生命の海
火山竜一(ひやま りゅういち)
暖かな
朝靄の漂う
海へ
おんなが
駆ける
裸の若い
おんなは
尻と乳房を
弾ませて
象牙色の渚を飛び越え
焼けつくような太陽に
抱き着いた
渚の小波が
心地よい
ライトブルーの朝の海
大空の
テーブルクロスが
よく似合う
その上に
陽光が
のんのんと乗っている
最後の
海だと
目を細め
老いた海女が
やってくる
海に鍛え抜かれた
節くれだった
重い足
砂浜に
深くて暗い
足跡を
一歩また一歩と
刻んでく
陽光に温まる
珊瑚が詰まった
宝玉の海
小魚の影が
ふとよぎる
嬌声を上げる幼子(おさなご)が
波を蹴散らし
白い大気を
掻きまわす
その下で
寄せては返す小波が
散らかる足跡
舐めていく
海女が
来る
無限の海に
目を細め
仕事が終わったと
呟きながら
腰を
伸ばしもせずに
夕日に
別れを告げた
海底に
重すぎた夜が
沈殿し
寡黙な海星(ひとで)が
漫歩する
朝が来た
おんなは何処だ
不在の寂寥が
泣いている
浜に伸びた
海藻の髪
寄せくる波が
梳いていく
波は時を知らせ
風紋は時を刻む
大地の底の
マグマが
目覚ましだとしても
人影だけは
目覚めない
過剰で不毛な夏
朝は駆け足で去っていく
静かな昼だ
波もない
眩しい夏だ
常夏の
おお
生命の海
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