脆く不安定な世界のある時代の記録

@hayau3

第1話

名誉、義理、挑戦、財産、安寧、快楽、etc


どんな理由でも、自分の命に意味を見出す者がいる。見出せた者を見て、残された者はその死に意味があったとみる。そして、自分も手にしたいと願う。しかし、多くの者はその時に立たされて初めて意味を探し、そして何こを見出だすことはない。


生き物は、ただ生まれ、ただ死ぬ。そこに意味などない。訪れた死に意味を持たせようと足掻くだけだ。


なら意味はないのか?。自分や他人が意味を見つければ、そこに意味はあるのではないか?。


せめて自分は意味を見つけられることを願う。


一章


「どこだよ、ここは。」


光のない闇と冷たい岩肌。その表面は滑り、小さく呟いた言葉は吸い込まれるように虚空に消える。


男は暗闇に驚く。男の記憶が確かならここは木々の茂る森の中だ。しかし、ここにあるのは夜の闇ではない。光の残滓もない真の闇だ。


喉に感じる湿り。淀んだ空気。身に覚えがありすぎる。ここは地下だと確信する。


男は気を落ち着かせるのに一つ息をつく。そして、改めて周囲を観察する。


近場に脅威となるものはない。しかし動き回る気配が上にも下にもある。少なくとも、この世はまだ続いている。そのことに安堵する。


ここは開けた空間だ。あたりは岩肌で、その滑らかさから、かなり水が流れていた場所だと推測する。


今も水が岩肌を薄く覆うように流れている。水没していたとしたら、よく生きていたと思う。これも伴侶の施した封印の力か。


天井は男の身長の5倍、幅は3倍。その道が奥に向けて広がっている。


ここはその長い通路の端。

行き止まりだ。


舌に乗せた水気に若干の塩気を感じる。岩塩が近いのかもしれない。


男は辺りを探る。その第一歩目で違和感を覚える。


体の調子は良い。節々に違和感もない。しかし足のコンパスに違和感がある。動けば体全体の尺が小さい気がする。触れれば身につける獣の鞣し革に随分余裕がある。年老いて縮んだのか?。残念だが仕方のないことだ。すぐに割り切る。できることは何も第一線としての働きだけではない。


封印について知識はない。


事態は差し迫り、最低限のことしか聞けなかった。また術者を信頼していたこともある。だから見聞きできる以上のことは分からない。


男は動物の皮を鞣した服を縛り直す。悪いことばかりではない。地下での暮らしは体が小さい方が便利だ。


(慌てるな。)

急かすように早鐘を打つ鼓動を抑える。


封印の儀が解けたということは、「あれ」が活動を再開したということだ。傷が癒え、万全になったと言うことだ。


自分一人では太刀打ち出来ない。はやる気持ちを抑えて調査を続ける。


上にも下にも人らしい2足歩行の気配がある。動きがおかしいが間違いない。その周囲の空間も地下らしい。此処はかなり深い場所の様だ。


人は今も地下に住む。地上での生活を期待していたが残念に思う。


地上に住むことは憧れだ。日々、地上に狩に出て食料を確保し、また巣穴に帰る。地上は「獣」の楽園で、人は餌。しかも、呼吸するだけで蝕まれ続ける程強い酸の霧が立ち込める。生きるのに厳しい。環境だ。しかし、地上には食べ物、素材、光、熱、地下では得難い全ての恵みがある。


(封印から目覚めれば地上に人が住んでいると期待してたんだけどな。)


「あれ」を滅ぼし切れなかった。だから、男は家族も友も捨てて、封印を受けた。しかし、「あれ」が去ったとき、地上は光に溢れ、周囲が輝いた。色鮮やかな色彩の風景は、男の目に今も焼き付いている。感動し、憧れた。しかし、目覚めて見れば、また慣れ親しんだ地下だ。


寝起きの感覚に慣れ、男は「知覚」できる距離が伸びてきたことを感じる。


「知覚」とは男の故郷での呼び名だ。便宜上、「力」と呼ぶ感覚的にな物を使った技術で、地下での生活ではなくてはならないものだ。小さい子供でも身の回りの地形は把握する。子供で半径大人1人から2人、大人なら10人、優れた戦士なら100人程だ。男はこの技術に自信があり、「力」の総量も容量である体格にも優れていた。平時なら半径大人1000人分は球形で認識できる。


