第281話 水入り

雨が降りはじめた。急ぐのに厄介だ。雨の中、運転をするのは嫌い。

雨は次第に雪に変わった。ますます厄介。と、思っているうちに猛吹雪になった。


もう無理。

わたしは目に入ったカフェに車を停め、店の扉を開けた。

窓から真っ白になっていく景色を眺める。急ぎの用には間に合わない。あきらめてココアを飲む。いつもはコーヒーだけれど、こういうときはココアがいい。


雪が降るなか運転するのは怖いが仕方がない。観念して店を出る。

と、外は晴れあがっていた。晴れているばかりでなく、あの猛吹雪にもかかわらず積雪もない。路面も濡れていないので雨が降った形跡すらない。はじめから降水がなかったかのよう。


スマホに着信があることに気がついた。急ぎの用が解決したことに対するお礼。どうして解決したんだか訳がわからない。


わたしはあきらめてココアを飲んでいただけなんだがなあ。


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