第7話 選択の儀


(中は一体どうなってるんだ?)


 慎也は首を捻った。あの高橋舞衣の悲鳴が、何度も聞こえてくるのだ。


 ……

 嫌なのに無理やり犯されちゃってるんだろうな。かわいそうに。

 どうしよう。俺はどうすればいいんだ。嫌がる彼女を無理やり犯すなんて、出来ない。

 でも、しなければ待っているのは死。生きるためにはするしかない…。

 い、いや、でも…。

 やっぱり、嫌がる女性を無理にだなんて、出来ない!

 お願いして拒否されたら…。

 あきらめて…、龍に喰われよう…。

 ……


 二番目の男、石井が部屋に入って行って…。


 祥子は、一番目の田上の時もそうであったが、交合の儀が始まると、すぐに別のところへ行ってしまう。

 そして、一〇分前になると戻ってきて鈴を鳴らす。

 またすぐ出て行き、五分前になると戻ってきて鈴を二回鳴らし、それからは時間まで扉の前で待っている。

 なんだか不機嫌そうな顔をしていた。


 石井の終了時間。

 祥子は勢いよく戸を開けた。

 続いてすぐに、中の男を念力で外に放り出す。


 男は裸だ。

 投げ出されて仰向あおむけに倒れた男の上に、着物がバサッと落ちる。


 が、慎也はその男を見た瞬間に、ギョッとした。


(えっ、なんだ、血まみれ? どうなってるんだ。それに、この男。ほうけてる!)


「こりゃ、三番目、急げ!」


 祥子に怒鳴られて、慎也はあわてて中に走りこんだ。


(うっ、何だ、この臭い。 ゲロ臭いし、生臭い?血の臭い?)


 ベッドを見ると、全裸で股を大きく広げ、血まみれになっている高橋舞衣。

 顔は向こうに向け、嘔吐おうとしている。


 よく見ると、股の部分から赤紫色の管状のものが出ていて、体を痙攣けいれんさせている。


(……え? …腸? た、大変だ、このままでは死んじゃう!)


 慎也は駆け付けて、舞衣の股間から飛び出てしまっているモノを、急いで腹へ押し戻した。

 彼女の大事なところは、裂けてグチャグチャになってしまっている。


ひどい。何をどうすれば、こんなことになるんだ!)


 舞衣の股間に手を当て、慎也は、治れと強く念じた。祥子に引き出してもらった「治癒能力」だ。

 …傷がゆっくりふさがってゆく。


 自分の腕を自分で治療し、要領は分かっている。しかし、こんなひどい傷、すぐには完治しない。

 念を込め続け、少しすると舞衣から反応があった。つむっていた目をゆっくり開けたのだ。


「あうっ、あ、あれ…。温かい。あ、あなたは昨日の人。治してくれてるの?

もう、あなたの時間になってたのね。たいへん、早くしなきゃ」


 舞衣は起き上がろうとする。が、慎也はそれを、押し留めた。


「何言ってるの。無理でしょ。こんなひどい傷で!」


「そっちこそ! やらなきゃ龍に食べられちゃうのよ。時間は?」


 チリーンと鈴の音。あと一〇分だ。


「大変、早く!」


「だめだよ。まだ完全にふさがってないんだから!

初めから、拒否されたらしないつもりだったんだ。

だから…。

もう、いいよ……」


「そ、そんな……」


 自分を酷い目に合わせた一番目か二番目が選ばれ、今、必死になって自分を治療してくれている、目の前の男性が龍に喰われてしまう…。

 舞衣は、その悲惨な状況を想像した。


「……そんなの、絶対ダメ~!!」


 舞衣は涙目になりながら、股間に当てられている慎也の手をガッとつかみ、自分の上半身へ引き寄せた。


 そして、いきなりキス。舌をこじ入れ、からませる。


 慎也の手を自分の豊かな胸の膨らみに当てさせ、ませる。


(た、高橋さんの舌が…。む、胸、柔らかい…)


 慎也は呆然としてされるがまま…。が、股間のモノは、素早く反応し、一気に大きく硬くなった。


「早く、入れて! ここがダメなら、お尻で!」


(ええ~っ! で、でもそれなら……。本人も良いって言ってるし……)


 舞衣はサッと慎也の着物を脱がせ、自分は仰向あおむけ状態になって、腰の下に枕を入れた。


「早く!! 時間が無い! あ、で、でも私こんなの初めてだから、その、優しく…。だけど、急いで!」


「う、うん、分かった」


 急かされ、でも優しくって、どうすれば良いんだか実際よく分からないが、とにかく、そう返事はした。舞衣も初めてと言うが、慎也も初めてだ。いや、慎也はお尻どころか、普通の交わりさえも…。


 舞衣に指示されたところに、慎也は自分の、はち切れそうになっているモノを当て…。


「いくよ。力抜いてね」


「はい、お願いします」


 …………。


 舞衣は顔をしかめている。


「大丈夫?」


「う、何か変な感じですう…」


 …………。


 チリーンチリーン。鈴の音が二回。あと五分だ。


 舞衣はそれを聞き、慌てて両手を慎也の背に回し、しがみつき、唇を合わせてくる。

 スーパーアイドルにそんなことされれば…。


 慎也は、即、果てた。

 舞衣は唇を離し、真っ直ぐ慎也を見た。整った綺麗な顔で…。


「出た?」


「うん」


 慎也は頷《うなず》いた。


「よかった。間に合ったね」


「う、う~ん。これが認められるか、どうかが問題だけど…」


 慎也は、舞衣との繋がりを解く。

 舞衣はベッドから降り、お尻を押さえた。


「痛い?」


「えっ、いや、痛く無いんだけど、違和感が……」


 恥ずかしそうにする。


「そうだ、傷は?」


「う、うん、こっちは、ちょっと痛いけど、たぶん大丈夫。ありがとう」


 スーッと部屋の扉が開いた。と同時に


「う、うあ~!」


 慎也の体が浮かび、外へ投げ出された。


 尻餅をついた慎也に、祥子がニヤッと怪しい笑みを浮かべた。


「さてさて、どういう判定が出るかのう?」

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