分かるのは形。その存在が発している「力」だ。特に自分に向かってくる動きの強弱には敏感だ。


普段であれば寝起きであろうと「知覚」にズレは感じないが、体の感覚といい違和感がある。流石に長い時間封印されていた弊害は大きいようだ。


戦士にとって、「知覚」は「戦士の歩法」の技術を支える重要な土台だ。ここに違和感を覚える以上、自分の動きの確認は近いうちに行う必要がある。


凹凸のある地面を進む。地面を足が掴む感覚に問題はない。その気になれば、足元の小さな凹凸は崩せるし、滑ることもない。これも戦士の歩法の基本的な技術だ。周囲の岩肌に加工の跡があるものはない。自分の存在は、長い間認識されていないのだと思う。封印そのものは、別に見えなくなるものではない。知られていれば、気になるはずだ。


ライドは知覚範囲を絞って、周囲の形を詳細に確認する。自然に生まれた鍾乳洞らしい波や突起の多い岩の形以外に感じられない。


ここに運ばれ、隠されたのか?。


ここでは木の根の残骸も見つけられない深い地下だ。しかし呼吸はきつくない。いや、相当息苦し医科?。しかし、無意識に身体機能を全力で強化し、補われていた。身体機能にこれ程「力」を割けば他が疎かになる。此処の環境が無意識に体にこの状態を強いたのか。ライドの意識と関係なく、この状態が体に馴染んでいて調整が難しい。


全ては今を生きる者に聞くしかない。まずは伴侶を探そう。伴侶の力は「あれ」との対峙には必要不可欠だ。そして何千年の寿命を持つと公言する女だ。生きているだろう。それに封印が解ければ感知する筈だ。男の「知覚」内には居ないが、向こうから向かってくるだろう。


男は道なりに進み、進行方向で最も近い2足歩行の気配を目指す。


水の確保の問題はない。足元を湿らせる水を舐め、腹が減っていないことを再確認する。


(老いていたら会うのは少し悲しいな)


恐らく、封印を行った女に老化はない。我が伴侶ながら、その存在は異質だ。


手探りで移動を始めた男は、塩水の溜まった狭い穴に潜る。通路は先に伸びているが、中々入り組んだ狭い穴だ。這うようにくぐり抜ける。


こういった水溜りは危険だ。中が狭く入り組んでいて、戻るに戻れない場所もある。


「知覚」が未熟な幼い頃に溺れかけるのは、誰もが経験する苦い思い出だ。


水を出ると、男はむせるような腐った臭いに襲われる。息が随分楽な空間だが、思わず口覆う。それでどうなる訳ではないが、気分の問題だ。


奥に微かな光が見える。消えかかった光だ。熱を感じる。僅かな光だが、男にとっては十分だ。


光を頼りにあたりを見回すと、腐臭を放つ人の死体が其処彼処に転がっている。皆五体満足ではない。欠損し、壁にもたれて死んでいる。ここで、動けなくなって死んだ。そんな姿だ。膨れ上がり、蛆と小蝿にまみれた姿は嫌悪感しかない。そんな姿が20近く列をなしている。


(何人か動き出しそうだな。)


正式な手続きで埋葬されない死者は霊の住処になる。


(これが、今の人間)


男は死体を感慨深く見つめる。その姿形は男の知る人と差がない。腐敗が進み、性別も年齢も分からないが、死因は失血か外傷か。


運ばれた様子はないが、自分でここまで来たとは思えない。損傷が酷い。牙とは思えない刺し傷、切り傷が交差する傷もある。普通、その場で死んでいる。そう思って地面を調べるが、自分で移動してきた証拠以外見つからない。そして、死体として既に動き出している様子もない。


分からない。


次に着ているものに注目する。獣の皮を剥ぎ、鞣した男のものとは違う。硬質に固められ、所々、石よりも硬い輝きを持ったもので止められている。見事な一品だ。その下に着込む衣は何だろう?。足まで覆い、体で露出した部分は首から上と手先しかない。足先は獣の皮を使った靴を履いているが、その材質はまるで別物だ。素材からして検討がつかない。


(大きさが合えばな)


蛆の湧いたドロドロに汚れた一品だが、男は大きさが合えば、今しがた通って着た水辺で洗って使うつもりでいた。


しかし、横たわる死体はどれも今の男より小さい。男は冥福を祈ると、明かりのある方に向う。


(深い空間だ。大きいな。縦穴か。)


男は道の先に大きな空間を感じとる。


外ではない。歩き易い勾配のこの道はそちらに向かう程広くなる。程なく高さは男背丈の倍に及ぶ。この広さのまま巨大な空洞に向かっている。


男は地下水の溜まり場から見えた微かな灯りに辿り着く。それは黒光りする未知の材質で作られた四角いものだった。おそらく壊れている。それを恐る恐る持ち上げる。中には光があり、油の焼ける臭いがする。便利なものには違いない。男の知る灯りといえば松明だが、地下では使う場所を誤ると、息ができずに死にかねない。それに対して、煙もないこの小さな灯りは何と便利なものか。明るさは弱いが十分だ。


