20:00
一の感覚が残ったままの体でいつもの賑わい以上を取り戻したお店で、フルパワーでお客さんたちを楽しませていると夏くんが仕事で女の子と一緒にBARに来た。
夏「さきさん、特別ドリンクお願いします。」
雅紀「はーい。立ち飲みでごめんね。」
私は2人の時間がいい時間になるように、手早くドリンクを作って賑わう店でもまだ人混みが少ない空間に案内して楽しんでもらっていると、携帯のアラームが鳴った。
雅紀「みんな、あっちの店行ってくる!24時にまたこっち来るねー!」
私は従業員にも、来てくれたお客さんみんなに伝えてみんなからの行ってらっしゃいをもらい、2号店に向かって走っていると思いっきり避けてたはずの体が通りすがりの男性に当たってしまった。
雅紀「…ごめんなさいっ。」
「お姉さん、今からどこ行くの?」
と、とんでもなく目鼻立ちが整ったアイドル級のイケメンが転びかけた私の腕を掴んで離さない。
雅紀「ちょっと仕事行かないと…」
「キャバ?」
雅紀「…BARです。」
「俺も行く!」
そう言ってイケメンは私の手を取り、しっかりと握り直されてしまった。
雅紀「お金、落としてくれます?」
「お酒美味しかったら美味しかった分だけ落とすよ。」
…じゃあいいか。
私は突然のお財布ゲットに少し気分が上がり、そのまま2号店がある3階まで走っていると手を引かれた。
「ちょ…、お姉さん…。持久力えぐい…っ。」
と、イケメンはこんな真冬でも汗だくで息を荒げながら、膝を少し震わせていた。
雅紀「あ、ごめんなさい。でもあと、6段でお店つくよ。」
「…頑張るか。」
そう言ってイケメンはとっても重そうに脚を上げて階段を登りきった。
雅紀「お疲れ様。何飲みたい?」
「…冷やしあめサワーある?」
雅紀「あるよ。」
「え!?あるの?」
と、イケメンはダメ元で聞いたのか、とても驚いた顔をして聞き直した。
雅紀「うん。常連さんにメニューに入れてってお願いされたからあるよ。」
「濃いめのお願い。」
雅紀「分かった。」
私は汗だくなイケメンの額を拭き、中に入るとこっちの店も満席で立ち飲みの人もたくさんいた。
雅紀「ごめん、席ないけどいい?」
「いいよ。お姉さんの冷やしあめちょうだい。」
と、イケメンは暑そうだったダウンを脱いでメニューで顔を仰ぎ出すとその少し火照った顔に女性客の目が集まる。
それに私は動物的反応を感じていると、2人組の女性客がイケメンの元にやってきた。
「あの…、Bubble Skyのエイナくんですか…?」
「え?あ、はい。」
「…で、出来たら、一緒に写真撮ってもらってもいいですか?」
「撮ったらお店、来てくれる?」
「「はいっ!」」
そう元気よく頷いた女性客とイケメンくんが写真を撮ると、飲んでいた半数の子たちがイケメンくんと写真撮影をして喜んでいた。
雅紀「…なにかのアイドルグループに入ってるの?」
私は撮影会が落ち着いたイケメンくんに冷やしあめサワーを渡し、冷やしておいたおしぼりも一緒に渡す。
「ううん。ただの美容師。」
ただの美容師なのにあんなに人気なの…?
私は思わず眉を寄せて、おつまみのあられおせんべいをグラスのそばに置くとイケメンくんはグラスに入っていた冷やしあめを一気に半分飲んでいい喉越しを聞かせてくれた。
「けど、万年窓拭きだけどね。」
雅紀「技術職は時間かかるからね。今は辛抱だよ。」
「…そうだといいけどね。」
と、急に元気が無くなったお兄さんはぽりぽりと小さい口でせんべいを食べて、言葉を濁す。
雅紀「ドリンク分の愚痴は聞くよ?こんな日だし、お兄さんだけがしょんぼりしてるの悲しいよ。」
「ななみんって呼んで。お姉さんは?」
雅紀「さき。一緒に夜明かしちゃおう?」
なな「うん。さきちゃん家行っちゃう。」
もう若干酔い始めたななみんの愚痴を私は聞きながら、始まりかけのクリスマスを過ごした。
環流 虹向/ここのサキには
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます