落×雷

落×雷⑩

蓮視点

入れ替わっていたのがおそらく真実であると思っていた蓮からしてみれば、女子二人の告白は寝耳に水といっても過言ではなかった。　もちろん何度も嘘なのではないかと疑ってはいた。

疑ってはいたが、最終的には入れ替わっているとして進めようと決めていたのだ。

―――・・・嘘？

―――入れ替わっていたのが嘘って本当に言ってる？

思考が追い付かず蓮は言葉を失った。　二人の言葉が真実であるなら、この一週間一緒にいたのが涼風だったということになるのだから。

「と、ということは何？　涼風ちゃんは涼風ちゃんのままなのか？」

頭が混乱している蓮の代わりに早々に立ち直った嵐が言葉を交わしている。　当然のようにその目線は涼風に向いていた。

「そういうこと。　ちょっと事情があって、心泉ちゃんには入れ替わったフリをしてもらっていたの」

「そうなのか・・・！」

嵐は入れ替わっていないと聞き安心したのか力が抜けていた。

「これはウチの一方的な頼みだから心泉ちゃんは何も悪くないからね？　寧ろ半ば無理矢理に近かったお願いだから、責めるならウチを責めてちょうだい！」

「でも涼風ちゃんだけの責任では・・・」

「心泉ちゃんは黙って！　本当にウチの責任なんだから！！」

心泉も自分が頼みを引き受けた責任を感じているのだろう。

―――確かに涼風の性格が前と同様のキツめなものに戻っている・・・。

―――でも心泉さんに対してだけは優しいな。

入れ替わっていると思っている間は心泉を演じていたためか性格がキツめではなかった。　欠片程にも嫌悪感を感じるものではなかった。　それはつまり涼風は変われるということになるのだろうか。

―――いや、騙されるなよ俺。

―――涼風は涼風なんだ。

―――池に落とされ、犬に追いかけられさせ、宿題を入れ替えられと嫌がらせをし続けてきたアイツなんだから。

―――さっきまでの涼風と今の涼風は全くの別人だ。

―――だからこれ以上は深く考えなく・・・。

しかし入れ替わっていた時に涼風の笑顔に惹かれたのもまた事実だった。　そして、この一週間心から楽しいと思えていた。

―――あれ？

―――俺の涼風の見る目が変わって、いる・・・？

そう考えた途端、額に汗が滲んだ。

―――おいおい、俺マジか！？

そして、もう一つ忘れている重大なことに気付きそうになったところで嵐も思い付くよう言った。

「あれ？　待てよ・・・？」

嵐も同様困惑しているのか頭をわしゃわしゃと掻き始める。

「蓮が告白して成功して付き合うことになった。　それが心泉ちゃんだと思っていたら、本当はそのままの涼風ちゃんだったっていうことになるよな・・・」

「・・・」

涼風がジッと嵐を見ている。

「え。　でも入れ替わっていた演技だったから、やっぱり涼風ちゃんは蓮のことが好きで涼風ちゃんの代わりに告白を受けてOKしたということは、心泉ちゃんが蓮のことを」

「・・・そうじゃないよ」

蓮はまだ話せる程に回復していない。　守っていた沈黙を破ったのは心泉だった。

「告白を代わりに受けてもらうようなことなんてしないよ。　涼風ちゃんは蓮くんのことが好きだったの」

「「はいッ！？」」

その言葉に蓮と嵐の顔色が変わる。

「好きだから意地悪をするのを止めれなかったんだって。　だけど成長して学校が離れてようやく自分の間違いに気付いた。　それで私が相談を受けたの。　関係をリセットするためにって」

ベッドの上にいる心泉は視線をそらした。

「落雷は本当に偶然だったけど、話に信憑性を持たせるのに一役買ったんだと思う。　・・・これが真相だよ」

呆気に取られていると、ジッと心泉の言葉に耳を傾けていた涼風が蓮に向き直った。

―――・・・俺は今から何を言われるんだ？

妙にドキドキしながら次の言葉を待つ。

「・・・蓮。　ウチは」

「ちょっと待ったー！！」

「え？」

しかしそこに身体を割り込ませたのは嵐だった。