第53話 守備兵団

 メル・ブルーを出発して三日目。

 途中、小さなベースキャンプに泊まり、ようやく俺たちは大きな村に辿り着いた。


「ようやく村だー!」

「今日はここに宿泊ね!」

「はーい!」

「今日も長い距離走ったから、疲れたねー!」

「俺もー! もう、お腹ペコペコーだ!」

 村の入り口でガモリを預け、村の中へと入った。


「なんか、この村、騎士みたいな人が沢山いないか?」

 村内にはあちらこちらには騎士らしき人の姿かあった。

 頭まで全身金属のプレートアーマーを纏い、手には大きな槍。

「多分、この村には守備兵団の基地があるんだよ!」

「守備兵団?」

大地なる世界樹アースユグドラシルの危険なモンスターから私たちを守ってくれている兵団の事だよ!」

「へぇー、大地なる世界樹アースユグドラシルにもそんな危険なモンスターがいるの?」

「そりゃもう! 遭遇しただけで、私たちを一飲みで食べてしまうほど大きなモンスターがもうたくさん……。まぁ、私も遭遇したことはないけどね……」

「そんなモンスターに遭遇したらと思うと急に怖く思えてきた……」

「大丈夫、守備兵団の皆さんが普段から警備してくれているから! 危険な道を選ばない限り、そう簡単には遭遇しないよ!」

「なら、良かった!」

 と話していると、

「あ、あそこに宿があるね! 今日はここに泊まろう!」

「うん!」

「わぁー、ここの酒場の料理、どれも美味しそう〜!」

「ホントね〜! 久しぶりに保存食以外の物が食べらる〜!」

「よし、じゃあ部屋に荷物を置いたら、ご飯にしようか!」

「賛成ー!」



 その後、俺たちは酒場で夕食を食べ終えた。

「美味しかった〜!」

「ごちそうさまでした〜!」

「にゃ〜!」

「ねぇ、ねぇ、みんなこれを見て!」

「何、これ?」

「地図だよ!」

 アヤメはどこかから地図を持ち出し机の上に広げた。

「大きい!」

「うん、大地なる世界樹アースユグドラシルの道が全部示されているからね!えっと、この地図によると、もう四割ぐらいの高さまで降りたのね!」

「やっぱり、登りに比べて下りは速いね!」

「ねー、順調!順調! 明後日にはきっと根本にある街に到着できるよ!」

大地なる世界樹アースユグドラシルの旅ももう終わりか……。なんか残念だな~」

「そうだね……。けど、また降りるまでは危険がいっぱいだから二人とも気を緩めずにね!」

「はい!」

「それじゃあ、今日はもうそろそろ宿に戻って、明日に備えて寝ようか!」

「うん!」

 俺たちは酒場を後にした。


     * * *


 次の日の朝。

 村の入口で預けたガモリの元へ向かい、出発しようとした時だった。

「そこの君たち、ちょっといいかい?」

 俺たちの元に昨日見かけた騎士が近寄ってきた。

「どうしました?」

「君たちはこれから大地なる世界樹アースユグドラシルを下るのか?」

「はい、そうですが……」

「良かった、私は、この付近を警備している騎士のアーリカだ」

 と言いながら、騎士の一人が鎧兜を外した。

 中からは、紅色の長い髪。

 騎士の一人は女性、まるで薔薇の様に美しい人だった。

「アーリカさん、それでどうかしましたか?」

「実はだな……。ここ数日、ここから先の道でモンスターの目撃情報があって、実際に何人かの旅人が襲われた被害が出ているだ。だから、十分に気を付けてこの先を進んでくれ!」

「モンスター⁉」

「情報ありがとうございます。そのモンスターは一体、何なのですか?」

「それが、まだそこまで詳しい情報が無くて……。救助を要請を聞いて、我々がいつも到着した頃には、何者かに無残に食い尽くされた跡しか残っておらずなく、何も分かっていないんだ……」

「そんな凶暴なモンスターがこの先に……?」

「我々は被害の痕跡からジャビーかレザードンかと推測しているのだが、それにしてもここまで被害が大きいモンスターは初めてだ」

 ……ジャビー? ……レザードン?

 聞いたことの無い名前だが、なんとなく恐ろしいモンスターな感じがする。

「そうですか……」

「可能であれば、事件が解決するまでこの村から出発するのを待ってもらいたいが、それもいつになるか分からないのが正直なところだ……」

「アヤメ、どうする?」

「うん……この先を進むのは少し不安はあるけど、このまま数日間、ベースキャンプに留まっても解決しそうな問題でもないし……。遭遇しない様に注意して先に進むしかないかな……」

「そうだな!」

「私たちはこのまま行きます!」

「そうか! 我々も常に見回りはしているが、何か少しでも危険を感じたらすぐさま逃げるんだぞ!」

「分かりました!」

「この先、君たちが無事で降りられるように幸運を祈ろう!」

「ありがとうございます!」

 俺たちは村を出発した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る