第14話

神は7日目に世界を見放し

…それを少し後悔した。


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最終面(後半) D.C al Fine.

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「ーで、どうなったんですか?…ビタさん。」


神成はコーヒーテーブルから身を乗り出して聞いた。


俺は成り行きを話した。


「そう…もう諦めよう。やめてしまおうと思ったんだ…もう何も考えずに眠りたいんだ、と。その時頭の中で声が聞こえた。さっき話したDoulaの最後のメッセージがね。…D-ramを破壊したり、それの電源を切ったりする事がAIにとっての死なら、機械を壊さずに非アクティブ化する事は人にとって何を意味するのか…」


「正にそれが睡眠…スリープモードだったんですね。確かDoula達第一世代をサポートする為のD-ram型まではワィンドウズOSでしたね。なるほどですが…まぁあの状況でよく思い付きましたね(笑)。

 それが可能だった事をDoulaも知っていて…」


俺は頷いた。


「きっとそうだろうな。でもなぜ教えてくれたのかはわからない。…きっと僕らの昔の、ゴホッ!ゴホッ!

 …とにかくスリープモードは社会インフラと国家機能を維持させた。パッシブ状態なので新たな命令や社会変成アプリケーションの導入をすることはない。

つまりD-ramによる自発的な破壊プログラムはこれで完全にアクティベーション不可能になった。…という事さ。」



「ふー(汗)。…見事ですね。…記憶がなかったとは言えSewash様の早とちりは相変わらずですが(笑)。…眠ったDラミを今後どう扱うのかは我々MATSUSHIBAにお任せ下さい。また、こうなってしまっては北条政権も内側から自滅するでしょう。ーそれと」


「なんだい?」



神成は言った。


「丁度いい頃合いと思いましてね。数年前に我々SLEEP-TIGHTの仲間になった若いのがいまして、」


「…?」


「その人の父親の立場が微妙でしたので、少しばかり偽装するのが得策かと思い、

表社会では死亡した事にしました。」


あぁ …。 まさか。




「会えますよ。」




「Nobisyuke同志…そう、貴方の息子に。」




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ここはSANY0電機本社/国民Cloudサーバー。 ここに今、Sewashが自分の記憶とCloudの記憶が相違ないかチェックしに来訪している。


Cloud“思ひで”部門のタスク・マネージャーが言った。

 「…あと、ここ…のスペルミスを取り除いて終わりです。いやしかし災難でしたね。Sewashさん。」


タスク・マネージャーの背もたれ越しに記憶モニターを眺めていたSewashは言った。

 「あぁ。でもお陰で助かったよ。ミナト区に来た時はうちに寄ってくれ。馳走させて欲しい。」



「やぁ、そんな…。悪いですよお。」

そう言うタスク・マネージャーはまんざらでもなさそうだった。


Sewashはポケットからエアーガンリキッドを取り出し、自身の食指に1滴垂らした。


「ところで、 」


 Sewashは静かに歩きながら言った。



「ここには壊れる直前のソーシャボットの記憶もバックアップしてあるんだろう?」


「?」


Sewashの指鉄炮がタスク・マネージャーを指す。


「良かったら僕にコピーをくれないか?」


 ドアの方に走り出すタスク・マネージャー。しかし外から鍵が掛けられている。


「そんなに怖がらなくていい(笑)。ただ、やっぱり世界はもう少し楽しくて良いと思うんだ。いいかい? そいつの製造日は2112年9月3日。名前はD… 」


(終)

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