第13話(違和感)

憲一郎に来客があり、席を外そうとした時。リュウは憲一郎に帰ると伝えた。情報は大体理解した。ヤコと一緒にマンションまで帰る途中、ヤコは家に帰ると言い出した。


「どうしたの、ヤコ」

「私、足手まといだよね。敵に捕まってた訳だし」

「ヤコ…………。分かった。家まで送るよ」


リュウはGTRを運転して、5分ほどでヤコの自宅に着く。リュウはハザードを出して停めた。


「キスして」

「え?」

「いつもの、ハグハグちゅっちゅは~?」

「ああ」


リュウはヤコにキスするが、どこかぎこちない。リュウの脳裏にはアキの笑顔が映る。その違和感をヤコは見逃さなかった。


「変ね。いつものリュウじゃないみたい。何かあった?」

「何でもないよ」

「怪しいな~。隠し事はなしだからね」

「大丈夫だよ」

「ふーん。ならいいんだけど。じゃあね」


ヤコはGTRを降りると、手を振って見送る。リュウはクラクションを軽く鳴らして、ハザードを消し、GTRを発進させた。


リュウはマンションの駐車場にGTRを停めて鍵を掛ける。部屋に入ると、まず始めにウイスキーをショットグラスに注いで飲む。


「かー! 効くぜ」


リュウはソファーで横になる。もう一度アナザーシープに行くために。パタッとすぐに寝付いた。


ーーリュウはまたサバンナの草原に居た。空は明るいのに星が煌めいている。


リュウは空を飛ぶ。


「おもしれえー! 無敵だぜ」


リュウはしばらく飛んでいると、眼下に車が十数台見えてきた。どれもエンジンを吹かしている。これからレースが始まる。


「異世界のレースか、面白そうだな。ちょっくら偵察と行くか」


リュウはGTRを召喚して乗り込み、しれっと最後尾に着けた。現実世界では見たこともない車高の低いトラクターみたいな車に機銃や刺々しい装甲が目を引く。


ブオーン! レースが開始された。勢いよく走り始める異世界の車達。リュウもスタートする。コースは未舗装の砂地の直線5キロメートルだ。

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