第275話 知らぬが仏

クッキーの入っている缶が日に日に大きくなっているような気がする。缶は大きくなるけど中身のクッキーは大きくならない。そうそう都合よく事態は進行しないね。


大きくなるにしてもいつかはそれも止まるだろうと高をくくっていた。無限に成長するものなんてあり得ない。


が、考えてみると缶が成長すること自体があり得ない。そのあり得ないことが起きているんだから、無限に成長する可能性だってある。現にクッキー缶はバランスボールくらいに成長している。


わたしは近くの川にクッキー缶を捨てた。

無責任。そう無責任。だけど怖かったんだもの。そんなの言い訳にならないのは分かっているけれど、そうだけど、怖かったんだもの。


その後クッキー缶がどうなったのかは知らない。あのまま成長していればニュースになるだろうけど、そんなニュースを聞かないところをみると成長は止まったんじゃないかしら。


あるいはニュースになるころには手遅れなのかもしれないけれど。


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