第23話 再会

 襲撃者の正体は玲奈だった。

 サラサラで甘い匂いが漂ってきそうな綺麗なショートカットに、大きく透き通った綺麗な瞳。

 そして、リンゴのようにほんのり赤い頬。

 間違いなく玲奈だ。


「会いたかった!」

 強く抱きしめ、泣き出す玲奈。

「え、えっ、あっ、あの……?」

 仕方ないこのまま……。

「一人で寂しかったんだよ……」

「ごめん……。すぐに助けに行けなくて……」

「う、うん……。本当にエンに会えてよかった」

「俺も玲奈が無事で本当に良かった……」

 ようやく再会できた二人。

 しばらく抱き合ったままでいた。



「ごめん、ちょっと取り乱しちゃって……」

「うんうん、大丈夫! こんな世界に来てしまって、そうなるのも仕方ないよ!」

「ねぇ、ここは一体どこなの……?」

「俺も詳しく説明はできないけど、おそらく俺たちがいた世界とは違う、異世界だと思う……」

「異世界……?」

「うん」

「どうしたら、元の世界へ帰れるの……?」

「それが……分からない……」

 落ち込んだ顔をする玲奈。

「大丈夫、きっと元の世界に戻れるよ!」

「……うん」

「ところで、なんで俺に弓矢で狙ったの……?」

「それはね……」

 木に突き刺さった矢の先を見せた。すると虫の幼虫の様な生き物が矢に突き刺さっていた。

「コイツよ! 気を付けて、この辺りの果実には寄生虫が中にいることが多いから、間違って食べたら死んじゃうからね!」

「助かった! もう少しで死ぬところだったよ。ありがとう!」

「いえいえ!」

「で、れい……、いや、涼風は今までどうしてたの?」

「何で急に苗字で呼ぶの?」

「いやだって、俺、名前で呼ぶなんて……」

 小さいことは玲奈と呼んでいたが、玲奈と全く話さなくなってから、一度も玲奈って呼ぶ事は全くなかったし……。

 さっきはつい名前で呼んでしまったが、普段の学校とかだとクラスの女子はみんな苗字で呼んでいるし……。

「レイナでいいわよ!」

 玲奈はそう言って微笑みかけた。

「レ、レイナ……」

 なんか、照れる……。


「私ね、空から落ちた時、大きな鳥に捕まったんだけど、あの後、おばあさんに助けられたの! で、しばらくおばあさんの元で、弓矢の使い方を教えもらって、エンに会うために、ここまで来たのよ!」

「そうだったんだ! 俺もおじいさんにこの剣を打ってもらったんだ!」

「私が弓で、エンが剣か、なんかいいじゃん! ゲームのパーティーぽいね!」

「そうだな!」

「エン、さっきから気になっていたんだけど……そのぬいぐるみみたいな猫は何……?」

「こいつは、ニャーって言うんだ! 元は俺の家のぬいぐるみだったんだけど、こっちの世界に来て生き物みたいに動き出して……」

「へぇー、ぬいぐるみがー⁉ すごーい! はじめまして、ニャーちゃん!」

「ニャー⁉」

 ニャーはレイナに飛びついた。

「わぁ、可愛い! ホント、本物の猫みたいだね……なのにぬいぐるみの様にふわふわ……」

「そいつ、本物の猫よりスゲーんだぜ! 敵を見つける察知能力があったりとか、あとパンチも強力なんだ!」

「ニャー!」

「よろしくね!」

「ニャー!」

 ニャーとレイナは握手をした。

「で、俺たちはこれからどこへ行こうか……?」

「私たちが待ち合わせしていた港街まではここからあと少しよ!」

「そうなんだ! あとどれだけなのか全然分からなかった!」

「私、危険なモンスターに遭遇しない様にと、木の上を渡り進んでいたから、向こうに街と海があったのが見えたの!」

「木の上を……って⁉ どうやって?」

「なんかね、おばあさんが言うには私には風を操る力があるみたいで、それを上手く使えば、ほら見てて!」

 そう言うとレイナは地面に向けて、手を広げ構えた。

「ふぅ――――、たぁぁぁ――――――‼」

 すると突然、レイナから強風が吹き出した。

 そして、風に吹き上げられ、宙に高く舞い上がるレイナ。

「す、すごい―――‼ レイナ、すごいよ―――!」

「でしょ―――?」

 上空から返答するレイナ。

 しばらく、浮遊すると、ゆっくりと降り立った。


「飛べるなんてすごいよ、レイナ!」

「でしょ⁉ けど、宙に浮くだけで、鳥みたいに自由に飛べはしないだけどね……」

「それでもすごいよ! ちなみに俺は炎の魔法が使えたんだ!」

「エンも? すごい、すごい! こんな魔法が使えるなんて、私たち、本当に夢の世界に来てしまったんだね……」

「そうだな……」

 夢の世界か……。

 もしかすると、俺がこの魔法の世界に憧れていたせいで、レイナまでも連れ込んでしまったのかもしれない……。

 そうと思うと申し訳ない気持ちがあった。

「さて、そろそろ出発しよう! 港街へ!」

 笑顔で話しかけるレイナ。

「おう!」

 今はそんなことを思っても仕方がない。

 レイナと二人、元の世界へ戻る方法を探そう!


「でも、港街まで行ってどうするんだ?」

「おばあさんが言うには、この島を出て、地の大陸アースランドへ向かえって!」

「……地の大陸アースランド?」

 爺さんがそんなワードを言っていたよな……。

「そこには、この世界で一番大きな木があるんだって」

大地なる世界樹アースユグドラシルだ!」

「そう、それ! そこへ行けば、元の世界への戻り方も分かるんじゃないかって……」

「なるほど! じゃあ、港街で地の大陸アースランドまで行く方法を探すってことだな!」

「そうなるわね!」

「そうと決まったら、さっさと港街へ急ぐぞ!」

「おう!」

「にゃー!」

 俺たち二人、いや二人と一匹は港街へと向かった。

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