第28話 Z-V-Ⅱ
「あれ…ここは?」
目を覚ますとそこには見知った天井が写っていた。
ここは…
「お兄ちゃん!?」
ガバッ!
「おぉ!? 優香? なに、し――い、いでぇ!!」
すると妹の顔が現れたかと思えば、身体に何とも言えな痛みが走る。
そういえば、あの目玉野郎と戦ってからの記憶がすっぽりと抜け落ちている様な気がする。
え~っと…
「もう! 心配させないでよ!」
「え、え? ど、どういうことだ?」
―――――――――――――――――――――――――
それから何とか立ち上がる事の出来た俺は家族で食卓を囲み、晩御飯を食べる事に―――なのだが、優香の奴がさっきから滅茶苦茶俺を睨んで来る。
「な、なんだよ…」
「もう、それ位にしてあげなさい? 命に別状は無かったんだし? ね?」
「そうだぞ。 それに、詳しい話は創輔が起きてから聞くとか何とか言ってたじゃないか」
「む~…わかった。 食べながらでいいから聞いてくれる?」
「あ、あぁ…」
俺は妹の話を聞いた、妹曰く…俺はボロボロの状態で玄関の前に倒れていたらしい。
ダンジョン攻略の知らせを聞いてから、部屋を出ようとした頃…俺の姿を発見したのだとか。
食後―――
「ほんとうに!! なにも覚えてないの?」
「あ、あぁ…あのダンジョンを攻略して―――それから…Z?」
―――おかしい。 反応がない。
「おかしいな。 反応が無い」
「あぁ! ”ブイちゃん”ならここよ!」
「へ? ブイちゃん?」
と俺の反応を見て、何かを取り出す母さん――え~っとなんだこれ?
手の平の上には見慣れない”小さな二足歩行型のロボット?”の様な物がポツンと立っていた。
キュイーン…
『おはようございます。
ビシッと俺に敬礼してみせるそれは、10cm程しかないピンク色の可愛らしいツインテールの様なアンテナを頭部にぶら下げたロボットから発せられた声であった。
『失礼。 自己紹介がまだでございました。 わたくし、Z-V-Ⅱ《ゼット・ブイ・ツー》と申します。 気軽にブイちゃんとお呼び頂き、馬車馬の様にそれはもうビシビシと酷使していただければと思っております。 勿論! 権限はご家族様にもあります故、わたくしが! 迫りくる脅威を撃ち滅しましょう!!』
カチャッ…人形の両手から何か突起物が現れると赤いレーザーポインターが出現した。
『この照射用ビーム兵器で人間等、ビーム一発で黄泉の国直行でございます!! ガッハハハハハ…』
「ってまて!? ビーム!? そんなもん人に向けんな!!」
「ね~! ブイちゃんって可愛いでしょう?」
『お褒めに預かり光景の極み!! バシュ・バシュッ!』
「まぁ! 可愛い!」
「おい…なんだよ、こいつ」
「私が聞きたいよ…なんかお母さんが妙に気に入っちゃってさ? お兄ちゃんの隣で一緒倒れたから知ってるかもと思ったんだけど」
「知らん」
「「まじで?」」
俺の事場を聞き、再びそう聞き返す親父と思うと。
そんな顔を向けられても、知らない事については何も答えようがない。
俺だって知りたい位だ!!
暫くして、母さんとブイは共に何かを話がら一緒に風呂の方へ向かっていった。
「お母さんったらブイの事気にいっちゃって…毎日のように”一緒にお風呂”に入ってるんだよ」
「あぁ…だから、親父は」
一緒にテレビを見ながらも、俺と優香はそのまた隣にいる人物に目をやる。
「そう。 あれから一週間。 ずっとこんな感じなんだ、お父さんは」
「へ、へぇ~…」
ぐったりとした様子の親父は天井を眺めながら虚ろな目で何かをブツブツと呟いている。
「か、母さんがとられた……母さんが…俺だって一緒にお風呂に入った事ないのに…」
「なんか、あれだから…母さんと親父には明日話すか。 ちょっと優香時間あるか?」
「うん? うん、明日もお休みだから何もないけど?」
「よし」
という訳で、俺の部屋に優香を連れて来た俺は床に座り”一枚の下手くそなイラスト”を優香に見せる。
「お兄ちゃん…な、なにこれ?」
「みなまでいうな…これが俺の限界なんだ」
「え~っと。 大きな目玉に何か一杯の手足が生えた…モンスターと戦ってたてこと?」
流石は血のつながった妹と言うべきか、こんなイラストで伝わった事はほぼ奇跡と言っても過言ではないが話を進める。
「あぁ。 鳴き声はまるで人と獣の叫び声が混ざったみたいなものだった。 おまけにこの足の様に生えたそれは”人間”の腕そのものだった気がする」
「…なに、それ? お兄ちゃん、もしかしてそれが最深部のボスだったっていうの?」
「あぁ」
「けどこれ…明らかにモンスターのそれじゃないよ? まるで―――」
「あのダンジョンみたいか?」
「!?…それってどういう!?」
俺も実は一度だけ、あのチュートリアルのダンジョンでこんな見た目をした”ロボット”の様な存在を見た事があった。
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