先ほど潜った水たまりに戻り、今の自分の姿を確認しようか?。男は灯りに照らされた手を見ながら疑問に思う。手に皺がない。


側に転がる元の持ち主であろう死体は、まだ腐敗が少なく膨張はしていない。白く濁った目の傍や口元から爪の先程の蛆が走るが、目玉の半分程度の大きさだ。死後数日といったところか。首は曲がり、左半身は内臓に達するひしゃげかたをしている。それでも、最後の力を振り絞り、何かを取り出したところで死んだ。そう見える。しかし、何故こんな体で動けたのか、最後の力も関係なく即死だろう。見た目は同じだが、別の生き物なのか。


その手で取り出そうとしていた何かを見る。白く薄い何かだ。血で汚れており、折り曲がっても割れない柔らかさがある。


「使わせて貰う。」


灯りを手にそう語りかけると、虚空を見つめていた白く濁った眼が動く。男と視線が合う。


無表情に折れ曲がった首を動かし、体を揺すって動こうとする。しかし、その潰れた半身とひしゃげた足では動けるものではない。そのせいか、死体は手にした封筒を男に突き出すように手を出す。その周囲に、濃密な湯気のようなものが集まるり始める。霊だ。


(順番が逆だろっ!?。常識まで変わったのか?。)


死体は生物だった頃に近い性質を持つ精霊が依代として死体取り付き、その結果動く。実物を見た回数は片手で数えられる程度だが、例外はない。


しかし、目の前の死体は、霊体が吸い込まれる前から動き出し、霊が染み込むと苦しげに震えた。その拍子に握っていた何かが男の方に投げられる。


男がその握っていた何かを手に拾い上げると、動き出した死体は急激に視点を失い、虚空を見つめる。理由はわからないが目の前の死体から視線が消えた。しかし、一度止まった体は、今度は特に意味のある動きに見えない動きを始める。


今度こそ、名もなき霊達が新たな体に喜んでいるのだろうと思う。


男は軽く拳を振り抜き、動き出した死体の頭を粉砕する。どの道放置はできない。介錯のつもりだ。


「なんだ?。これは。」


投げ出された血濡れた何かを光にかざす。託されたのだろうか?。見ず知らずの他人に託すとしたら、親しかった者に渡す遺品だろう。これがそうなのか?。普通は思い出の品や高価なものだ。今の時代、これが高価なものなのか?。だとしても、残念ながら男には誰に渡せばいいのかも分からない。


(この辺りの長に託すか。)


男は懐に飛ばされた物に付着した腐食を拭うと懐にしまう。


頭部を破壊された男の体からは、白い霧のような霊体が染み出している。別の依り代を探す為だ。霊が必要とする新たな依代は其処彼処に転がっている。男は早めに立ち去ることを決める。自分の姿の確認は後でもできる。


死体を何度も砕くのは気分が悪い。


深い穴までたどり着いたら、一思いに埋めようと決める、今の常識は知らないが、男にとって動き出した死体は死者への冒涜だ。放置はできない。


明かりを手に、男は時折天井に指先ほどの穴を開け、ヒビを走らせながら歩く。手では届かない距離だが、触れる必要はない。大人身長の半分程度の深さで細井穴を作る。天井を一部砕き、通路ごと埋める予定だ。その上に影響を与えるつもりはない。あくまで天井の一部を落とす。これは男にとって一般的な技術だ。人が住めるように、岩盤を整え、新たな居住区を確保するのも戦士の務めだ。男は手慣れた手順で崩壊の規模を見積もる。


暫くすると、男の耳に硬い物を打ち合わせる音が聞こえる。自然な音ではない。生き物が鳴らす音だ。


石ではない。硬く、甲高い音。そして石ではとっくに砕けている強度で振われる。


「知覚」は激しく動く存在を感じとる。数は25。この先、大人10人とせずに大きな縦穴に出る。そのかなり上の方だ。


男は転がる死体を思い出す。最大の損傷はおそらく落下によるものだ。しかし、男の傷で致命傷に至る傷はその前に負った切り傷や刺し傷ではないか?。その切り口は、鋭利な石の刃を連想すると、納得がいく。人間は人間同士で争っている。その理解が男を慎重にさせる。男の時代でも他の集落との関わりは、見つけた喜びよりも神経を使った。知らない他者は獣より怖い。


声がする。音はすぐに聞こえなくなり動きも収まる。相手の「知覚」を潜るつもりでゆっくり動く。


切り立った深い縦穴に辿り着く。直径は大人50人分はある。しかし、想像以上に自然物に見えない。垂直の円柱状で、壁面が滑らかだ。下は「知覚」を変形させて一方向に延ばしても辿りつかない。これ程の大きなの均等な円柱は不気味だ。上は大人100人分程度で天井がある。別の地面がせり出して、断ち切られたような不自然に断ち切られている。その周囲は苔が生え、この状態になってからの時間がある短くないように見える。


