第42話 逃げる

みんな逃げまどっている。恐怖が渦巻いているのを感じる。けれど、わたしは静寂の中にいた。騒然とした空気の震えを感じるには感じるけど、どこか遠くで響いているよう。


早く、あなたも。

そう声をかけられ手を引っ張られて駆け出す。が、何から逃げているのだか判らない。判らないままともかく走る。走りつづけながらどこまで走ったら安全なのかと考える。そもそもここが危険だという実感もないからどこなら安全かというのもやはり実感はない。


判らないままここではないどこかへ、みんなといっしょに逃げる。


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