第159話 混線

そうそう、そうなのよ。


その人の言葉が足りない部分をわたしが的確に補うから相手は話しやすそうにしている。その的確さを、頭の回転が速いのね、と感心されるが実は違う。言葉を交わさずとも相手の思考が流れ込んでくるのだ。相手の思考そのものをなぞるんだから的確なのはあたりまえ。


この能力、便利そうでちっとも便利じゃない。だって自分では制御できないんだから。勝手に流れ込んでくるだけ。いつ発動するのかもわからない。

それにその思考が自分の思考なんだか相手の思考なんだか判らなくなるときもあって戸惑うこともしばしば。

思考だけでなく記憶や痛みも流れ込んでくるから、もう何が何やら。身に覚えのない記憶をいっぱい抱えることになっちゃった。


そのうち人格が崩壊しちゃうんじゃないかって心配してる。あるいはすべてを引き受けられたとしたら神様になっちゃうのかしらね(笑)


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