男がいた横穴は、この縦穴に分断されたようだ。対岸には同じに横穴が続いている。男の立つ横穴は、上部の壁面が崩れ落ち抉れていた。横穴の死体は此処に落下して来たものか。見上げると天井付近に壁が崩れ、隣の大きな空間と接した場所が見える。そこからは明かりが漏れ、怒鳴り声が聞こえる。


言葉が聞き取れない。少し耳が悪くなったか?。


男は耳の穴を指で弄り、考える。


縄張り争いに人の生死をかける程、長の力が弱いのだろうか?。命を脅かされる叫びを聞く。態と痛みを与えている。猟奇的だ。


男は、少し意識をずらすような感覚で、周囲の空間に浮かび上がる「歪」を探ぐる。


「歪」は周囲の空間のとこかと繋がる別の道だ。「歪」から通常の空間を見ると此方の世界は大きく波打って見える。その波の頂き同士の空間を繋ぐような形だ。行きたい場所を便利に指定出来ないし、間にいる生き物の密度が多いと、波が小さくなって、近距離でしか繋がらないが、気配を殺して獲物に近づくのに使い勝手がいい。


男は最も明かりの強い空間に目をつける。そこは縦穴の天井すぐ側で、少し下に明かりの漏れる崩れた壁が見える。手にしていた灯りを置くと、そっと体を「歪」に忍ばせ壁に張り付く。突起のない滑らかな壁だが、足で地面を掴むこととやることは変わらない。左の掌で天井に触れ、体を支える。


聞き耳をたてる。横道にあったあれほどの数の死体を生み出すのだ。考え方に隔たりを感じる。


しかし、すぐに頓挫する。耳に入ってくる言葉がまるで分からない。


別の集落でも言葉が違った記憶はない。言葉を覚えるだけなら、このまま見を潜め、集落で隠れ住んで会話を覚えるのも手だ。


(限られた状況を作り出せば、音と意味の組み合わせだろ?。予測はできる。)


男は壁の一部を砕く。体を支える壁の心配はしていない。深くまで掴んでいる。


今からしようとしている行為に少し躊躇がある。


無用心な行動だ。しかし、心に強い衝動がある。試したい。見てみたい。その衝動に負ける形で男は砕いた石を落とす。


パラパラと音を立てて落下する壁の塊に、予想通り短い会話が生まれる。


なんだ。どうした。何があった。みてこい。見てくる。


その辺りの単語がこの声に相当するはずだが、一つも想像がつかない。まるで違う。やがて黒光りする硬質な被り物をする男の後頭部が下に現れる。


男は背中で壁面を掴むと、壁面の濡れた砂を顔に塗りつける。黒い泥のような砂だ。簡単な変装だが、意外と分かり難くなるものだ。


下から警戒した声が上がる。その中で、複数回出ている単純な単語に注目する。


男は意を決すると天井から崩れた壁に手をかけ、一息に崩れた壁の中に降り立つ。より単語を限定する為の状況を作ってみたい。欲求に従って実行する。


強い血の匂い。


降り立った男は凄惨な光景を目にする。死体だけで12体。生きているのは8人。そのうち3人は足を尖った棒に貫かれ、血を流して座っている。その前には硬くて尖った刃を向けて牽制する男がそれぞれついている。


若干名、真っ白な肌をしているが、殆どは男と同じ褐色肌に黒髪の容姿だ。


座らされた男は若く逞しい。筋肉が太い。相当な出力にも耐えられるだろう。戦士にとって、出力に耐えられる体は才能だ。しかし、全員戦士としては物足りない。地上班を一人前とする男の常識からすると、よくて見習い程度、才能あふれる若者に至っては初心者程度の「力」しかない。


ライドは争いに介入する気はない。「戦士の矜持」は人同士への介入を制限している。自分の集落の存亡に関わらない争いは対象外だ。まして争うと決めた大人同士の生死に、何も知らない部外者口を挟んで良いことはない。


介入しないのに、この時に姿を出す。我ながら迷惑で誤解を与える行為だ。


突然の来訪者に、今を生きる人が呆気にとられている。


しかし、今が勝負時には違いない。


男は右掌を左胸に当て、首だけ下に曲げる。男の暮らした集落における目上に対する礼だ。


「私はライド。ライド=フォン=クレイルという。長に挨拶がしたい。」


男は名乗る。集落の戦士長の一人であった母フォンと、生まれた時には既に他界していた父クレイルの子だ。下に妹が2人と弟が1人、兄が2人居たらしいが、兄2人は他界済みだ。妹の一人は幼くして病に倒れ、もう一人の妹は目の前で地上の生き物に食われ、弟とは集落と最後を共にした。


