20:00

予定通り、部活終わりに乳が腹まで垂れてるチチ婆の駄菓子屋と隣接している鉄板焼き屋で夜飯を食べていると爽太がずっといじっていた携帯を僕と風喜に見せてきた。


爽太「クリパするかだって。」


と、爽太は夏來から来たメッセージを僕たちに見せるけど、その少し上に隠しきれない冬休みの遊びについてのメッセージもあった。


風喜「ふぅ風喜は暇だからどっちでもいい。」


琥太郎「僕は先約あるから。」


「「マジ!?」」


2人は目が飛び出そうなほど驚くけど、別にそんなに驚くものじゃない。


出会った時からずっと尊敬している映画監督の最上 瑠愛もがみ るあさんが自宅に友達をたくさん呼んでパーティーをするから良かったら来てねとお誘いしてくれたので、即答で返事をしたし、これは絶対外せない。


風喜「えっ、ええっえ?彼女出来てたっけ?」


琥太郎「彼女じゃないけど、女はいっぱいかも。」


瑠愛さんの彼女や瑠愛さんと友達の日向の兄さんとその彼女さんも来る予定とは聞いている。


そこからまた友達を呼ぶらしいからさらに人が溢れるクリスマスパーティーになることが想定されるので僕は誰も呼ばないことにしている。


爽太「琥太ってどこで顔広げてんの?」


琥太郎「んー…。なりゆきって感じだけど、とりあえず大人にはいい顔しとけば贔屓してくれる。」


爽太「あーなるほど。普段の琥太の真似してればいいってことか。」


風喜「お年玉アップしてもらうために今から練習しとこっかな。」


バカ2人は僕から“いい顔”のデータを貰い、とても楽しそうにして家に帰ったけど僕は今日もまた1人寒くて真っ暗な家に帰る。


そうしていつも通り玄関脇にコートをかけて靴箱にスニーカーをしまっていると、急に玄関の扉が開いて心臓が飛び出そうになった。


琥太郎「…おかえり。」


「忘れ物。」


そう言って、僕のお父さんは靴を脱ぎ散らかし自室に忘れた携帯を持ってまた仕事に向かおうとする。


父「食べてきたのか?」


ふと僕を見たお父さんは僕の服についている匂いに気づいたのか、そう聞いてきた。


琥太郎「あ、うん。お好み焼き。」


父「金は?」


琥太郎「あと2800円。」


父「じゃあ…、これ。」


と、お父さんは僕に2万円を渡して『行ってきます』もなく足早に仕事に向かってしまった。


僕は今もらった2万円をしっかり財布に入れてからとても冷えている自分の部屋に行き、ベッドに倒れる。


あと5日でクリスマスだけど、お父さんは僕と過ごそうとか思ってないんだろうな。


今日も共有カレンダーアプリで確認したけど、今週ずっと夜勤ばかりでどこかに出かけるとかもクリスマスの話も一度も出なかった。


これで5年目だけど、サンタさんはまた26日の朝にポチ袋を手渡しで渡してくるのかな。


その中に入っているお札で好きな物を買えって眠そうに言ってベッドに倒れるんだろうか。


僕は来てほしくないイベントに嫌気がさしながらも、兄が行くという理由であの子がやってこないかなと淡い期待をしながら5日後を待ち望んだ。



環流 虹向/てんしとおコタ

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