第42話 あやしい仕事

 トニアを訪ねた。


「あっ、師匠」


 応対に出たトニアには魔傷があった。

 何してるんだよ、トニア。


「なんか人に言えない事をしているだろう」

「自主練の事ですか」

「いや、禁断の何かだ」


「知りませんよ」


 こいつ、とぼけているな。


「言わないと破門だ」

「言います。魔法使いのランクが一時的に上がるポーションを飲みました」

「なるほど、劣化EXP・ポーションという訳か。何で黙ってた」


「みんながこれを使い始めたら、私の優位がなくなっちゃうじゃないですか」

「それで黙ってたと。そのポーションは危険だぞ。使い続けると暴れ出して記憶がなくなる」


「ほんとうですか。もう使いません」

「ちなみになんて商品だ」

「ランクブレイクです」


「売人はどんな奴だ」

「毎回人が違うので、特徴を言っても無駄だと思います。そういえば」

「そういえば何だ?」


「ランクブレイクを買う金がなかったら、仕事を紹介してやると言ってました」


 仕事か。

 怪しい仕事だろうな。

 行ってみるか。


「いっとくが成績が伸びないのは自主練のやりすぎじゃないのか」

「えへへ」

「良い事を教えてやる。そよ風の舌をオナニーに使っているよな。舌が股間に触ったら、舌と股間で魔力を循環させろ」

「それは難しいですね。気持ち良くなると集中が乱れがちになります」

「とにかく根性だ」

「やってみます」


 売人との合言葉などを聞き、トニアの魔傷を治してやり、俺はその場を後にした。


「モーラ、ランクブレイクという新しい麻薬が出て来た。国に警告してくれるか」

「了解ですわ」


 今回は前回より根深いな。

 魔法使いのランクは誰だって上げたい。


「交合は真理を深める」


 俺は教えられた場所に立っていた男に合言葉を言った。

 こいつらも色魔教団の手下だろう。

 合言葉がもろだもんな。

 布教の意味もあるのかもな。


「ランクブレイクなら銀貨1枚だ」

「金がない。仕事を斡旋してくれると聞いた」

「余白はあるか」


「ないな」

「じゃ駄目だ。調合を覚えているって言うんなら別だが」

「覚えているぞ」

「ほう、手間が省けたな。調合の腕はどうだ」

「そこそこだと思っている」

「よし、ついて来い」


 俺は目隠しされて、どこかに馬車で運ばれた。

 そして転移された。

 目隠しを取るとそこは工場だった。

 ここで麻薬を製造しているのか。


 製造ラインみたいな物は良いんだが、至る所で男と女がセックスしていた。


「驚いたろ。ランクを上げるのと魔力を溜めるためにやってるんだ」

「男が辛そうだが」

「精を放てないように、あれを縛られているからな。でもみんな楽しんでる」


 色魔教団恐るべし。

 工員を確保して信者も確保か。


 秘孔魔法・金縛り拳を教団の人間と思われる奴の心臓に打ち込んでやった。

 教団の人間は全裸で頭に覆面を被っているから分かりやすい。

 教団の人間がばたばたと倒れるが、教団の人間は原因が分からない。


「敵襲」


 いや遅いって。

 全員、心臓麻痺で死んだ。


 セックスしてた男達はセックスを止めた。

 うおっ、どうするつもりだ。

 まさか縛ってあるそれを切るつもりじゃ。


 そんな物見たくない。

 俺は背を向けて工場から出ようとした。


 『うっ』や『くっ』や『はぁ』とか言う声が聞こえて、栗の花の匂いが立ち込めた。

 くそっ、嫌な物を想像しちまった。

 俺は何があっても振り向かん。


 工場を出て場所を聞くとロナル領の町だった。


 モーラに連絡を取って、後始末を寄越してもらう事に。

 これで一つ拠点が潰せたな。

 こんな拠点がいくつもあるに違いない。


 学園に帰るとトニアが待っていた。


「師匠、師匠はやっぱり偉大です。魔力の循環を試しました。効果は抜群です」

「そうだろ」

「魔法の威力が上がりました。模擬戦の成績も上がってみんな喜んでます」


「女同士で股間を合わせ、循環するといいぞ」

「こんどやってみます」


「その場面を見たいな」

「駄目ですよ。百合の花園は男子禁制です。いくら師匠でも無理な物は無理です」

「ちぇ、そこまで甘くないか」


 百合の花園に侵入したいなぁ。

 女同士のくんずほぐれつ見たい。

 おおっ、アイナとモーラにやって貰えばいいのか。

 うん、それが良い。

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