20:00

あー…、本当に私って押しに弱すぎると思う。


音己とは恋人になってからしてねって一に言われたのにただ自分が弱ってるだけでしちゃったし、今目の前でストーカーを撃退したななみんに1杯を奢ってって呑みに来たはずの一に言われてしまっえ素直にあげちゃう始末。


けど、その好意を見せたいと思ってしまった人がななみんが呼んでくれた友達にいた。


その子は夢衣むいちゃんと言って、とっても女の子らしくてふわふわボブのタレ目プードルちゃんみたいな子。


しかも、そのプードルちゃんは一が学園祭で描いた絵に出ていた波打ち際で楽しそうにはしゃいでいる可愛い女の子にそっくり。


それを目の当たりにして私は動揺してしまい、みんなの会話が耳に入ってこなくなってしまうと1つの声だけまっすぐ入ってきた。


一「俺は姐さんのカシオレ飲んだら帰る。」


と、私が考えの無い言葉をみんなと話していると一は私を一直線に見てそう伝えてくれた。


雅紀「あ、はーい。作るね。」


夢衣「さきちゃんのカシオレ美味しいの?」


と、プードルちゃんは目をぱちくり煌めかせながら隣にいる一に私のカシオレの味を聞いた。


一「色がすごい綺麗なんだ。」


夢衣「…私も飲みたい。けど、ななみんのも飲みたい。」


一「今日はななみさんの飲みに来たんだろ?だったら待つべき。」


ちょっと夢衣ちゃんに素っ気ない一だけど、ななみんのことも、夢衣ちゃんのことも、その隣にいるななみんの大親友のことも考えてる。


そいうところが好きなんだけど、今それをされると音己のことが頭にチラつくから私のわがままだけれどやめてほしい。


雅紀「はい、おまたせ。」


一「姐さんに混ぜてもらいたい。」


と、一は分離したままの夕暮れ時のカシスオレンジにそっと手を添え、私が入れようとしていたマドラーを待っている。


私は健気に待つ一の夕暮れを混ぜ合わせて日を落とさせると一は満足そうに笑って、ゆったりと自分のペースで飲み、グラスを空にするとすぐに立ち上がった。


一「頼もしいななみさんいるから今日は大丈夫そうだね。」


雅紀「…今日は予定あるの?」


一「明日から妹と瑠愛くんたちが協力して映画作ることになってるから景気づけに飯食わせようかなって。」


雅紀「こんな時間に?」


一「このぐらいの方が人いなくてダラダラできるから。姐さんも来る?」


七海「いってらっしゃーい。」


雅紀「いけないよ。また今度ね。」


私はちょっと名残惜しい一を見送って、ちょっと気まずいプードルちゃんに目を移すとななみんの大親友の腕に抱きつき、とても仲が良さそうにする。


その様子を見てちょっとホッとしてしまう私は性格が悪いなと思いながら、接客業としてその子に笑顔を振りまいた。



環流 虹向/ここのサキには

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