第28話
ダンジョン。
それは異世界においてさまざまな神秘や謎や宝が埋もれている危険な領域として認知されている。
その様態は洞窟であったり人工的な建築物であったり、怪物の巣穴であったり、時には森や山道であったりと様々で、数多の魔物が徘徊しているだけでなく罠や何らかの施設・遺跡などがある。
ダンジョンにおいて、命の危険はかなり高い。
異世界で初心者がダンジョンに入ることはない。
それほどの危険なのだ。
僕も何度がダンジョンに潜ったが色々と面倒なところが多かったのを覚えている。
「なにこれ?」
「ダンジョンだよ」
「これが?なんかもっとこう」
「この底なしの穴に体を入れると強制的にダンジョンの中に転移させられるんだ」
もし異世界のおいて神隠し事件が起きたときなんかは新しいダンジョンができたと判断され、大規模な捜査が行われる。
「へぇー。怖いわね」
「まぁ怖いよ。ダンジョンわね。難易度は段違いだろうし」
だからと言って放置するわけにもいかないのだが。
僕はダンジョンの入口に手をかざす。
そして魔法を一つ唱える。
「『洪水』」
僕の手から濁流のように大量の水が吹き出る。
それらの水はすべてダンジョン内に呑まれていく。
「え?え?え?な、何をしているの?」
明日香と桜が困惑したような声を上げる。
「一番手っ取り早く確実な対処法。水攻めだよ」
異世界でもたまに行われていた方法だ。
出来たばかりで階層も少なく、ダンジョン内に人が確認されたダンジョンに熟練の魔術師が大量の水を打ち込む。
最も効果的な方法だろう。魔物だって空気を吸えなければ死ぬ。
しかし、ダンジョン内を一杯にできるだけ水を出せる魔術師がそもそも少なく、それができる熟練の魔術師はわざわざそんなことに時間を割かない。
自分の魔法の研究に忙しいからだ。
なので、この方法が異世界で行われるのは本当に極稀だ。
まぁ僕ほどの人間にも成ると簡単にできちゃうんだけどね。
ドヤァ!
そのまま注ぎ込み続けること約一時間。
ようやく一杯一杯することが出来た。
ダンジョンに入りきなかった水が入り口から少し溢れている。
じゃっぶっじゃっぶだぜぃ!
そしてそのまま待つこと30分。
念には念を入れて待ちに待ちまくったさすがに窒息したやろ。
魔法を解除し、全ての水をなくす。
これでダンジョン内の魔物のほとんどを殲滅できたはずだ。
「さて、入ろうか」
「えぇー。こんなのありなの?」
「鬼ね。悪魔ね……」
僕は後ろで言わなくてもいいものを呟く明日香と桜を無視してダンジョン内に入った。
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