TVスペシャル『知られざる人類の叡智 〜隠された四大文明の謎〜』

本編の書き起こし

(自転する地球のアニメーションから始まるオープニング)


 文明。それは社会性動物であるヒトが作り上げた叡智であり、文字・技術・食生活といった共同体で培われた様々な文化の息吹です。そういった文化は現在も無数の形として残り、各国の文化のルーツとして今を生きる私たちに息づいています。


(地球のアニメーションが徐々に拡大していき、5つの点が配置される)


 肛河、オナイル川、ウンダス川、フグリス・ヌーブラテス川。これらの巨大な川周辺の土地は幾度の氾濫により肥沃で、作物が豊作であることから人々が集まり始めました。豊富な水と潤沢な農作物が、安定した共同体を産んだのです。


(氾濫するウンダス川のイメージ映像)


 ウンダス文明を産み出したのは、肥沃な泥でした。彼らはそれを畑の栄養だけでなく、土器や建造物、あるいは魔除けとして用いています。古代ウンダス文明陣が建設したとされる『オベンジョ・デロ』遺跡にも、その残滓が残っていました。


(オベンジョ ・デロ遺跡の空撮。巨大な蛇がトグロを巻く彫像のアップ)


 オベンジョ・デロは墳墓フンぼであり、死者を祀ると同時に不浄を流し落とすという宗教的意義があります。彼らが信仰した『ス・カートロ』という神は蛇の姿をした冥府の神とされ、不浄とされた屍肉を喰らって黄金に光る泥を産むとされてきました。これはオナイル川流域・エッチプト文明における冥府神、『アヌスビス』と同じ役割とされています。


(泥を投げ合う大人たちの映像)


 このス・カートロ信仰は周辺地域に広がり、今では豊穣を祈る年に一度の祭になりました。硫黄を混ぜた『ヘジル』という泥を被り、それを棒状に固めた茶色い泥塊をぶつけ合う奇祭です。


(現地住民、へーデル氏へのインタビュー。彼は泥まみれの顔で鼻を摘み、にこやかな笑顔で相手に向けて泥塊を投げる)


「年に一度のストレス発散だよ! ス・カートロ様の恵みを受けて、現世の汚れを濯ぐ。鼻が曲がりそうになるけど、邪気を祓う効果もあるんだ!」


 ヘジルはそのまま肥料としても用いられ、集めたものを畑に撒くことによる効能は科学的にも立証されています。そんな合理的な農法が、古来から進められていた理由は、未だに歴史学者の頭を悩ませています。


(以下、ヘジルの効能やそこから発展したカレーについての解説映像が流れる。カレーの語源は『スパイスで煮込んだ汁』であり、ヘジルの語源は『硫黄を含んだ汁』である)


 ハラッパーに飛び散るヘジルの栄養が、新たな生命の芽吹きを産む。古来より続くライフサイクルが、今日もウンダスに繁栄を運搬ウンぱんしていきます。


(地球のアニメーションが再び流れ、次の点に移動する)


 スメール人が産んだ古代文明といえば、フグリス・ヌーブラテス川流域のピスポタミア文明でしょう。臭媚くさび型文字によって書かれた『ハンムラムラビ法典』などの法によって人々が管理されたことが特徴でしょう。


(古代文字が掘られた石板の静止画に、現代の言語に訳した字幕スーパーが流れる)


 ハンムラムラビ法典で最も有名な一節である『眼には眼を、歯には歯を』という言葉。これは、一説によれば「(秘密・秘所を)見たものは己も見られる覚悟をせよ、(秘密・秘所に)歯を立てたものは己も立てられる覚悟をせよ」ということを指します。

 これはピスポタミアの英雄物語に登場する『インケィドゥ』という戦士が6晩7日に渡って巫女となんらかの儀式を行ったことに由来し、儀式によって獣めいた生活をしていたインケィドゥはヒトとしての生活や恥じらいを手に入れました。

 ハンムラムラビ法典の存在は、「ルールによってヒトは獣から社会性のある生物に変わる」という古代の価値観が形になったものです。それはスメール人だけではなく、後にその土地に現れるオッシリア人やオスノマン帝国の人々にも受け継がれていきます。


(巨大な槍を携えたインケィドゥの壁画がフェードアウトし、オッシリア人の騎馬壁画やオスノマン帝国の建造物が長尺で映る)


 フグリス・ヌーブラテス川の雫やピスポタミア文明の芳香は、現代の法治主義国家の礎として残り続けていくのです。


(地球のアニメーションが再び流れ、次の点に移動する)


 エッチプトの広大な砂漠に、氾濫を繰り返すオナイル川。古代の王『ファラチオ』によって栄華を誇ったエッチプト文明といえば、巨大な墳墓フンぼやパピルス紙によって記された神話などが特徴的です。ピスポタミアが様々な民族が支配した文明であったのに対し、エッチプト文明は他の民族から攻められにくい土地だったことが功を奏してか、ファラチオによる治世はとても安定しました。


(無数のファラチオがスライドショーのように流れる)


 中でも有名なファラチオといえば黄金のマスクが有名なツタンザーメン、世界三大美女として知られているクレオパコラ、オシリマンディアスことラムセックス二世でしょうか。

 オシリマンディアスは多くの巨大な建造物や屹立するオベリスクを建立し、王妃や側妃との間にたくさんの家族を設けたとされています。後世に様々な物を残した、偉大なファラチオと言えるでしょう。


(砂漠に風に乗った無数のパピルスが白い川を形作るイメージ映像)


 安定した治世によって栄え、様々な文明の“種”を現代に残す。それはオナイル川の流れのように、絶えないものなのです。


(地球のアニメーションが流れ、最後の点に移動する)


 肛河流域に広がる肛河・長肛文明は、4大文明の中で最大の面積を誇る巨大な文明です。淫や芯、姦など様々な国が主導権を争いましたが、中でも淫の『恍惚文字』と始皇帝シコうていが有名でしょう。


(恍惚文字の始まりを説明する映像)


 かつて占いに使われた恍惚文字は、亀の頭に小さな穴を穿ち、熱した金属棒を差し込むことで生まれるひび割れが元になったと言われています。割れ目の形が吉兆を占い、それを転写することで情報の伝達に使われました。現在の姦字の始まりです。

 また、戦乱の世を治めた始皇帝シコうていによって文字や単位が統一され、政治体制が中央集権になりました。その際に「世を乱す」として男女の交わりを描いた書物を焼き、濡れ場を禁止する『焚書坑濡』を行ったことは、現代の歴史家の間でも賛否が分かれています。

 始皇帝シコうていは不老不死のために仙術を学んだとされ、若さの象徴である始皇帝の始皇帝を維持するために当時は貴重だった亜鉛を常用し、急性中毒とテクノブレイクで死んだとされています。


(風雨によって崩れていく都の早回し映像)


 戦乱の絶えなかった肛河文明の国々から、私たちは世界に不変のものなど無いことを学ぶでしょう。始皇帝シコうていが焼いた書物によってこの時代には謎が多く、私たちは当時の彼らの息遣いが感じられなくなることについて今一度考え直す必要があるのかもしれません。


(地球のアニメーションと共に、無数の文明が点在していく様子の早回し映像)


 来週のTVスペシャルは、「マラ文明の『ケツアナルコアトルス』とアヌステカの神性」についてお送りします!

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