12/27

10:00

僕は久しぶりに朝の時間をゆっくり過ごしているお父さんに学校からそのまま友達の家に行くと伝え、今年はもう会わないことを伝える。


けれど、お父さんは寂しい顔も引き止める言葉も僕にはくれないで開いた玄関の扉を寒そうにすぐに閉めて鍵をした。


それがただ一緒の家に暮らしている人という感じがひしひしと伝わってきて、さらに嫌に思ってしまった僕は1日一緒にいるであろう1月7日の七草がゆも作るのをやめてしまおうかなと思う。


そんなことを考えていると同じ部活の爽太と校門前で鉢合わせた。


爽太「おはー。なんか久しぶりって感じ。」


琥太郎「クリスマス会から会ってなかったからかも。」


僕がそう言うと爽太は少し気まずそうに目線を軽く空に向けて、歩き出す。


僕もそれについていくと爽太は少しぎこちなく口を開いた。


爽太「…琥太って、あの夜何してた?」


琥太郎「あの夜?」


爽太「クリスマス会。淡島様と一緒にいたじゃん。」


ああ、あれか。


そういえば、爽太って淡島さんのこと気になってたっけ。


琥太郎「駄弁ってただけ。で、座ってるだけだと寒いから、歩きながら話してたとこに爽太がいた。」


爽太「…手、繋いで?」


やっぱり見られてたか。


まあ、顔が見えてれば手元も見えるか。


琥太郎「暗いから変質者に絡まれないように。爽太もすれば?」


僕は話しながら歩いていると、爽太が隣にいないことに気づき振り返ると爽太は足を止めていた。


爽太「告られたんじゃないの?」


琥太郎「されてないよ。話しただけって言ってんじゃん。」


そろそろしつこくなってきた爽太に強めに言葉を返すと、爽太はトボトボと歩くように僕のそばに来て足を止めた。


爽太「…伝えたいことってなんだった?」


…手紙、見たのかよ。


まあ、こいつだったら見るかもしれないな。


琥太郎「目が悪いから部活が終わる時間同じだったら一緒に帰ってほしいだって。」


爽太「そう…。」


琥太郎「まあ、向こうは吹奏楽部だし、日が暮れても学校にいるから僕たちより遅いよね。」


爽太「…待ったりしないのか?」


琥太郎「僕はそのあと塾あったり、予定入れてたりするから待つ暇ない。」


僕がそう言い切ると、爽太は小さな深呼吸を一度してまた歩き始めた。


爽太「じゃあ、俺が待とうかな。」


と、少し自信なさげに爽太は呟いた。


琥太郎「時間あるならいいんじゃん?向こうも時間あるならチチ婆のとこ行って飯食えばいいし。」


爽太「…そう、する。」


爽太は見え透いた好意を隠そうとしたけれど、僕はそれを見て見ぬフリをして春先にある地区大会に向けて練習に励んだ。



環流 虹向/てんしとおコタ

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