この世界を彩るものは
茶碗虫
プロローグ
なにか、忘れ物をした気がする。具体的になにを忘れたのかはわからないが、漠然とした不安だけが頭の中をちらついて、なんだか落ち着かない。小さいころに買ってもらったおもちゃの話なのか、よく使っているビニール傘の話なのか、あるいはもっと抽象的な、古い思い出の話なのか。
そんな不安を抱えていても、地球は答えを見つけ出すための猶予なんかくれはしない。落ち着かない僕も乗せて、ただひたすらに回る。
きっといつか答えが出る、そうやって後回しにしているうちに、僕は僕のまま大人になった。
もはや僕は、一生大人になれないのかもしれない。
人間みんな、大人になんてなれやしないのかもしれない。
気が付いたら、そんなことを考えるのも面倒くさくなっていた。
ボーっと聞き逃していた来賓の言葉もきっと
この面倒くさい入学式が終わったら、なにかしよう。
それを考えるのも、面倒くさいけど。
僕は背もたれに大げさにもたれかかり、長い話を続ける壇上の来賓を、目を細めて睨むように見つめた。
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