帰ってきたのは誰何と思しき反応だ。その声に強い警戒が滲む。


ライドは試しに繰り返された単語を口にする、名前なら、誰かが反応するだろう。しかし、全員が反応を示し、閉口する。


後で知ったことだが、口にした音は「解放しろ」という動詞だった。そう消えば繰り返し口にしていたのは、才能ある若者の方ばかりだった。


敵意に晒され、ライドは縦穴に逃げる。


失敗だ。2足歩行の気配はまだあるが、いつまでも失敗はできない。集落に悪い噂が広まる。


当たり前だが無計画すぎた。いつからこんなに無謀になったのだろうか?。はしゃぎ過ぎだ。落ち着く必要がある。


ライドは今の人から逃げる為に縦穴の壁を蹴りおりる。仕切り直しだ。男は広さのある横穴を見繕うと、飛び込むように転がり込む。


腐臭が弱く、水とカビの臭い強い場所だ。見渡すとすぐ、立ち並ぶ人工物がライドの興味をひく。明るい。一定間隔で灯が並ぶ。この明かりは、先程の歪んだ借り物の原形が発しているらしい。綺麗な形だ。その数は数十。全て円柱形の柱にかけられている。


洗練された柱、床、そして天井だ。辺りの景色が映り込むほど磨かれている。ライドは思わず駆けよった。


通路を支える柱は石を切り出したものだとわかる。しかし、埃を払うと顔が映る程磨き上げられた白い石の柱は、吸い込まれそうな程美しい。太さはライドが2人がかりで抱えるくらいで、不気味なほど綺麗な円形だ。


先程の縦穴といい、「円」にただならぬ思い入れでもあるのだろうか?。


柱に支えられた天井は、球の内側のように丸く、色違いの石で美しい文様が描かれている。


ため息が出る。天井を見上げてくるくる回る。柱に映る自分の姿に気がつかないほどのめり込む。


(地下にこんなものを作り出したのか)


これ程のものを作り出せる集落の力とは如何程のものなのか。柱や天井だけではない。足元もそうだ。磨き上げられた石の床は、多少壊れて歪むものの一面がモノが転がらないほど平衡て平坦だ。簡単に作れるものではない。


(この灯りは、この水を吸い上げて燃やしているのか?。何の水だろう?。これは油とは違う?)


ライドは四角い灯の台座部分の蓋を開き、臭い水を少し指につけてみる。すぐに湯気のように無くなる不思議な水だ。嫌ではないが臭い。


程なくそこそこ上の方から岩の崩れる音が響く。通って来た横穴が崩れた音だ。死者への弔いになることを祈る。


ライドは灯りを発する四角い物体の解体を試みる。再び組み上げられるように、慎重に行う。螺旋状の溝で削られる棒や定間隔で彫り込まれた穴が精巧すぎて頭がクラクラする。蓋をあけるだけでも時間がかかった。構造だけではない。技術の差、材質の差、発想の差。


目眩がする。


四角い灯を引っ掛けていた突起も美しい。光が当たると、その凹凸面がキラキラと光る。何かの獣の顔をあしらっているが、なにかはわからない。石をこれ程きめ細やかに細工する技術。もう何も言葉が出ない。


恐る恐る手で触れる。


(石よりは柔らかい。それに軽い。)


ライドはそこで初めて柱に映る自分の姿に気がついた。四角い明かりを手に、柱に映る自分の姿をまじまじと見る。そこにはヒゲも生えてない少年が映る。見覚えがある。ライド自身だ。18歳の頃に1番近い。まだ体の出来上がる前の時期だ。この頃の体の大きさだとすれば、縮んだ感覚と一致する。


柱に映る姿は封印直前のライドの格好とら同じだが、記憶にある18歳の時よりは鍛え込まれている。しかし、首の太さを見ても、力瘤を作ってみても、横から体の厚さを見ても、全てが薄い。衝撃だ。今まで作り上げ、積み上げてきた鍛錬が削ぎ落とされた。


封印を受けた時は、壮年を超え、初老の手前だった。しかし、柱に映る自分の姿には満足する。泥まみれで小汚いが、中々精悍な男ではないか。


ライドは満更でもなく口元を緩ませ、顔を柱に近づける。しかし、この格好は頂けない。黒髪を後ろで縛り、毛皮に頭と手を通す穴を開け、頭からかぶる。腰には同じ毛皮を巻き、腰紐で止めている。動物の皮を編み込んだ草鞋も含めてボロボロだ。以前は気にならなかったが、今の人を見た後だと異質すぎると認識する。このまま今の集落に行く訳には行かない。少なくとも何処か腐臭のしない場所で汚れを洗いたい。体が痒くなりそうだ。


(若返ったとしたら夢のようだな。)


