第40話 あっはんうっふん声魔法

 振動刃魔法で何かできないか。

 物には固有振動数という物があって、その振動の音を当てると破壊できたりするのは知っている。

 ガラスなんかは軽々と破壊できるのはテレビで見た。

 だが、人体なんかは破壊できないだろう。


 それにこれは重要だが、エロくない。

 エロいといえば太鼓だな。

 祭りで太鼓を鳴らすと体に響く。

 切れ目なく複数の太鼓で鳴らすとビンビンくる。

 内臓をかき混ぜられる気分になる。

 子宮に響くという人もいるぐらいだ。

 それがあまり不快ではない。


 エロくはないが、高揚感はある。

 はっちゃけた気分になれるというものだ。


 やってみるか。

 太鼓は簡単に手に入った。

 振動刃魔法で太鼓から音をだす。


 ブーンと鳴った。

 これで高揚させるメロディを奏でるのは骨だな。

 でもエロには妥協しない。


 俺は試行錯誤した。

 色々な音階を出す事に成功。

 扉がノックされる。


 魔力感知で誰が来たかは分かっている。

 モーラだ。


「何か用か」

「少しうるさいですわ。静かにしてくださらない」

「ごめん悪かった。遮音魔法を使ってくれよ。マナ・ポーションならあげるから」

「わたくしはそれで良いですが。近所迷惑ですわよ」


 仕方ない修練場でやろう。

 場所を移して太鼓を鳴らす。

 秘孔魔法と組み合わせると音の高低は簡単に出来る様になった。

 人の声って出せないかな。


 やってみるか。


「あー」


 出来た、太鼓から人の声らしき物が出た。

 思考加速発動。


「あんっ」


 喘ぎ声が太鼓から出た。

 これはエロいな。

 これを極めよう。


「あん、あん、あん、あー、あんっ」


 修練している他の生徒が前かがみになる。

 声だけでもそそるな。


「ちょっと、へんな声出さないで」


 女生徒が文句を言いに来た。


「太鼓から人の声が出るんだぜ。魔道具にしたら大金持ちなんだ。なぜこの発明のすばらしさが分からない」

「あの時の声を出すなって言ってるのよ」

「あの時ってどの時?」


「このエロ猿がぁ。風の槌エアハンマー


 秘孔魔法・霧散拳で迎撃。


「いきなり、手を出すなよ。分かったよ別の場所でやる」


 仕方ない連れ込み宿でやるか。

 学園を出て連れ込み宿に入った。

 太鼓を連れ込んだ客は初めてだったようで、かなりジロジロと見られた。


 さて、やるか。


「あんっ、やんっ、はうん、あー、あん」


 壁の向こうからも似たような声が聞こえてくる。

 似せるサンプルがあると作業がはかどる。


 俺は夜、連れ込み宿に通って修練した。


「毎晩、外出してるようだけど、ちゃんと寝てる?」


 アイナに学園の食堂で捕まった。


「寝てるさ。心配してくれてありがとう。研究が完成しそうなんだ。特別に見せてあげるよ」

「どんなのかは分かるわ。どうせエッチな研究なんでしょ」

「これは金になるんだ」

「じゃ見せて」


 放課後、マッサージ屋に太鼓を持ち込んだ。


「行くよ。よく見てね」

「あんっ、そこはらめぇ。ひうっ。はぁん」


「ちょっとこれは私の声じゃない」

「うん、声を似せるのに苦労したよ」


「私、こんな事を言わないわ」

「言ってるよ」


「何ですって。氷の槌アイスハンマー


 ふっ、思考加速してれば避けるのは容易い。

 待てよ。

 固有振動ってこういう時に使えば。


 避けながら太鼓から出る周波数を調整していく。

 氷の槌アイスハンマーが小刻みに揺れたと思ったら砕け散った。

 ふっ、もうアイスハンマーは怖くない。


「やったわね。その太鼓が元凶なんでしょ。氷の槍アイスジャベリン


 氷の槍が太鼓に向かって行き粉々に砕けた。


「無駄、無駄」


 アイナは突然、制服のスカートめくった。

 うほう、生足にパンチラ。


氷の槍アイスジャベリン


 太鼓は魔法で破壊された。


「不味い」

氷の槌アイスハンマー


 結局ボコボコにされた。

 声ぐらい良いじゃないか。

 空気嫁とやる時は声をつけようと思う。

 声付きはエロいからな。


 俺は生産科のクラスに太鼓を持って行った。


「たのもう」

「生産科に何の用かな?」


「振動刃魔法で声を出す事に成功した」

「やってみて」


 あーっと太鼓が声を出した。


「なるほどね。太鼓から声が出てる。これで歌う魔道具が作りたいって言うんだろ」

「その通り」

「斬新な発想だね。これを僕の卒業制作にしたいんだけど良いかな」

「完成するなら、いいよ」


「必ず完成させるよ」


 完成したら喫茶店に設置しよう。

 それと。


「エッチな嬌声を奏でるのも作ってくれ」

「それは娼館からの依頼かい」

「いや、自分で使う」


「最高の奴を仕上げるよ。こういう馬鹿らしいのも嫌いじゃない」


 ムードを盛り上げる魔道具を制作依頼した。

 出来上がりが楽しみだ。

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