滅しました。ただ、水竜の数は減ってきているものの定期的に襲ってきます。」




「そうなのね…ありがとう。もう休んでいいわ。あとは任せて!」




「ありがとうございます。」




俺は”疲労軽減”スキルがあるからまだ全然活動できる。


しかし、これから対峙するであろう海龍に備えて万全を期すために休むことにした。




とりあえず海鮮亭に戻った。




「おうダグラス、朝帰りとはやるなぁ!」




「違いますよ店主!!指名依頼を受けてたんです!!」




「冗談だよ!ワッハッハ!!」




「心臓に悪いですよ…」




「すまんな!ギルマスから聞いてる。ゆっくり休んでくれ!!」




「ありがとうございます。」




ベッドに横になると、俺は泥のように眠った。


…しかし眠りは一瞬にして妨げられた。




突如として爆音が起こったのだ。




『な、なんだ…!?』




部屋の窓から見てみると、なんと巨大な門が破壊されていた。




『っ!?何があったんだ…!?みんなは無事なのか!?』




俺は急いで準備し、門に向かった。


着くと、そこは惨状だった。




「…っ!?」




たくさんの人が大けがをして倒れていた。




「ダグラスか…」




「ジャックさん!!いったい何があったんですか…!?」




「海龍が来たんだ…そして咆哮を放った瞬間吹っ飛ばされて気づいたらこの様だ…」




「左腕が…!!」




「死んでいないだけましだ…」




俺は急いで”エリアヒール”を行使した。




「なんだ…?俺の傷が…」




「私の傷も…」




「全員何とか無事ですか…」




「っ!?バーバラさん!!」




全身ボロボロで、とてもつらそうな顔をしている。




「ごめんなさいねダグラス君…私たちには負いきれなかったわ…」




「良いんです!それより海龍は…?これで終わりってことはないんでしょう…?」




「…ええ。”明日の正午、この街1番の強者を連れてこい。さもなくば破壊の限りを尽くす。”って…」




「…そうですか。ありがとうございます。」




死人が出ていないあたり、海龍は本当にただ強者を探しているだけなのだろう。




「それより早くみんなを回復しないと!!」




俺は怪我をしている人全員に”パーフェクトヒール”を行使した。




「っ!?腕が生えてきた…!!」




「私の右足も…」




「ありがとうダグラス君!それより今のはいったい…?」




「とある事情で隠してた力です。見殺しにはできないので…」




「そうか…ありがとう。」




それから俺は破壊された門を”リペア”で修復した。




「ありがとうダグラス君…」




「気にしないでください。俺のせいでもあるので…」




「休んだことを気にしているの?」




「…はい。俺はまだ活動できたのにバーバラさんの言葉に甘えて休んでしまったがためにこんな…」




「ダグラス、甘ったれるな!!」




「ジャックさん…」




「ダグラスがいたからといって何か状況は変わったのか?その隠してた力とやらで何とかできたのか?」




「分かりません…」




「…なら後悔ばっかりしていないで前を見ろ!今度は救えるように…考えるんだ!!」




「はい…!!」




俺は予言されていた英雄ではないだろう。


でも、少しでもそれに近づけるよう前に向かって努力しなければならない。




俺は気持ちを切り替え、少しでも海龍を倒すことができる可能性が増えるようバーバラさんたちとギルドで作戦会議をしていた。




「ダグラス君、君はどうするつもりなの?」




「…まず海龍を連れて遠くの海に”転移”します。そこで海龍と1対1で戦います。」




「無茶よ!!確かにダグラス君は強いけど…」




「大丈夫ですテレサさん。もし俺が負けても海龍は絶対にここへは戻ってこられないようにしますから。」




根拠は”黒魔法”という先程習得したスキルのうちの黒魔法S”ヘルゲート”という魔法だ。


これは術者が死ぬ際、対象を地獄に道連れにする魔法だ。




俺は死ぬ覚悟を決めた。

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