凍傷の街

  


               火山竜一(ひやま りゅういち)


痛い冬が

来る


足音だけが

何処からか‥‥‥


生の気配は

遁走し

路地裏を

焦燥だけが

逃げ惑う


開いた戸に

不在の部屋が

闇を

吐く


物言わぬ土壁

風化の微動


矩形の大気の寂寥


風が

外れた雨樋に

躓いて

呻く



転がる

錆びた剃刀

鳥肌の

失踪


雑草の騒めきばかり

蔓延る街


もはや

化石にすぎぬ道

その上を

夏の後悔が

埃にまみれて

踊っている


片隅で

さくさくと

心臓のぬくもりが

鋭角の冬に

砕かれていく


垂れこめた

雲から

太陽を

掘り起こす者は

いない


時計仕掛けの

運命が

相変わらずの廃墟を

灰色に

氷結していく


凍傷の街中で


時は止まった


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