第21話 焔光の剣

 再び、テツの家。

 縁側で気持ちよく昼寝するニャーと庭で薪を割っているテツがいた。


「……⁉ ニャー? ニャ―――⁉」

「……ん? どうした、ちっこいの……?」

「ニャー、ニャー、ニャ―――⁉」

 何かを感じたのか、慌てるニャーの姿。

「……ん? 火山がどうしたのだ?」


 ――ガタガタガタガタ


 突然、地面が大きく揺れ始めた。


「わっ、揺れか⁉」


 ――ガタガタガタガタガタガタ

 家も大きく揺れる。


「地震か……⁉」

「にゃ……?」

「いや、この揺れる感じは……ひょっとして……エンのやつ……⁉」


 ――ド―――――――――――――――――――ン


 目の前の火山の頂上から、勢いよく煙が噴き出した。


「お―――‼ 見事にやりやがったな、エン!」

「ニャ―――――⁉」

 勢い良く降ってきた火山灰を被る二人。


「ゴホゴホ……。こうしてはいられんぞ!」

「ニャー!」

 テツは急いで火山へと向かった。




「はぁはぁ、テツさ~ん! 火山、噴火させましたよ!」

 洞窟を危機一髪、無事に抜けた出した俺はテツさんと合流した。


「やったな、エン! よっし、約束通り、剣を打ってやるよ!」

「あの……それがですね……」

「どうした、ここまでやっておいて剣は要らんのか?」

「火山を噴火させるのに《太陽の剣》を使ったのですが……噴火が始まると急いで逃げてきたので、そのまま火山の中に置いてきてしまったので……肝心な剣は今頃、マグマの中に……」

「ハッ、ハッ、ハッ!」 

 テツさんは大声で笑いだす。

「大丈夫だ。《太陽の剣》はかなりガタがきていたからな。なーに、お前には新しい剣を打ってやるよ!」

「本当ですか⁉」

「あれは、元々、あいつのために打った剣じゃ。エンにはエンに合った剣じゃないとな!」

「ありがとうございます!」

「よし早速、取り掛かるぞ! 二人ともついて来い!」

「はい!」

「ニャー!」


 そして再び、洞窟の中。

 さっきまでとは違い、かなり蒸し暑く、息苦しい洞窟の中。

 そして、中枢部には真っ赤なマグマが吹き溜まり、ブクブクと煮えたぎっていた。


「これだけ、活発にマグマが燃えていたら大丈夫だ!」

 そう言うとテツさんは火山に中に素材と道具を運び、剣を打つ準備に取り掛かる。

「これはな……かつて、この火山を守っていた焔翼の龍アーディウスの爪だ」

「|焔翼の龍《アーディウス……?」

「ほれ、そこの壁に絵があるだろ!」

 壁に描かれた絵は燃えるたぎる炎の翼のドラゴンだった。

 異世界では定番だけど、やっぱりこの世界にもドラゴンが存在するんだな。


「この爪は特殊でな。この火山の火ではないと加工ができないんだよ!」

「それでマグマが必要なんですね……」

「どんな炎にも耐えられる強固の剣を作るにはな、こいつの爪ぐらいしかねーんだわ! よっし! 今から、ちょいと忙しくなるから、黙ってそこで見ておけ!」

 テツさんは鉄滑車でマグマを救い上げ、急いで龍の爪を溶かしていった。

 固い爪はみるみるうちに溶けていき、それを、すぐに剣の型に注いでいく。

 そして型の中で爪が固まると、急いで型から取り出し、剣を叩き鍛錬を行った。


 ――カンカンカンカン


 火山内で鳴り響く鍛錬の音。


 ――カンカンカンカン

 何回も何回も続いた。

 

 ――カンカンカンカン

 気が遠くなりそうな程、蒸し暑い火山の中。

 汗も拭わず、永遠、鍛錬は続いた。


「よしー! 出来たぞ――!」

 テツさんはそう叫ぶ。

「どうだ? カッコいいだろ?」

 そう言うと剣を軽々と振りかざす。

「すごい……!」

「《焔光の剣》だ」

「……焔光の……剣……‼」

「その剣身はどんな炎にも屈しない極火の剣!」

 ……どんな炎にも負けない剣か。

「ほら、お前の剣だ!」

 俺は《焔光の剣》を受け取った。

 剣を握った瞬間、剣は急に熱を発した。

 熱っ……⁉

 でも、この熱は……。

 あの時の不思議な感覚だ。

 火山の熱……。

 マグマの熱さ……。

 いや、もしかして……。


 ―己の炎を信じろ―


 再び、あの声が聞こえた。

 そうだったのか……。

 ありがとうございます。

 この力をお借りします。


「どうだ?」 

「試しに斬ってみていいですか?」

「おう!」

 目の前にあった大きな岩を試し斬りする。

「たああああああああああああああああああ――――――――――!」

 俺は勢い良く剣を振り抜いた。

 すると、《焔光の剣》のからは燃え滾るオレンジの炎が閃光の輝きを発した。


 ――バ―――――――――――ン 

 目の前の岩は大きく真二つに斬れる。


「すごい!」

「上手くいったな!」


《焔光の剣》、これがあれば俺はどんなモンスターとも戦える!


     * * *


「テツさん、長い間、お世話になりました!」

「おう、気を付けて旅をしろよ!」

「分かりました!」

「無事に元の世界に戻れるといいな!」

「はい!」

「じゃあな、ちっこいの!」

「ニャ~~!」

 ニャーも手を振る。

「じゃあ、行くぞ、ニャー!」

「ニャー!」

 次の日、俺たちは火山を後にし、次の目的地へと出発したのであった。

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