封印による一時的な変化か?。見た目だけなのか?。分からない。しかし、戦力は弱体化した。


「あれ」の動向次第だが、既に活動を始めるのであれば、一線で戦える体を作る時間はない。


違和感が強い筈だと納得する。関節を痛めかねない細さだ。「手」を含め、技の多くの反動を分散させる為の「筋肉」という体積がない。


多分、使えば相当な負荷になるだろう。果たして耐えられるのか?。しかし、その悩みは後回しだ。建築物への興味が優る。周りに目を向け、目新しいものを探す為、四角い灯を一つ拝借する。これは便利だ。煙もない。驚愕の発明だ。


(是非自前に欲しい。その為にもまずは言葉だ。)


昔はどんな初対面の集落でも言葉が通じた。今であろうとも、ライドの言葉が通じる生活圏はある筈だ。しかし、近くない。此処は言葉を話す地域だ。交流のある圏内で言葉が通じないとは思えない。地下で繋がっていればそこは生活圏内だと言える。


地上に出て移動する必要がある。しかし、この四角い灯が、別の言葉を話す地域にあるとは限らない。


ライドはため息をつく。ここで言葉を学ぶしか、自前の灯を手に入れる確実な方法が思い付かない。


まずは見た目から手をつけよう。同じ程度の体格の死者から拝借するか。建築物の中にある物を拝借するかだ。


建造物を歩き回る。中はある程度の広さの小部屋に分けられていた、上に登れる階段があったが、途中で瓦礫で埋もれて進めない。崩落だ。これだけの技術を持つ者が地下で壁の強度を見誤る筈はない。それだけの時間が経過しているのだ。小部屋の中の物の腐り具合から考えるに、長い時間が経ち、自然災害や変質で洞の状況が変わった時に崩れたのだと思う。この場所も、現在から見れば遠い昔の場所らしい。人の住む気配がしない。これ程の物が古い過去の物となると、更に期待に胸が踊る。今は一体どれ程の感動的に発展しているのだろうか。


探索の途中、食料を確保しようと「知覚」で辺りを探る。蛇や蛙が見つかる。大きく育った獲物だ。一度の食事で食べきれない程大きい。丁度良い。しかし、獲物は「歪」越しにライドが近づくより早くに動き出す。


想定外だ。


蛇や蛙も進化しているのか。慎重に気配を殺して「歪」を探る。


他の気配を探ると少し下で気配が大きく増減している。人同士の争いのようだ。此処は戦場なのだろうか?。先程と言い、閉口する。


この階層では、他に何度か2足歩行の存在と出会った。全て、骨だけになった動き出した死体だった。ここの住民だったのかもしれない。安らかな眠りを祈り、破壊する。彼らは先程の動きはじめの死体と違い、引きずるように足を動かし、柔軟性を失っていた。体を揺らす姿は不自由そうだ。五体満足だが、骨以外の殆どは失われている。


『誰かっ!居るんだろ?!人じゃなくてもいい、何か聞こえたら応えてくれっ!』


空耳か?。


突然の声にライドは「知覚」を注意深く探る。明確に声が聞こえる程近くに気配はない。


『応えてくれっ!応えてくれっ!。応えて、くれぇっ!。応えを。』


まただ。切実な声がする。頭の中に直に響いているのか?。周りには反響一つない。


「どこから見てるんだ?」


ライドは半信半疑で呟く。怪しいが言葉が分かる。その喜びに言葉を交わしてみたいと思った。また、衝動が行動に繋がった。


そして待つこと数瞬。再び声がする。


『応えっ。声?。言葉?。いや、分かる。分かるぞ。何で分かるんだ?。知らないぞ?。でも分かる、もう一度、何か言ってくれ!。誰か!。』


迂闊だったか?。気のせいという線は消えた。ライドは小さく身構える。


「姿を見せろ。」

『待ってくれ!。気味が悪いのは分かる。でも、形を作れないんだ。頼むっ!。信じてくれっ!。』

「人間か?。」

『そうだ。人だっ。今もそのつもりだっ。私は精神と肉体を切り離したんだ!。その意味も分からず不老不死を目指したんだ!。気のせいじゃないよな?。私は私の想像と話をしている訳じゃないよな?。』

「ここにいるんだな?」

『目で見て、耳で聞いて、ものに触れる。それは奇跡なんだ。君はその恩恵に気がついていないっ。私もそうだった。当たり前すぎた。今はただ雑音を聞き、ただ波打つ模様だけを見るっ。でも君と言う存在の周りでは、君の声が聞こえる。私は確かにここにいるっ!。』

