九十九神
いつも食事を
時おり若い男の声も聞こえ、それが怒鳴り声なこともありわかりやすく弥生が怯える。
大丈夫だと愛枝花が声をかけ、疾風に後ろに庇わせ
「
「
再会一番にこのセリフである。
そのセリフに愛枝花は元より、
糸織の背後から
「美針、いい加減に落ちつかないか。愛枝花様も困って……引いておられるよ、なんだこいつって」
「美針かっこわるい!これで私よりもかなり歳上なんて信じられなーい」
「うるせー!!一番大変な時に側にいられなかったんだぞ!?俺たちは、愛枝花様に仕えてこそ生きる意味があるのに…!!」
先ほどから情けない姿で叫んでばかりいるこの美青年は、美針と言う。
齢1220年の時を経た
その昔、愛枝花への
しなやかな
少し伸び気味の
一見して、
だが
誰も美針の外見に関しては女々しいとは言わなかった。
仕草や立ち
そんな美針は、先ほどから騒いでいる通り愛枝花至上主義である。
愛枝花の為に生き、愛枝花の命を遂行し、愛枝花の為に死ぬ定めと
愛枝花が関係していない
「糸織さんが
「いくら謝罪しても赦されることじゃない」
「それだよ。あの方はとても優しいから、謝罪は聞いてくださるし受け入れてくださる。もちろん、それで我々が愛枝花様を
「そんなことをしようものなら誰であろうと殺してやる」
「…私たちは、
「俺たちは罪を犯したのに罰を求めてはいけないというのか!?」
「こちらから求めてはいけない。決めるのは全て雪津梛愛枝花乃比女様だ、私たち一同が決めることじゃない」
こんこんと美針を
優しげな
よく美針をからかっては、面白おかしく笑っている男だった。
だが今回ばかりは、真面目な顔でせっぱ
愛枝花が死ねと言ったら、本当に死んでしまいかねない
年期の入ったそろばんの色と同じ、落ちついた色合いの茶色の髪を耳にかけながら。
珠算は深いため息をこぼした。
「美針はすぐに周りが見えなくなるんだから」
「うるさい!!」
「
怒鳴られて泣きそうになっているのは、齢1106年を経た金の糸で縫われた花の
見た目は十代前半のあどけない少女の姿をしていて、その姿につられるようにして話し方も考え方も少々幼い。
金花の豊かな金の髪は、室内でもまるで陽の光を浴びているかのように眩く美しい。
肌も
だが今は美針の荒い言葉のせいで顔を真っ赤にしながら、涙をこぼさないよう必死になって耐えていた。
「珠算の言ってることは全部正しいんだから!」
「正しいことばかりがまかり通る訳じゃない!!」
「残念ながら~、今回はまかり通っちゃうのよね~」
「糸織姉様!」
障子はとっくに開けていたというのに、声をかけたことでようやく存在に気づいたようだ。
ニコニコ笑顔の糸織を苦々しい顔で美針が見ていると、だんだんと青ざめていく。
後ろにいる立っていた存在に気づいたからだ。
「……相変わらず、
愛枝花がその言葉を言い終えるのと、美針が畳に頭を思いきり叩きつけたのはほぼ同時だった。
「愛枝花様っ…!!」
「畳を傷つけるな、お前の石頭では直すのではなく新しい物に変えなくてはならなくなる」
「申し訳ありません!!」
「次からは気をつけろ」
「畳のことではありません!!」
美針は
糸織も美針の隣に座り、同じく頭を下げる。
その後ろには珠算と金花も並び、4人は同じくして愛枝花に頭を下げた。
「そのようなお姿になられてしまうほどご不自由をかけてしまったこと、
「糸織にも申したが、これは致し方ないこと。なるべくしてなってしまった結果だ、今さらお前たちを
「ですがっ…」
「珠算も言っていただろう?お前が罰を求める立場ではなく、私がお前たちに罰を与えるのだ。謝罪は聞いた、そして受け入れよう。罰が欲しいというのなら、罰が無いことが罰だと思え。今の私はお前たちに何かを与えてやれるほど優しくはないのでな」
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