第13話 3年後(アレクシア8歳)
お茶会デビューから3年後、今日はリリアン兄妹がラビュタン侯爵家に遊びに来る事になっている。
公爵家のお茶会以降リリアンとアレクシアが仲良しだと知られているので、リリアンの我儘に対する抑止力と見做されているのか、他のお茶会で顔を合わせる事も多いが時々個人的に遊んでいる。
今日はエミールのお茶会デビューに向けてプレデビューという事で母のクリステルが従姉妹であるヴァレリーに頼んだのだ。
末っ子なせいか未だエミールは赤ちゃん扱いから抜け出せていない、本館に移ったが夫婦の主寝室から近い部屋を使わされている。
アレクシアは前世を思い出しているから大丈夫だったが、もし以前の我儘令嬢のままだったとしたらエミールに嫉妬し、両親の気を引こうと色々やらかしていただろう。
「お嬢様、これで
「うん、バッチリね。ソフィーありがとう」
長く艶やかな黒髪をいつもより少し凝った髪型にしてもらい、アレクシアは鏡を見て満足げに微笑んだ。
(髪型はバッチリやけど、顔、顔が!! ほんまソフィーと取り替えて欲しいわ……。待てよ、そやけどそうなったら周りの評価は勘違いブスっちゅー評価になるんか? ……それはちょっと痛いな、自分の好みや無くてもこの顔で正解なんかもしれん)
定期的に襲われるジレンマに内心
アレクシアは記憶が戻ってからの約4年間、横暴なところのあるウィリアムにはオーギュストを
最初はオーギュストの容姿を
しかし今までは放置していたのに助けられたオーギュストからは尊敬の眼差しを向けられ、アレクシアはエミールに「こんな素敵なお兄様がいてエミールは幸せね、あなたも見習うのよ?」などと言われては格好良い自分が大好きなウィリアムは益々オーギュストを護り、時には知らない子でも虐めを見かけると止めに入るようになった。
オーギュストにも見た目で何か言われても容姿以外の能力を磨けば誰かが何かを言って来ても負け犬の遠吠えだからと
エミールはアレクシアの
「その髪型も凄く可愛いよ、アレクシア」
「うふふ、ありがとうございます、ウィル兄様。ソフィーが頑張ってくれたのです」
自分の手柄のように胸を張る姿に周りはクスクスと微笑ましげに笑っているが、1人だけ笑っていなかった。
「もうすぐセザール様達が到着するよ」
微笑みを浮かべようと努力しているオーギュストだが、その顔色は良くない。
セザールとオーギュストが同い年なせいで何度もお茶会で顔を合わし、会話する機会があると必ず容姿を貶してくるので苦手なのだ。
そんなオーギュストの手を両手で包み込んで、アレクシアはほんの少し悪い笑みを浮かべた。
「オーギュ兄様、もしセザール様が目に余る態度やお言葉をぶつけて来るようでしたら、連れ出してひと言申し上げますからね」
「いけないよ、アレクシア。そんな事をしてアレクシアが何かされたり言われたらどうするんだい」
オーギュストはアレクシアの笑みに潜む黒さに気付かず慌てて首を振って止めようとするが、アレクシアはオーギュストを落ち着かせるように握っている手を片手でポンポンと優しく叩く。
「ん~……、人前で注意してしまったらご気分を害されるかもしれませんが、お庭に連れ出して2人きりの時に妹と同い年の女の子から少し言われたくらいなら大丈夫ですって! しかもこんなに可愛い女の子なんですよ?」
アレクシアは少し考えてオーギュストを説得できる言葉を探して口に出したが、自ら精神的ダメージを負う事になった。
(うおぉぉ……、自分で「こんなに可愛い女の子」とか……ッ、痛い! 寒い! せやけどこのくらい言うたらオーギュ兄様も安心してくれるはずやし、頑張れ私!!)
「そうだね……、流石のセザール様もアレクシア程の美少女には甘い対応になるだろうけど……。だけどひとつ約束してくれ、もし嫌な事を言われたりされそうになったらサロンに逃げて来るって」
オーギュストは心配そうに眉尻を下げてジッとアレクシアを見つめた。
(くぅっ、何この美ショタ……! オーギュ兄様が尊い……)
「わかりました、約束しますから安心して下さい」
アレクシアは内心の興奮を抑えつつ笑顔で頷いた、そしてその時ずっと窓に張り付いて外を見ていたエミールが興奮気味に振り返って来客を報せた。
「兄様、姉様、馬車が来ましたよ!」
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