「何故俺を?。まるで聞こえてることが分かってたみたいじゃないか。」

『君が私にどう見えているのか見せてあげたいよ!。君は光だ。巨大な光だ。他と交わらない一個の存在。突然現れた強烈な輝きっ!。その光に集中する程に音が、声が聞こえてきたんだ!。声が届くかも知れない!。期待するだろう?!。どれ程の時間、私は取り残されてたのか!。何もできなかった!。その間がどれ程長かったのか!。死ねればどんなに良いかと思ったか!。』


声の相手の興奮は伝わる。興奮し過ぎだ。説明が理解し難くて困る。


怪しい声だか、言葉の通じる相手と情報交換したい。ライドは相手を落ち着かせる為に会話を続ける。


「どんな声が聞こえたって?。」

『君の名前はライド=フォン=クレイルだ。違うか?。私はソドム=ゲシュテッド。元伯爵だ。君も貴族だろう?。聞き覚えのない家名だが。君は自己紹介の後に、解放しろ、俺たちの、と単語を繰り返していたな。少し雑音で聞き取れなかったけど。』


ライドは「へぇ」と、獲物を狙うように目を細める。ソドムと名乗る何かは、ライドと現地の言葉が分かると言っている。


通訳とは、望外な幸運が降ってきたものだ。仮に悪意ある通訳になっても、いずれは判別出来る。その自信はある。


「ソドム=ゲシュテッドか。盗み聞きとはいい趣味だ。」

『盗み聞きとは酷いな!。その時だって、私がどんな思いで叫び続けていたか!。届け、届けと、今ようやく、やっとここまで来たんだぞ?!。』

「難しいことを言うなよ。こっちはどっちに向いて話せばいいかも分からないんだ。これで俺の空想が生み出した話し相手だったら、いよいよお迎えが来たかと思うところだ。」

『それは私の不安だ!』


そう返したソドムから楽しそうな感覚が流れてくる。ライドも笑う。


「俺の言葉は今の人に通じない。言葉は幾つ種類がある?。ソドムとは何故言葉が通じるんだ?。そもそもソドムの声は頭に響く。何故だ?。」

『まさか、君は時越えの人か?。どんな確率だ?。いや、どんな偶然でもいい。答えよう。言葉は一つだ。方言はある。2つ目の件だが、私は君の発する声しか聞こえない。そして意思を拾っている。悪いが全部仮定だ。私も知りたい。』


ソドムの声?はそう話した後、声が出ていないことに衝撃を受けていた。今ソドムは此方とは繋がっていない。それを確信したという。


なら、何故ライドと意識は繋がっているのか。疑問に対する答えは互いにない。しかし、言葉を意思で繋いでいるとのソドムの表現は腑に落ちた。


ソドムは内面は頑固そうだが、嫌味な奴じゃない。それどころかライドより柔軟に物事を見ている気がする。そう伝わる何かが確かにある。


ライドはそこまでの情報を頭にしまう。頭の中に幾つもの部屋を設け、その部屋ごとに情報を分けて記憶する。そんな感覚でものを見る癖がある。


「今から口にする言葉は分かるか?」

『言ってみてくれ。言語としても聞ける筈だ。試してみよう。』


ソドムは嬉々としている。ライドにとっては1番気になるところだ。試しに記憶している言葉を幾つかなぞると、『発音が悪いな。』と文句が飛ぶ。


先程のメンバーは犯罪者と、取り締まる側の者らしい。座らされていた方が武闘派結社という人を害することで生活してする者の集まりで、殺人奨励の迷惑な集団だと言う。結社側は制圧されたまま、結社の威を借りて自分を解放しないと復讐に遭うと脅していたらしい。逆に犯罪を見て見ぬ振りをするならば、「カネ」や女がやってくると。


(ガキ大将の三下か。)


名前だと思っていた単語は、解放しろ、だった。取り締まる側に対して武闘派結社側だと宣言したようなものだ。


また、試しに「四角い灯」について聴くと、見えないが、「ランタン」という名前ではないかと言う。


ソドムという存在は本当にいるのだろうか?。話している最中にもそう思う。しかし、ライドの知らない単語を知り、知らない文明を説明する。


その言葉は信用に足るのだろうか?。ソドムにライドと敵対する動機はないとは思う。


しかし、嘘は真実の中に混じる時に見分けがつかなくなる。集落の格言だが、ソドムと名乗る声はその程度のことは分かっている気がする。


ソドムとは「合う」。


意思が繋がっている影響だろうか。ライドはそう感じる。


『知らない言葉を良くそれだけ覚えているな。感心する。』

「覚えるのは得意でね。」

『ライド、君が言葉を覚えると、君が発する音が声に変わる。発音を私に伝えることが難しくなるみたいだ。』

「問題ないね。分からない音がなんだか知りたいんだ。」

『それはそうだ。話は変わるけど、ライドはここが何処だか分かるかい?。特に目的がないなら、行って欲しい場所がある。礼は辿り着けばできる。と、思いたい。』

「何か見えて来たのか?」

『少しだ。私には全ての景色が重なって見えてたらしい。上下左右、距離も視点も場所もバラバラだ。それが重なるとただの揺らぎある黒にしか見えない。それが君の光に集中すると、視点と距離がある程度、君を中心に定まるみたいだ。とは言ってもまだ10以上の景色が重なってる。』


