第25話 お湯にぷっかり

 今日は学園の演習旅行の日。

 田舎に行ってモンスターを狩って帰って来る。

 そういう行事だ。


「はいはーい、みなさんはぐれないように。遅い人は置いてっちゃいまーす」


 リリー先生がいつになくハイテンションだ。

 良く見ると震えている。

 そんなに恐ろしい行事なんだろうか。


「ぐぎゃ」


 ゴブリンの一団が出て来た。


「俺に任せろ。風の刃エアカッター


 クラスメイトの一人が魔法を放つ。

 俺の魔力感知には4メートルを超す風の魔法がはっきりと捉えられていた。

 一撃でゴブリン達は死んだ。


 うん、良きかな、良きかな。

 ゴブリン殺すべし。

 同族嫌悪みたいだが、俺は分別がついたエロ。

 あっちは見境ないエロ。

 同じにしてもらっては困る。


「魔石を採りまーす。グロい。やっぱり駄目。誰かやっちゃって下さい。お願いします」


 俺はナイフでゴブリンを切り裂き。

 魔石を取り出した。


「リリー先生、終わりました」

「ひっ」

「ああ、グロいの駄目なんですか。点火イグニッション


 秘孔魔法・倍増拳。

 ゴブリンの死骸は消し炭になった。


 ぽつりと雨が落ちてきた。

 急がないとずぶぬれになるな。

 そう言えば、この辺りだったな。

 ルドウィン家の別荘は。


「先生、俺の別荘がこの近くにあります。そこで雨宿りしましょう」

「ゴキブリローパーがホラ吹いているぜ。古本屋のせがれがどうやったら別荘を持てるんだ」


「信じないなら良い。ずぶぬれになるんだな。先生、行きましょう」

「みなさん、ヒロ君の好意に甘えます」


 別荘に着く頃には雨はかなり大降りになった。

 かなり濡れてしまったな。

 体を温めないと。


「嘘だろ。本当にあったとは」

「いや、まだ分からないぜ。きっと鍵を無くしたとか言って軒先で雨宿りさ」


 俺はこの旅行に行く時に、モーラから貰った鍵を取り出した。

 鍵穴はぴったりだ。

 鍵を間違えたなんてボケはなかった。


「さあ、入った入った」


 俺は暖炉に薪を入れて、点火の魔法で火を点けた。


「好きな物、飲み食いしてもいいぞ」

「どうせ、使用人のアルバイトをしてたとかいう落ちだぜ」

「じゃあ、叩き出されるんじゃないかな」


「あら、あなた達もいらしてたの」


 モーラが入ってきた。

 モーラもここで雨宿りする事にしたんだな。


「ここはルドウィン家の別荘です。さきほどの文句を聞きました。文句のある方は出て行って下さって結構ですわ」

「ほらなやっぱりだぜ。ゴキブリローパーが叩き出されるに銀貨1枚」

「俺も叩き出されるに銀貨1枚」

「俺もだ」


「あなた達、ヒロはルドウィン家の立派な客。いいえ、身内ですわ」

「こいつら信じないようだぞ。文句がある奴は出てってくれ。ほら出てげよ。女性は残っていいよ」


「そんな嘘だ。俺は信じないぞ」

「なんで、あいつばっかり」

「アイナちゃんも男を見る目がないよな」

「モーラさんまで許せん」


 俺はまだ信じない野郎達を外に追い出した。

 そう言えば、温泉があるんだったっけ。

 一風呂浴びたいな。


 女子達が順番で温泉に入る。

 覗かないよ。

 以前の俺とは違うんだ。

 魔力感知と幻影魔法があれば裸なんていつでも拝める。


 でも混浴は良いな。

 憧れと言っても良い。


「モーラには一つ貸しがあったよな。一緒に温泉に入ろう」

「駄目よ」


 アイナが反対した。


「アイナも一緒に入るか」

「そうなさいまし」

「でも、恥ずかしい」


 三人で混浴と相成った。


「指一本でも触れたら大声を出すわよ」

「アイナ、意外にうぶなんですのね」

「モーラ、背中を流してくれるか」


「はい、背をお向けになって」

「ちょっと、なに長年連れ添った夫婦みたいな雰囲気を出しているのよ」


「妬くなよ。心配しなくても、アイナの背中も流してやるから」


 体を洗い終え、湯船にゆったりと浸かる。

 目の前には、絶景がお湯にぷかぷかと浮かんでいた。

 アイナは浮くほどはないな。

 でもそれも良い。

 違うのは違うのでとても良い。


 俺が立ち上がるとパオーンが鼻を上に高々と持ち上げた状態でアイナの目に映ったようだ。


「きゃっ」


 アイナは手で顔を覆って真っ赤になった。

 モーラはというとガン見してた。

 やっぱり貴族は教育が違うな。

 少し面白くない。

 まあアイナの反応が良かったから楽しめた。


「アイナ、顔が赤いぞ。のぼせたか」

「そんなんじゃないもん。早く上がりなさいよ。湯冷めするわよ」


 俺はひとしきりパオーンをアイナに見せつけてから湯から上がった。

 浴室から出ると外で女子が聞き耳を立てている。

 なんだ。

 濡れ場でも期待させちゃったか。


「別荘に招待してくれてありがとう。あなたを二割ほど許すわ。アイナさんとモーラさんに、襲い掛からなかったみたいだし」


 被害者会の会長が来てそう言った。

 エッチな事を風呂でしなくて良かった。


「俺は紳士だからな」


 雨も上がったようだ。

 今日は良いCG回収が出来た。

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