12/28
10:00
昼過ぎから塾の時間が一緒の風喜と冬休みの宿題を進めながらTVのニュースを流し見していると、週1でオススメの映画を3本紹介しているというコーナー始まった。
そのコーナーが耳に入ってきた僕は宿題そっちのけで見ていると、今でも全シーンの内容を覚えている映画が紹介された。
風喜「…なんか、こーたんに似てる。」
僕はその風喜の言葉に少し冷や汗をかく。
琥太郎「僕に似てる人よくいるし。」
風喜「いないでしょ。この学区1イケメンでモテ男なくせにそんなこと言う?」
と、風喜は呆れながらそばにあったお菓子を取り、糖分を補給する。
風喜「やべぇ…。この映画、見たくなってきた。」
琥太郎「風喜ってお化け屋敷苦手だったじゃん。」
風喜「ホラー映画とお化け屋敷は別もんだよ。塾の後にレンタルしに行こっかな。」
…やばい。
あのレンタルDVD屋には確実にあるし、年末年始で店側が気合を入れてるはずだし、今日TVで紹介されたから在庫を増やす可能性もある。
琥太郎「これより面白いのあるよ。」
風喜「これがいいの。こーたんが似てる子、今どんなになってるかなー。」
琥太郎「子役はすぐ旬じゃなくなるから辞めてるかも。」
風喜「エスター、日本版、子役、現在っと…。」
そう言って風喜はいつのまにか手にしていた携帯で僕のことを検索した。
風喜「紀信 琥太だって。名前丸かぶりじゃん。」
風喜は僕自身にプロフィールを見せながら最初は笑っていたけれど、生年月日や血液型、好きなものがドロドロの甘々ココアというどうしようもならない共通点を見て僕の顔を見つめる。
風喜「…え、これ。こーたんじゃん。」
琥太郎「違うけど…。」
風喜「こーたんって嘘言う前に耳動くんだよね。」
琥太郎「え。」
僕は思わず耳を触り、確認してしまうと風喜はゴシップネタを捕まえて嬉しそうな顔をする。
風喜「こーたんって子役だったの?だから嘘隠すの得意なの?」
琥太郎「なんのことか知らない。」
風喜「こーたんって天使ちゃんのこと、好きなんでしょ?ふぅのことどう思った?嫌い?うざい?ちゅき?」
琥太郎「…今はうざい。」
風喜「あーんっ♡今じゃなくて終業式の時よ♡」
風喜は猫撫で声を出しながら僕をイラつかせる。
けれど、僕が嘘を突き通していると風喜は僕の左目の際を指した。
風喜「こーたんは嘘つく時、ここがほんのすこーしピクって動いちゃうの♡あの時天使ちゃんのこと聞いた時も動いてたぁ♡」
琥太郎「あっそ。なんとでも言えば?風喜がデマ言ってるって言うから。」
風喜「ふーん?淡島ちゃんはいいの?」
琥太郎「え?」
風喜「付き合ってるってそーたんが騒いでたけど。」
…ああ。
そうか、勘違いが行き違ってるんだ。
琥太郎「付き合ってないよ。ただ駄弁ってただけ。」
風喜「けど、淡島ちゃん付き合ってるって言ってたよ?」
琥太郎「…は?そんな覚えないんだけど。」
風喜「初ちゅーしたって教えてくれたよ?これは誰にも公開してないから安心して♡」
だるい。
付き合ってくださいって言われてないし、付き合いましょうとも言ってないんだから付き合ってるわけがない。
琥太郎「したけど、ただの興味本位。マドンナって慣れてるのかなって。」
風喜「こーたんはプリンスだけど慣れてるの?」
琥太郎「ラブシーンでフレンチはしたけど…」
風喜「あはっ♡自分でお墓掘ったね♡」
…やらかした。
こうなったらもうなるようになれって感じだ。
それで本気で国立高校目指してこんなクソ学校転校してやる。
琥太郎「いいよ。言えば?そうしたらみんな見てくれるだろうし、また仕事入るかもしれない。」
風喜「やだっ♡こーたん可愛い♡忙しくなる前にサインもらっていい?」
おばさん化した風喜に今適当に作ったサインを書くと、風喜はサインが書かれた数学のノートを抱きしめて嬉しそうにする。
風喜「まーた、こーたんモテちゃうよ。どうするの?」
琥太郎「知らない。終わった子役でモテるなら今俳優志望でもがいてるフリーターもモテるだろ。」
僕はおしゃべりな風喜がこの噂を流さないように願いつつ、これからの学校生活をどう過ごすか考えた。
環流 虹向/てんしとおコタ
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