(ぐちゃぐちゃだな。)


ソドムの視界はどんな状態なのか。想像できない。


「今いるのは地下だ。それ以上は分からないね。俺が案内して欲しい。」

『ミラジという地名に聞き覚えはないか?。』

「悪いな、知らない。」


ライドの返答にソドムの唸る。ソドムの見解では、ソドムも過去の存在らしい。


それでも言葉がわかる。ライドがとんでもなく昔なのか、地域が違うのか、そのどちらかだ。


ライドは先程から此方を伺う人影に注意を向ける。随分近づいた。隠れているつもりらしいが、「知覚」に無警戒すぎる。視界から見えないだけだ。


しかし、ライドとしてはこの薄汚れた格好で、言葉も話せないまま接触する気はない。


「場所を変えたい。ソドムはこの場所から動けるのか?」


此方を見る者にとって、ライドは虚空に呟いく変人か。泥を顔に塗っているとはいえ、格好そのものが目印になる。これ以上の悪評は欲しくない。


『できるはずだ。じゃないと私も困る。30まで数える。聞こえなくなったら、待つか、戻るかしてくれないか?』

「わかった。」


ソドムのカウントと同時にゆっくりと歩く。ランタンの灯りに照らされた通りを進むと、建築物の外に出る。


今までいた建物を振り返ると、建築物の上部が押し潰されて見える。しかし、岩や砂ではない。洞の一部が迫り出したような形だ。相当な年月が過ぎている。


水がゆっくりと滴り、水滴の音があちこちで響く。


ソドムは問題なくついてくる。試しに違う景色の場所に「歪み」で移動してみたが、ソドムの声は聞こえる。寧ろ取り憑かれたように引き剥がせない。


「移動は問題なさそうだな。」

『そうか!。安心したよ。ついていかなかったらと思うと、頭がおかしなりそうだっ。ただ、私は君の光を見ているだけで、移動した感覚がない。逆に離れられる気がしない。次元が違うのか?。』


離れられないと聞いて苦笑する。本格的に取り憑かれたらしい。参ったなと伝えると、ソドムは縮こまる。


それにしても「じげん」とは何か?。


「とり」と「かみのうえのいもむし」とかいう名前の存在を使って、例えてくれたが、例えに出てきた動物をライドは知らない。


ライドは一旦話を切り上げる。


気になる接近する気配がある。接触まで1000を数えるくらいか?。人ではないような人のような、不思議な気配だ。しかし総体としての「力」は強い。


折角移動したのに、此方を伺う人はまた追ってきた。その人影の後ろ、少し離れた場所には10人程度の集団がおり、少し前に数人が合流した。彼等は下層で争っていた人同士の争いの生き残りだ。しかし、思えば本当に人同士たったのだろうか?。今追っている気配は人型に感じるのに、地面をするように移動する。この違和感は近づいたからこそ分かったことだが、人同士の争いを感じた時の片一方に「力」の大きさがよく似ている。しかし、その人数が数倍に増えている。全員の「力」が均一。これはあり得ない。


つまり、人ではない。


そして、生き残った者と合流しているのに元居た集団は動かない。負け戦の情報を得たのではないのだろうか?。


(迎え撃つなら別の場所にして欲しい)


それが本音だ。この見事な建築物が争いで瓦礫に変わるのは嫌だ。


「少し体を動かす。」

『何かあったのかい?』

「呑気な住民がいるんだよ。お気に入りの柱を傷つけられるのは癪だし、相手が人じゃないなら駆除したいね。」

『ん?。ここは地下だろ?。そこは土の人の居住区かい?』

「さあ?。俺には土でできた人に心当たりはない。」


「歪」を探る。都合よく複数の空間を繋げら視界があれば、探す手間を省いて繰り返し移動できる。


伺う者に「歪」は使えない。弱すぎる。見つかれば「歪みの獣」に食い殺される。


逃げ切れる筈だ。


しかし、何故だろう?。今の人の命にあまり執着が持てない。今の人を思う度に先程の竪穴の上の方で見た光景が蘇る。制圧した男達の足元に転がる12体の死体。制圧された若者。そして、瓦礫で埋めた横穴に並んでいた死体の数々。


そこから垣間見える未来の集落の姿を受け入れたくないのだと思う。ライドは未来に勝手に楽園を期待した。


何と自分勝手な希望なことか。口元に嗤いが張り付く。人がいて、生活する以上、楽園などあり得ない。

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